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23音*.♪❀♪*゜ 世界の管理者

そっと、ユウの頬に触れる。風にさらされていたせいか、ひんやりと冷たい。でもその下から温もりを感じ、ほっと胸を撫で下ろした。


銀の睫毛に縁取られた瞼が微かに震え……緩やかに持ち上げられる。目覚める気配に、手を引こうとした刹那────ガッ、と手首を掴まれ……息を呑んだ。


微睡んだ金の瞳は優しげに細められ、ユウはマイナの手を包むように自分の手を重ねた。そしてそのまま、すりっ……と、手のひらに頬を擦り寄せてくる。


「っ……!……ユウ?」

『ふふ……もう少し、このまま……』


驚くマイナとは反対に、ユウはふわりと微笑み……目を閉じる。甘えるような仕草に鼓動が跳ね、キュンとした。


(か、かわい〜!今日のユウは、なぜかすごく可愛く見える……)


思わず抱きしめて、頭を撫でてあげたい。

そんなふうに心の中で思っていると……。

形のいい唇が流れるように動き、手のひらへとキスを落とした。


「ユ、ユウ?!」


予期せぬ行動に、マイナの頬は薔薇色に染まり恥ずかしさで目が潤む。

開かれた金の瞳は、つぅ……と視線だけをこちらに向け、どこか満足そうに目を細めた。




。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。




────あれから暫く経っても、ユウはマイナを抱いたまま離さない。


お互いの体は、隙間がないほど密着したままだ。

肩も胸もお腹も。全てが重なり合い、互いの体温が混ざり合う。マイナはユウの体に全身を委ねように抱き込まれ、彼の胸へともたれるしかなかった。


ユウの太腿の間に収まった体は、すっぽりとその腕に抱かれ、到底逃げ場などどこにもない。


繋がれたままの手はユウの胸元に添えられ、もう片方の手は変わらず腰へと置かれていた。


触れられている場所に熱がこもる。

意識すればするほど、温度が高くなった気がした。

高鳴る鼓動に気づいていそうで、マイナはユウの胸元から……なかなか顔を上げられない。


そうしているうちに────。

二人の間には、どこか甘い……まったりとした時間が流れ続ける。


世界から切り離されたような、永遠にも似たこの時間が『ずっと、続けばいいのに……』と、マイナは密かに思った。





『……会合が始まったようだね』


ふと、熱を帯びていたユウの瞳から感情が消え、無機質なものへと変わる。その後すぐ、静かな声が頭上から降り注いだ。聞き覚えのある言葉に、マイナはゆっくり顔を上げる。


「……会合?」

『ああ。急遽、魔界と神界の一部の有力者たちが集まっているんだ。魔界側は六、十一、十二を抜かした真祖とその直系のヴァンパイア、神界側は神皇と腹心である一部の神々。そして、その直系の後継者たちが参加している』


想像していたよりも大きな会合に、マイナは内心おどろいた。


(てっきり、ヴァンパイアの王とそれに連なる者たちが集まる、小規模な会合かなと思っていたけど……両族が参加するなら、思ったよりも事は深刻かもしれない)


議題の内容は恐らく、オルゼオールとルクスに関することだろう。

彼らが引き起こし出来事は、どれも世界の理に触れていたからだ。


特にオルゼオールによる、【ヴァンパイアの急増】や【天使を捕らえ使役】、さらには【神々を邪神へと堕とし、世界の均衡を崩そうとした件】他にも【神や精霊を喰らい取り込み、力の吸収を画作】など、ざっと思い浮かぶだけでも沢山でてくる。


それに比べてルクスは、まだいい方だった。

【次元を超えた魔物でキメラを作成】という、禁止されてはいるが……理にはギリギリ触れていない。それを世界に放ち、生態系を崩さない限りは大丈夫だろう。


だが問題は、彼につけられていた首輪だ────。


『争うつもりはないよ。私はね……。だけど、彼らが許してはくれないんだ』


もしあの時の言葉が本当なら、ルクスはなんらかの理由で天庭協会に縛られていることになる。


真祖に首輪をつけたとなれば、両族とも黙ってはいないだろう。


ただの人間が、理に触れることは世界の均衡を崩す行為に他ならない。


ラティーナの一件で、すでに天庭協会は理に触れている。


二度目は許されない。


事実と判明した場合、協会は神からの裁きを受けるはずだ。


オルゼオールによって起きた世界の乱れは、同族としてヴァンパイア側が対処し、もちろん後処理も行った。


しかし、天庭協会の件は神界側の管理者が介入し、収拾を図るつもりだろう。彼らに加護を与えたのは神々なのだから、当然といえば当然の結果ではあるが────。


(でも、そうなると……私たちが動きづらくなる)


未だ泳がしている【黒猫】や【ラティーナ】に【ルクス】の件、調べるにはどうしても神界側と接触する可能性が出てくる。


それは、魔界側からしたら……やりづらい事この上ない。自由に動けなくなるからだ。


世界の均衡を保つ為に、魔界と神界は原則として互いの世界に干渉しない。


その為、魔族と神族が頻繁に関わることはあまりないのだ。


しかし。一年に数回、魔界と神界の有力者たちが集まり、世界に関する情報を共有する会合がある。


それが────。


(世界の管理を担う、調律者による定例会議。全員そろってないとはいえ……急遽、開かれたとなると余程重大な事態が起きたということ。……でも、世界の異変は感じられない。均衡も保たれている。世界の主も今は、世界のバランスについて特段問題視しているようには見えない。それなら、一体何が起きたの……?)


ユウの腕の中でマイナは考えを巡らす。


本来なら、定例会議で共有すれば済む話だった。

二ヶ月に一度、開かれる会合はちょうど今月の中旬に行われる。定例会議まで、あと十日と少しだ。


それなのに……あえて集まった理由が引っかかっていた。それも特定の人数というところが────。


マイナは、これから起こり得る可能性を思い浮かべ一つずつ消していく……同時に今後訪れるであろう展開を予測し、思わず小さな息をついた。


────彼ら(調律者)が思い描いている、望ましい結末に。




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