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第一印象というもの。

事の起こりは、アシュリーが鉄心の加護の二人と出会う二日前の出来事である。


この日、アシュリーは冒険者として登録する為、冒険者ギルドへ足を運んでいた。


幾度か道に迷ったものの、日が中天に差し掛かったあたりで無事ギルドを見つけ、中に足を踏み入れたアシュリーへ、ギルド内から3種類の視線がぶつけられた。


一つは彼女の美しい容姿風体に向けられた下品な視線。

一つは彼女から溢れる膨大な魔力に畏怖する視線。

最後の一つは、ギルド内のトラブルを監視する、職員からの疑惑とも警戒ともつかない視線である。


特に一つ目の視線の不快感に眉をわずかにしかめつつも、アシュリーにとっては目的を果たすのが最優先である。

努めて無視し、ギルドの受付で冒険者の登録を済ませると、それを待っていたかのように不快感は増大した。


恐らくギルドの誓約にあった「冒険者間のトラブルにギルドは介入しない」という文言故だろう。


つまり一つ目の視線の主たちは、冒険者の登録を済ませた彼女を「ギルドの庇護下からはずれ、自己責任の世界にまんまと足を踏み込んだカモ」だと認識していると言う事だ。


「そういうお約束」が物語にはつき物なのだとダンジョンコアから聞いてはいたが、まさか本当に起きるとは思っていなかったアシュリーは、自らのマスターに対する敬意半分、自らの浅慮への自嘲半分で苦笑してしまった。


その苦笑をどう解釈したのかわからないが、大方自らに都合のいいよう解釈したのだろう。

一つ目の視線の主の中で、殊更に強い視線をぶつけて来ていた7人ほどの屈強な大男達が、ギルドを出ようとしていたアシュリーを取り囲む。



「へへへ…。こんな所にエルフが一人で来るもんじゃねぇぜ。」

「そうそう。魔法も使えないギルドの中じゃエルフの女なんか一ひねりだからな。」


「あら、この中では魔法が使えないの?

それは知らなかったわ。」


試しに弱いゲイル(強風)の呪文を唱えてみると、魔力は問題なく操作できるものの、魔法の術式が妨害されているようで、うまく発動しなかった。


「ふーん。ほんとね。

なるほど、これは興味深いわ。」


「何余裕ぶっこいてんだこのアマ!」


そう吠えながら大男の一人が掴みかかってくる。

その直線的な動きをひらりとかわしながら、職員は何をしているのかと思って振り向くと

取り囲んでいる大男とは別の男が、職員がこちらに来るのをその体躯で露骨に妨害していた。


あの様子では容易には来れないだろう。

それはつまりアシュリー一人でこの七人の肉だるまの対処をしなければならないと言う事になる。


「魔法が使えないのだからしょうがないわよね。

初めてだから痛くしちゃうかもしれないけど、我慢して頂戴」


「はぁ?誘ってんのかテメェ!上等だよ!」

「お前らも見てねぇで手伝え!こいつちょこまかと逃げやがって!」


その言葉を合図に、囲んでいた七人がアシュリーを押さえ込まんとその包囲を狭め、捕らえに来た。


それに応ずるように、アシュリーは首に下げていた装飾品へと魔力を巡らし、起動させる。


それは少し前に細工屋の主人に「そんな馬鹿げた道具は買い取れません!絶対市場に流さないでください!戦争が起きます!」と必死の形相で念を押された膂力強化の最新作であり

「欠点を補うのにちょうどいいから私物にしてしまえ。使う機会があったら感想教えてくれ」と半分強制的にマスターから押し付けられた、鉄製の装飾品であった。


『魔力充填確認。術式展開します。

膂力向上1ランク

膂力向上1ランク

膂力向上1ランク

膂力向上1ランク

オプショナルパターン十二角形(ドデカゴン)

再適用(リピート)


術式適用。

SSSS(クアドルプルS)パラメータ』


脳内に響いたその声が終わると同時に、まずアシュリーの体感に異常が生じた。

手に持っていたロッドの重量が消えたのである。

元々大した重さでもなかったが、それでも多少の重みは感じていた。

それが今や、まるで風船でも持っているかのような感覚であり、物を持っていると言う実感がまるで無い。


「…?

