総理官邸①
深夜の首相官邸、日付も変わろうとする時刻だった。外観は漆黒の闇に包まれていたが、威厳ある佇まいが確かにそこにあった。伝統的な日本の建築様式と現代の防衛技術が融合したもので、外からはその全貌がうかがい知れないよう設計されている。
車が車寄せに静かに止まると、篠塚は一瞬の躊躇もなくドアを開けて降り立った。
正門に立つ警備員の一人が、すぐに彼に向かって敬礼をした。
「お疲れ様です、長官。お急ぎのようですが、何かご指示はございますか?」
警備員の鋭い目は、篠塚の表情を読み取ろうとするかのように動かない
篠塚は彼を見つめ返し、短く答えた。「急ぎます。道を開けてください。」
警備員は深く頷き、無線で迅速に指示を出した。「了解しました、長官。すぐに道を開けます。」
門がゆっくりと開かれ、篠塚は官邸へと続く長いアプローチを見据えた。
両脇には、手入れの行き届いた庭園が広がっている。夜風に揺れる木々の影が、足元に踊るように映る。その美しさは一瞬彼の心を和らげるが、今はその余裕すらない。頭の中には、緊急の報告をどう諸橋総理に伝え、どのような対応を取るべきかが渦巻いていた。
壮麗なシャンデリアが下がる、大理石で覆われた広大なロビーをぬける。随行を含めた数人の乾いた靴音がロビーに残響する。壁にかかげららた歴代の総理大臣の肖像画がの目が我々を見つめている錯覚にとらわれる。随行者をそこでまたせ、篠塚ひとり、エレベーターに乗り込み、首相執務室がある階へと向かった。




