表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/19

陸上自衛隊 特殊作戦群 第三小隊 西表島 山中 ③


 約30人弱の小隊の列のほぼ中央部分で全体指揮をとっていた、陸自特殊作戦群の第二偵察小隊の天城小隊長2等陸尉は、次第に焦りを募らせていた。唇を噛みしめながら、彼は小隊付きの通信兵に先頭を行く第一分隊長の炎城1等陸曹と連絡をとるよう、手で指示を送った。


通信兵は即座にAN/PRC-152無線機に手を伸ばし、周波数を変更して液晶ディスプレイでプリセットされた周波数を確認した。VHF帯に設定されており、暗号化モードが正しく作動していることを示すアイコンが点滅しているのを確認すると、彼は安心した。これで、近くにいるかもしれない敵に通信を傍受される心配はない。天城2等陸尉は通信兵から送話器を受け取ると、一呼吸おいてトークスイッチを押した。


「炎城分隊長、先頭はどんな状況だ?もっと急いでもらえないか。状況を報告してくれ。」


天城の声は指示を与えるつもりだったが、どこか頼むような響きになってしまった。自分でもそのことに気づき、少し戸惑いを覚えた。数秒後、無線機から炎城分隊長の応答が返ってきた。


「こちら炎城。南東方向に不審な動きはない。ただし、密林で視界が悪く、移動には慎重を期すべきだ。」


音声はクリアで、背景のノイズがほとんどない。AN/PRC-152の高度なノイズリダクション機能が働いているおかげだろう。しかし、炎城の応答には自信と落ち着きが感じられ、天城自身が少し後れを取ったような気がした。彼は通信兵に無線機のGPS機能を起動させ、炎城の位置を確認させた。ディスプレイに映し出された座標は、目標からまだかなり距離があることを示していた。ジャングルの中での位置特定はコンパスと地図だけでは難しいが、GPSの高精度に彼は感謝した。AN/PRC-152はその難題を克服するための完璧なツールだった。


「了解、炎城分隊長。無線の電波状況は問題ないか?」天城はさらに確認を求めた。ジャングルの奥深くに進むにつれ、通信の安定性が脅かされる可能性があるからだ。


「電波はクリアだ。今のところ障害はない。」炎城の返答に、天城は短く息をついた。「よし、全隊に指示を出す。これから進行速度を上げる。だが、敵の存在には常に警戒を怠るな。」彼は威厳を取り戻し、炎城分隊長に向かって命令を下した。


「こちら炎城。まだ完全にルートを把握できていない。慎重に進みたいんだ、少し時間をくれ。」炎城の声には落ち着きがあったが、内心では天城の指示に対するわずかな反発が感じられた。丁寧な言葉遣いではあるが、事実上の命令拒否だ。


天城はわずかに口元を歪めたが、冷静さを保ちながら答えた。「可能な範囲で構わない。判断は君に任せる。」そして、送話器を通信兵に戻した。炎城の態度には、自分を上官と見なしていないかのような冷淡さが感じられた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