↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/40

28音*.♪❀♪*゜ 秘めた心3

マイナとともにユウも暫く体を休めていると、囲い込んだ腕の中の温もりが身じろぎするのを感じて、薄く目を開く。


どうやら、抜け出そうとしているらしい……。


ユウが眠っていると思い込んでいる彼女は、起こさないように慎重に動き、体に巻きついている腕を解こうとする。


それに気づかないふりをして、ユウはそのままもう一度瞼を閉じた。


(そう簡単に逃すつもりもはないよ……)


くすりと、心のなかで笑う。


隙間なく重なった体から抜け出すのは至難の技だ。


ユウは眠っているように振る舞い続けながらも、マイナを手放すつもりは毛頭ない────。


加速する彼女の鼓動を聴きながら、静かに待ち続ける。


────彼女が諦めるその時を。





ふわりと……頬に熱が灯った。

伝わる温もりが心地がいい。


目を開けようと瞼を震わせた途端、離れる気配にユウは咄嗟に手首を掴んだ。


ぱっちりとした彼女の瞳が、驚きに彩られている。

それに構わず、マイナの手を包み込むようにユウは自分の手を重ねた。


柔らかくて温かい────。


マイナが触れるだけで、何も感じることのない胸の奥が、喜びと愛しさで満たされる。


(…………人はこれを……幸せと呼ぶのだろうね)


ユウは自分よりも小さな手のひらに、すりっ……と頬を擦り寄せる。


「っ……!……ユウ?」

『ふふ……もう少し、このまま……』


マイナの手を握りしめながらふわりと微笑む。

そして、ゆっくりと目を閉じた。


(このまま抱きしめて、食べてしまいたい……。誰にも奪われないように。この腕に閉じ込めて────)


愛しさを込めるように、ユウはマイナの手のひらに口づける。


「ユ、ユウ?!」


瞳だけ動かしてマイナに視線を向ければ、薔薇色に染まった頬と……涙に濡れて潤んだ瞳が目に入った。


彼女の意識が、ユウのことでいっぱいになったその表情に、さらに心が満たされていくのが感じる。


宝石のような真っ赤な瞳に映る、金の双眸を持つ少年は……どこか満足げに彼女を見つめていた。




。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳




『……会合が始まったようだね』

「……会合?」


ユウの言葉に小首を傾げたマイナは、考え込むように俯く。


(聡い彼女のことだ……議題内容を予測し、その先の展開を思い描いて、幾つものパターンの対策とシュミレーションを重ねている……といったところかな)


柔らかな黒髪を弄りながら目を細める。


真剣な瞳で思案する彼女の頭の中は、すでに会合の件で塗り替えられ、ユウに触れられても気づいていない。


(ついさっきまで、頬を染めて可愛らしい反応を見せていたのに……なんだか悲しいな)


少し、寂しさを感じた。


そこで……ユウは突然閃いたようにマイナの頭を撫で、頭部にキスを落とす。


悪戯心が湧いたのだ。


だけど、彼女が反応を示すことはなかった。


(……これでも気づかないなんて……。少し……面白くないね……)


どろり、とした感情が溢れ出しそうになる。


まるで、蜜のように煮詰めた甘いベリーのようだ────。


マイナに触れるだけで、この腕に囲い、自分のものだという証をつけ、傷ひとつ許さず、お互いの魂すら分かち合い……己の神力で満たしたいとすら思う自分に、ユウは小さく息を吐いた。


(我ながら重症だな……)


心の奥底で抱いている、深く求めるような想い。

日々、愛しさが増し積み重なっていく。


今まで強い感情を抱いたことがなかったユウにとってそれは珍しく、認識した際には僅かに戸惑った。


だが────嫌ではない。


むしろその想いを宝物のように、大切にしまっている。


とても大切な────唯一無二の至宝。




ふと、目の前にいる彼女に意識を向ける。

そこにはさっきと変わらず、考え込んでいる姿が目に入った。

途端────何かに気づいたように、紅いまんまるの瞳がさらに開かれる。


(そろそろ……別のことにも気づいてしまいそうだね)


ふっと苦笑しながら、ユウはマイナの可愛らしい頬に、つん……と人差し指を沈めた。


────ふにっ。


「え……?」


彼女の驚いた視線と交わる。


『妬けるな……僕が目の前にいるのに、別のことを考えている余裕があるなんて』


夜空のような美しい髪を指先に巻きつけながら、ユウは目を細めた。


そして、するり……と髪を指先から離し、新たに一束掬い上げる。


『僕に、夢中になって』


神々が使う言葉────神語でそう言いながら、ユウはマイナの髪に口づけた。


「っ……!ユウ……」


桜のような薄紅色に肌を染めたマイナは、やはり可愛らしい子兎のように見える。


『……なーんてね。驚いた?』


可愛らしい彼女の反応に、ユウは少し茶目っ気を含んで首を傾げた。


すると────。


腕の中で抱きしめていたマイナがわずかに動き、ユウの髪へと顔を寄せる。


『マイナ?』


彼女の行動に軽く目を瞬かせると────

銀の髪に唇が寄せられ、ユウの髪にマイナが口づけを落とした。


それから、ゆっくりと身を引き……顔を上げる。


「ふふ……お返しだよ」


マイナはふわりと、ほんのり頬を染めながら微笑んだ。


その可愛らしい姿にユウは、微かに目元を赤らめた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。