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21音*.♪❀♪*゜ 繋がれた鎖

傷一つない首筋が、月明かりに照らされて淡く艶めいている。

衣服は胸元まで乱れ、雪のような肌をさらしていた。線の細い身体は無駄なく引き締まり、ほどよく筋肉が浮かび上がっている。


静かな色気を漂わせるユウに、マイナは視線を僅かに逸らした。


(……お兄様や騎士たちで慣れてるはずなのに……どうしてこんなに──── 見ちゃいけない気がするの?)


瞬間。


ドクン────と、心臓が脈打つ。


ジャララと鎖が擦れる音がした。

心の奥底に封じた少女が、鈍く光る鎖に縛られながら、妖美に嗤う。闇の中から覗く、鮮やかな紅い瞳が愉しげに細められた。


『マイナ……』


ユウの声にハッとする。頬に添えられた右手が動くのを感じて、反射的に体が強張った。次いで、そっと親指が唇に触れ……なぞる。


カァァと全身が熱を帯び、頬がじんわりと色づく。


「っ……!」


そして、ユウの顔が近づき……吐息が耳を掠めて、ピクリとマイナの肩が揺れた。


『渇いて、いるのだろう?』


鼓膜を刺激する甘い声に、抗えないと本能が告げる。

その刹那────マイナの瞳が真紅に煌めいた。

ユウに手を伸ばそうとして自分を抱きしめる。


『っ!ユウ……だ、め……逃げ……て』


湧き上がる渇きに、意識が霞みそうになりながら……両腕に爪を立てた。視界が紅く染まりユウの首に、釘づけになる。


《欲しい────》


眠らせた(本能)が目を覚ます感覚に、冷や汗が浮かび上がり、呼吸が浅くなっていく。


『っ……!』


必死に耐えるが、治らない渇きに呑まれそうになる。


《ユウの全てが欲しいの────》


溢れでる涙が頬を伝い、ぽたりと零れ落ちた。


《コノカワキヲ、イヤシテクレル。血ガ────。私ノ心を、埋めテくレる、彼ガ……必要ナノ────》


渇ききった喉に痛みが走り、呼吸が漏れる。


『ふぅ……ユ、ウ……』


ふらつく体が倒れる寸前────ふわりと……シャボンと甘いフルーティーな香りが、肺に満ちた。


滑らかな素肌が頬に触れ、焼けつくような熱に溶けてしまいそうだ。


けれど……不思議と嫌ではない。むしろ心地良ささえ感じる温もりに、手を伸ばしたくなる。


それが、はだけた衣服から伝わるユウの胸元だと気づいた瞬間────マイナはユウに抱きしめられているのだとようやく理解した。


背中に回された腕からも、服越しに熱を感じて目の前が、くらくらぼやける。


密着した体から伝わる香りと体温に、意識が溶けていくようで、もはや限界だった。


『思ったより抗うね……でも、そろそろ限界かな?』


ユウに顎を持ち上げられ、金色に輝く瞳と視線が絡み合う。


『我慢強いことはいいことだけど、そこまで耐えられると私も少し傷つくな……。君にとって僕は、魅力的に、みえない……?』


少し……悲しげに微笑むユウに、マイナは心の中で即座に否定する。


(違う!そんなことないっ……ユウは……ユウは、私にとって……)

《そう、私たちにとって────》


少女がマイナの両肩に手を置いて、背後から囁いた。


ジャラジャラ揺れる鎖と一緒に、漆黒の髪が靡いている。胸が締め付けられる思いに呼応したのだろう。闇の中で眠っていた少女が浮上したのだ。


そのまま呑み込まれそうな勢いに、瞳が激しく光だす。


さっきよりも濃く漂う香りに、じわじわと熱に浮かれながら、必死にヴァンパイアの本能に抗う。


《まだ、耐えるの────?》


少女が嘲笑うかのように、クスリと嗤う。


《あの白い首筋に牙を立てて……溢れ出す血に、口づけたいでしょう?》

『っ……。大切なの……』


マイナはユウの服を握り締めながら、頬を伝う涙とともに言葉を紡ぐ。


《だからこそでしょ?大切だから、全部、飲み干して一つになるの》


少女を繋いでいた鎖が、徐々に光の粒へと変わりだした。


封印が解け始めているのだ。そして今度は、マイナに闇が絡みついた。


《きっと、とても甘いわ。知ってるでしょう……?思い出して、あの味を。甘美なるあま〜い血を。お兄様よりも甘くて、芳醇な香りが体中を満たしてくれる。私の心も全て────》


後ろにいた少女は、するりと前へ回り込むと……そのまま抱きしめる。


『ユウが大切なの……』


マイナの言葉に、少女の綺麗な紅い瞳に涙が滲む。


《狂おしいほどの、甘美な血が私たちの中で溶けていく感覚を忘れてしまったの?ユウの血に宿る神力と私の魔力が混ざり合い……一つになった時の幸せを思い出して────》


少女がマイナに口づけた刹那────焼けつくような渇きが全身を支配した。


『っ!はぁっ…………』


潤む瞳から涙がポロポロと零れ、息が抜けていく。

マイナの濡れそぼった目尻に、ユウの柔らかな唇が触れる。


『我慢しなくていい……君が望むまま、好きなだけ飲んでも大丈夫だよ』


そう言うと、優しく頭を抱き寄せられ……目の前に白い首筋が差し出された。


耐え難い香りに意識を手放したくなるが必死に堪え、顔を背ける。


『でも、傷つけたくないのっ……だから……だからっ、逃げて……』


ユウは一瞬、目を丸くすると……ふふっと微笑んだ。


『君が思ってるより、やわじゃないよ。知っての通り、僕は神界で頂点に次ぐ神なんだ。そんな存在が、血を飲み干された程度で、簡単に死んだりしない。だから、大丈夫……大丈夫だよ』


月のような金の瞳が、宝石のように煌めく真紅の瞳と交わる。


甘い香りに誘われるように、マイナはユウの背中へ手を回した。




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