21話 買い物を3
※クーレ視点です。
―――馬車で揺られること数分
あの人が今滞在している家のある場所からすぐ近くの大きな街が遠くに見えてきた
しばらくすると馬車は街の外れの場所から薄暗い裏路地に入って行く。
それから少し経つと
馬が鳴き声をあげ、馬車がゆっくりと停止した
すると馬車の外の運転席から小さく声が聞こえてきた
「じゃあ、俺は馬車を見てるから」
「チッ.........そうだった」
「俺にも負けたのはお前だろ?」
「せこい手使って勝った奴がよく言えたな」
「騙される方が悪いんだろう。ほらさっさと行けって」
「チッ.........はいはい、行きますよ。行けばいいんだろ」
少しして一人の騎士が馬車の扉を開けてくれた
「ありがとうございます」
僕は一言お礼を言ってから馬車から降りた
真っ直ぐ進んだ道の先に明るい太陽の光がさしているのが目に入る
恐らくあの道が街の表通りだろう
僕についてくるらしい一人の騎士の様子をチラッと見て
騎士がいつでも僕について行ける状態なのを確認してから
表通りに向かって進み始めた
―― 表通りはとても賑わっていた
ぱっと見ただけでも色々な店の看板が見える
横を通る人の目がこちらを見て少し見開いてヒソヒソ声がする気がするが
いつもの事なので僕は構わずに進んだ。
―――……
とりあえず装備品を売る店、服屋などを見てみたが
武器や鉄の鎧、防具や普段着ばかりで仮面を売っている場所は無かった
困ったな。まさか全く売って無いなんて思わなかったよ
どうしようかと思いながら歩いてしばらく経った頃
一軒の不気味な雰囲気を漂わせる
明らかに近寄り難い見た目の店が目に入った
よく見ると看板には骨董品店と書いてある
簡単に見つからないような珍しい物はこういうところに案外あるのかもしれない。
僕が意を決して店の中に進もうと
一歩踏み出そうとした時
後ろにいる騎士から声がかかった
「あ、あの!お、俺は店の前で待機してますんで!」
.........護衛として中までついて来なくていいのか?
まぁ不気味な奴が不気味な店に入ろうとしてるんだから当然か。
この人護衛についてくるだけでも嫌そうだったからな
こんな所にまで入りたくはないだろう。
「分かりました」
そう返事をしてから
僕は少し勇気を出して一人で店に入る事にした――
ギィっと古びてきしむドアを開けると
店の奥に一人の老婆が座っていた
「......いらっしゃい、随分と小さいお客さんじゃないか
.........ここを見つけるなんて良い目をしている。
坊や、ここがどんな店か分かって入ったのかい?」
「.........?骨董品店と書いてあったので入りましたが.........違いましたか?」
「.........そうかい。
おもちゃ屋と間違えて無いんならいいんだ。
.........まぁ欲しけりゃ出すけどねぇ」
僕はこんな店におもちゃもあるのかと驚いて
店の中を見渡す
すると一つ異変に気づいた。
「あの.........ここの店、商品は何処に?」
「まぁ、うちはお客さんの望む物を聞いて私が用意してるんだ
店の中に物は並べてないよ
普通に並べるとまずい物の方が多いからねぇ.........」
僕は思わず店の中を見ていた目をバッと老婆の方に向けた
そんな僕を見て老婆は声をあげて笑うと
「冗談だよ。.........多分ねぇ」
と言ってさらに不安を煽ろうとしてきた
「からかわないでください。」
老婆はまた笑うと話を続けた
「まぁ、うちは他所じゃ手に入らないような物を仕入れている自信はあるから そこは安心しな。
.........坊やは何を探してるんだい?」
全く安心出来ないが、まぁいい。
他所で僕の買いたい物が無かったのは事実だから聞いてみよう。
「今僕がつけている物のような仮面を探しています。ここにありますか?」
「へぇ.........仮面ねぇ.........同じ物ではないかもしれんが似たような物ならいくつかあったはずだよ。そこに腰掛けて少し待ってな」
そう言うと老婆は店の奥に入って行った
僕は老婆が指さしていた椅子に座って待っていると
しばらくして老婆が小さめの木箱を持って出てきた
老婆は木箱から仮面を何枚か取り出すと
先程老婆が座っていた所の前にあるテーブルに
仮面を並べはじめた
「今あったのはこの3つだったよ。
右のはとある貴族が所有してた物だったらしいけど、つけると発動する呪いの品だって話だよ。
左は装飾が豪華な物だからって裏の奴らが持ってたんだけど金に困って売られたんだ。
中央のは一番お前の仮面に近い白い仮面だが
前持ってた美術品のコレクターの奴が
夜に見ると本当に声が聞こえて不気味に笑ってるように見えるって理由で手放したんだよ
まぁ、おそらく酒の飲みすぎだろうけどねぇ.........」
うーん.........
右の呪い付きは まず無いとして、
左のはデザインが派手過ぎる。宝石らしき物もつきまくってるから値段が高そうだ。あの人から貰った金じゃ足りないかもしれない。
中央のは一番ましだけど本当にいわく付きの品だったら怖い。
僕が決めかねていると
「まぁ、おすすめは中央だね。銀貨3枚、これでいいね?」
「あ.........えっと......」
「何だい?こんな仮面本当に笑いやしないさ。それともうちの商品に文句でもあるのかい?クレームと返品はお断りだよ」
「いえ、そう言うわけでは......」
「じゃあいいね?包んでやるから待ってな」
商売上手な老婆はいそいそと仮面を布で包みはじめた
ここまで来たら仕方ない。
まぁ選ぶとしたら中央のだったし
ここ以外で仮面を売っているところも無かった
とりあえずこれを買っていこう。
僕がお金を支払うと 老婆はおつりと仮面の入った包みを渡してくれた
「また来な坊や」
「ありがとうございます」
僕は仮面を受け取り、老婆の少し不気味な笑顔に見送られながら店を出た。




