22音*.♪❀♪*゜ 甘美なる血
カクヨム様に載せている【ゔぁんうら】は、14話〜16-1話と18話にあります。❀·̩͙꙳気になる方は、最後の方をスクロールして見てください໒꒱·̩͙⋆.*・゜
他の話数は随時追加していきます♬*.+゜
真っ白な首筋に唇を当てると、舌先で動脈を辿る。
『っ……』
くすぐったかったのか、ユウが微かに声を漏らした。
ゆっくりと首に牙を埋め、ぷつり────皮膚から零れ出す紅い血の雫が、口の中に流れる。
ユウの神力が宿った甘美な血が体内で溶け、マイナの魔力と混ざり合う。その感覚に、真紅の瞳が恍惚の色を帯びた。
そのまま甘い熱に誘われるように、血に舌を這わせ飲み込んでいく。
『っ……はぁ……』
ユウの唇から艶めいた吐息が零れ、マイナの耳元を掠める。支えられたユウの手がピクリと震え、抱きしめる力が強まった。
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ポチャリ────。
濃い闇のなか、水面に淡い花びらが落ちる。
そこに一筋の光が差し込み、覆いつくされていた闇を追い払った。
世界は色を取り戻し、美しい精神世界へと戻る。
桜の花びらが浮かぶ水面に身を預けていたマイナは、静かに目を開けた。
透き通るような青空に、桜と薔薇の花弁が舞い踊る。
《忘れないで────私たちは同じ存在。いつか、一つに戻る時がくるわ》
声に導かれるように視線を向けると、鎖で繋がれた少女が宙に浮いていた。
《その時まで、眠っていてあげる》
そっとマイナに手を伸ばす彼女は、そのまま額にキスを落とす。そして微笑んだ。
《またね、私────おやすみ》
光に包まれた少女を最後に、マイナは深い眠りへと落ちる。
ポチャリ────と小さく鳴る水音とともに。
それが彼女の頬から伝う一粒の涙か、それとも舞い落ちる花びらか……わからなかった。
ふわっと何かが髪を撫でる感覚に、マイナは心地良さを感じ、頬を寄せる。
微睡みの中────ゆっくりと瞼を持ち上げた。
サァァァァと風の音が聞こえ、夜を切り取ったような黒い髪が天に舞う。
運ばれてきた桜の香りと花弁に混じって、甘い香りがこの場を満たしていることに気がついた。
揺らいでた意識が徐々に晴れていくにつれ、その甘美な香りが彼のものだとわかる。
ユウの香りと甘い血に支配されたこの体は歓喜に溺れ、マイナの魂は幸福に満たされていた。
そして改めて悟る──── もう、この神の血から逃れることはできないのだと。
『……気分はどう?』
頭上から柔らかな声が降り注ぎ、マイナは視線を上げる。その瞬間、息を呑んだ。目と鼻の先に、この世のものとは思えない美しい顔があった。
「っ!……ユ、ウ」
金の瞳の中に自分が映る。嬉しさと同時に恥ずかしさが込み上げ、頬に熱がこもった。思わず、手近にあった布を掴み……赤く色づいた頬を隠すように俯く。
そして、潤んだ瞳でユウを見上げた。
「もう大丈夫……だよ……ありがとう、ユウ」
『ああ……』
頬を染めたまま、ふわりと花が綻びるように微笑むマイナに、ユウも小さく口の端を持ち上げる。
二人の間に流れる時間が、やけに長く感じた。
金の瞳と絡み合う視線に耐えきれず、とりあえず体を起こそうとした、その時────。するりと肩から何かがずれ落ちるのを感じた。振り返ると、綺麗な絵柄の羽織が背中にかけられている。
そして、はっとした。
腰に巻きつくように……回されていた腕の存在に────。
マイナはユウの腕の中で眠っていたことに気づき、慌てて離れようとする。だが、緩んでいるように見えたユウの両腕がそれを許さなかった。
「きゃっ……!」
グッとさらに抱き寄せられ、これ以上ないほど密着した体は、よりいっそう熱を帯びる。
トクン────。
全身から伝わる互いの息づかいや体温、心臓の鼓動まで分かちあっている状態に、マイナは眩暈を覚える。
『もう少し休んだ方がいい。……魔力が安定したばかりだ』
心配そうに見つめてくるユウに、マイナは何も言えず静かに頷いた。
ふわふわ舞う桜の花びらが、二人を外界からそっと隠す。淡い花びらの雨は絶え間なく降り注ぎ、誰も近づかせない。マイナは導かれるまま、はだけたユウの胸元に頭を預ける。幻想的な美しい世界に閉じ込められた二人は、桜の木の下で身を寄せ合い続けた。
どれくらいそうしていただろう────。
頬を擽ぐる風に、マイナは穏やかな眠りから目を覚ます。滑らせた手から感じる体温に、ドキリとした。
眼前に広がる白い肌、上下する胸元……そして、はだけた衣服から覗く胸に、置いてあった自分の手。
隙間なく重なった体から感じるユウの体温に鼓動、そして香りで全身を包まれている状態に、マイナの鼓動が跳ねる。
痛いぐらい早鐘を鳴らす心臓に耐えきれず、抜け出そうとするが、思ったよりも力強く抱かれているのか、両腕は解けず……諦めた。
一人、ユウの腕と格闘していたマイナは、体力を消耗し呼吸が僅かに乱れる。そして、もしかしたら目覚めるかもしれない……と、微かな期待を込めて顔を上げた。
マイナを抱きしめたまま眠るユウは、立派な桜の太い幹に背を預け身を任せている。
輝くような金色の瞳は未だ閉ざされ、小さな呼吸を繰り返していた。
乱れた神衣から覗く白い首筋には、紅い血の跡が残っている。傷はすでに塞がり、まるで何もなかったかのように綺麗に消えていた。けれど……静かに眠るその姿は美しく、どこか色気を漂わせていた。




