22話 買い物を4
※クーレ視点です。
―――その日の夕方
僕が買い物から帰り、屋敷の中に入ると
あの人が正面階段を降りてくるのが見えた
「帰ったか!おかえり。寂しかったぞっ......!」
あの人は流れてもいない涙を拭く真似をしながら大袈裟に出迎えてきた。
「 ...... ただいま戻りました。たった数時間で大袈裟です。ローセル邸に行った時の方が長かったでしょう。」
「安心しろ、あの時だってちゃんと寂しかったぞ!」
「そんな心配はしていないんですが......まぁいいです。出迎えありがとうございます。」
「ふん......つれないなぁ。そこは「僕も寂しかったですっ!」って俺に抱きつく所だろう?」
あの人は ふふふっと笑いながら自分自身の身体をぎゅっと抱きしめている。
自分より年上の、しかも男が不気味に笑いながら妄想に浸っている
......気持ち悪い。
僕はあの人の気持ち悪い姿を白い目で見ながら
「......荷物を置いてきますので失礼します」
と 妄想の中に居てもう何も聞いていなさそうな あの人に一応声をかけてから
ため息をつきながらその場を後にした。
まぁ、今日は目的の物も買えたし満足だ。
......ちょっと変な噂があるっぽい物だったけど
まぁ気の持ちようだろう。
さっきのは見なかった事にしようと決め、
僕は満足した気持ちで自室に向かった。
―――…
その日以来
使用人達の間でクラウデレの部屋から
誰も居ないはずの時間や夜中に不気味な笑い声が聞こえるという話が噂になり始めたが
クラウデレは知る由もなかった。
―――…
「ふふっこれでよし。」
誰も居ない時間や夜を見計らって
こっそりクラウデレの部屋にお菓子を置いておく作戦。
我ながら完璧だっ!
クラウデレに内緒でつけていた密偵によれば
ローセル・レイデ嬢にクッキーを貰って嬉しそうにしていたらしいからなぁ。
勉強して疲れた時、朝起きた時に部屋にお菓子があったら喜ぶに違いないっ!
しかも、使用人ではなく俺が部屋に置いているなんて知ったら感激するだろう!
「これで今度こそ、クラウデレは「寂しかった!」と俺を抱きしめてくれるに違いないっ!
これでしばらく経ってから俺が用意していると明かせば......ふふっ」
そうしてクラウデレの部屋前の廊下に不気味な男の笑い声が響き渡るのだった。
―――…しばらく経ったある日
「あのお菓子は俺が用意しているんだ。」
「......? はい、ありがとうございます。」
「え、それだけ?」
「......??」
(この家の僕が使っている物や食事はあの人が手配してくれているんだから
お菓子だってあの人が使用人に言って手配してるだろう。
この人は何を今更当たり前の事を......?)
結局、「自分自身が置いている」と付け加えなかったせいで
クラウデレに本当の意味が伝わる事は なかった。
タイトルに抜けている文字がありましたので修正しました。




