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鉄心の加護

「えええええええええええ!!


お兄ちゃん名前も聞いてないの!?

馬鹿なんじゃないの!?


名前わかんなかったら探しに行けないじゃん!!

馬鹿なんじゃないの!?」


「黙ってろ。」


「ユーリとコウタローが死んじゃったんだから、うちらのパーティ、人補充しなきゃいけないんだよ!?

あの人いてくれれば百人力じゃん!!

なんで引き留めなかったの!?

なんで誘わなかったの!?

なんでなんでなんでなんで、

ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!」


「あーもーうるせぇうるせぇ。

明日朝一でギルドに活動困難報告出さなきゃいけないんだ。

俺はもう寝るぞ。」


「むぅううううううう!!

お兄ちゃんの馬鹿!肉盾!鈍重!歩く的!!トラントの大木!!

ばーかばーかぶたのけつー!」


「あぁ!?上等だてめぇ!表出ろ!!」


ここはとある都市の安宿、七転八倒亭。

ワイルドウルフに半壊させられたCランクパーティ『鉄心の加護』が拠点にしている安宿。


そしてぎゃいぎゃいと言い争っている彼らこそが、Cランクパーティ『鉄心の加護』の壊れなかった半分、トール()デール()の兄妹である。


名も知らぬ魔法使いは、デールの命を救った後も、アフターサービスと称して二人が拠点にしているこの宿まで付き添ってくれたのだ。


宿につく少し前にデールは目を覚まし、しばし仲間の死を悼んだ後、自分と兄の命の恩人である魔法使いに感謝を述べ、安宿に着くまでの短い間、兄から聞いた魔法使いの活躍に興奮冷めやらぬといった様子で語らっていた。


安宿の入り口で魔法使いと別れ、自室に戻り、「そういえば名前を聞くの忘れた」と兄に名を聞こうとし、当の兄がパーティへの勧誘もしてなければ名前も聞いていないと知った後の顛末が上記の有様である。



しかしトールにもパーティ加入を切り出せない理由があった。


彼女は回復魔法も攻撃魔法も使いこなし、初級魔術でBランクモンスターを殲滅する、Aランクはあるであろう上級魔法使い。

方やこちらは魔法職と火力を失い兄妹二人、タンクとレンジャーのみのあまりに貧弱な木端パーティだ。


パーティとは大なり小なり支えあうもの。

一方向の依存関係は必ずパーティを崩壊させる。

トールは短くない冒険者人生でそれを痛感していた。


故にこそ彼女をパーティに入れることは出来ない。

彼女が入ったら彼女の能力に依存してしまうのは目に見えているからだ。



自分のパーティへ誘えないのなら、いたずらに親しくするのは逆効果でしかない。

彼女のような冒険者なら、自分たちより良い条件のパーティが良い条件で仲間にしたがるだろう。

下手に親しくしてしまっては、他のパーティが誘うときの邪魔になってしまう。


妹にそれを話せば「私達なら大丈夫!!」と根拠の無い自信で一刀両断してくるだろう。

しかし妹の「それ」は的中率2割弱程度の代物であり、それをこの上ないほど理解しているトールにとっては全くあてにならない代物だった。


(そうだよ。これでよかったんだ…。

これ以上、恩人である彼女に迷惑がかかるような事はしたくない。)


そう自分に言い聞かせ、今だぎゃあすかと喚いている妹を尻目に、兄は事故パーティ助成金はどの程度だったか思いながら眠りに落ちるのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「あれ?」


「あら。」


「あー!昨日のお姉さん!!」



翌日の冒険者ギルド。

窓口にパーティメンバー二人の訃報を報告し、代わりにお悔やみの言葉と事故パーティ助成金の申込書。

そして結果的とはいえワイルドウルフの討伐した事による割増報酬を受け取った兄妹は、依頼書が張られた掲示板の前で予想だにしなかった人物に出くわした。


誰であろう昨日出会ったばかりの命の恩人、その人である。



「あなたとこんなところで会うとは思いませんでした。

昨日はどうもありがとうございます。」


「いえいえ。感謝の言葉は昨日たくさん頂きましたから。

妹さんも大事無い様で何よりです。」


そんな当たり障りの無い言葉を交わしながら、兄は思考を巡らせていた。

今にも飛び掛らんとする妹を、目で抑えるのも忘れずに。



冒険者ギルドでは基本的に、掲示板ではなく窓口に申請して仕事を斡旋してもらう。

その方が自分らに適切な依頼がどれなのか解るし、窓口で依頼内容に関するギルドの所見を聞くのも依頼遂行に有利に働く。

AやSと言った高ランク冒険者であるならば、ギルドすら通さずお抱えの富裕層から固定給をもらって活動している冒険者も少なく無い。


ここのギルドはそれ解っており、基本的に誰も利用しない掲示板の依頼更新はあまり頻繁には行わない。

今掲示板に残っているのも、薬草や獣肉の納品のような常駐依頼がほとんどで、たまにCランク以上に限定した割の良くない狩猟依頼がある程度だ。


彼女のような高ランクと思われる冒険者が足を止めて見るような情報はいくつも無いはずである。


「あの…」


そう兄が思案にふけっていると、相対していた恩人はいつの間にか落ち着かないようにロッドをいじりつつ、話し難そうにこちらをちらちらと見ている。

何か用事があるのだろうか?


「あぁ、すみません。お時間を取らせてしまって。


俺たちはもう行きますので、これで。」



「あっ!ちょ、ちょっと待ってください!!」


そう言って呼び止める彼女の目は必死だった。

ワイルドウルフを瞬く間に駆逐する力を持っているとはとても思えない、今にも泣き出しそうな目である。



「え、と…あの…なにか…?」



「も、申し訳ありません。

実は私生まれつき、耳が人より良く、あなた方が先程受付で話しているのを聞いてしまったのです…。

昨日、モンスターの襲撃で仲間を亡くし、助成金が必要だと…」


あぁこれは昨日の討伐報酬の話に繋がるのかなと訝りながら聞いていると、彼女はそこには一切触れず、思いもしなかった事を切り出した。



「わ、私を、あなた方のパーティに加えていただけませんか!?」


閲覧いただきありがとうございます。

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ヽ(・∀・)ノ

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