なにこれ?」


思わずロッドをしっかり握ろうと軽く手に力を入れた瞬間、バギン!!と凄まじい音を立ててロッドは中ほどから折れてしまった。


アシュリーは未だ自らに訪れた変化を理解し切れてはいないが、周りの状況はそれを待ってはくれない。

何度も掴みかかってきていた男のうち一人がアシュリーの腕を掴み、力任せに押し倒そうとしてきたのだ。


「へへへへへ…。もうにがさねぇぞ…。」


「いや、ちょっとそれどころじゃないのよ、離しなさいっ!」



邪な目的に目が眩んでか、男の目は血走り、およそ正気と呼べるものを何一つ宿していないが、体の変容が理解できていないアシュリーにそれを配慮する余裕はない。

彼女の名誉のために述べておくが、彼女は手を離してほしくて振り払っただけであり、それ以上の意図は決して無かった。



振り払った結果、彼女の手を掴んでいた大男が、掴んでいた手を残して真後ろに吹っ飛び、椅子、テーブル、棚、壁、樽、更には民家を巻き添えに遥か彼方へ消え去ったとしても。



目の前で起きた信じられない事態に唖然とする彼女であったが、惨劇はそこで終わってはくれない。

方法が不明とはいえ、目の前で仲間を失った男達は激昂し、血を上らせた頭で次々にアシュリーへ襲い掛かる。


しかし振り払うだけで人が消し飛ぶ膂力に加え、生まれつき護身術を備えた彼女に、少し体が大きいだけの人間が適うはずも無く。

アシュリーが自衛のために掴み返した腕は小枝より脆くへし折れ、向かってくる拳を払えば手首から先が消え去り、武器を受け止めれば武器が木端微塵に砕ける始末。


結果このトラブルは、死者一名、重傷者四名(後に回復魔法で治療)という、ギルド内で発生したトラブルとしては史上有数の大惨事と成り果てた。


状況が状況だったため、アシュリーに非があると言う論調は皆無であったものの、この事件によりアシュリーの第一印象は考えうる限り最悪に極めて近い形でギルドと冒険者に記憶された。


つまり『魔法使いであるにもかかわらず、化け物クラスの力持ちで、更に彼女はその力が制御できていないのだ』と。

要するにアシュリーの自己防衛は『あまりにもやりすぎ』だったのである。


それが冒険者家業にとって如何に絶望的な風評であるかをアシュリーが身をもって知るのは、事件の翌日の事であった。


●今回使用された装飾品の図形


挿絵(By みてみん)



以下作中設定

●多角形、及び星形多角形の持つ魔術特性について


◇多角形

三角形 = どれか一つのパラメータを1ランク上げる。対象パラメータは素材依存

四角形 = どれか一属性の魔術、技能の性能を2ランク上げる。属性は素材依存

五角形 = 強固な無属性防壁を展開する。耐久性は素材依存

六角形以降=頂点が合成数の多角形はその約数の数に応じた特性が発生する。

→ 約数3:難壊化(ロバスト)。装飾品が壊れにくくなる

→ 約数4:効果常態(パーペチュアル)。一度起動すると、意図して解除しない限り丸一日魔術特性が適用され続ける。

→ 約数5:付与化(エンチャント)。魔術特性を他者に付与する事が可能になる。

→ 約数6:再適用(リピート)。魔術特性をもう一度重ねて適用する。


◇星形多角形

五芒星 = 素材に応じたC級魔法がノーコストで発動する。

八芒星 = 未定、素材に応じたB級魔法がノーコストで発動する。

十芒星 = 未定、素材に応じたA級魔法がノーコストで発動する。

十二芒星 = 未定、素材に応じたS級魔法がノーコストで発動する。

十五芒星 = 未設定(募集中)


◇素材の持つ特性

銅=火、知性

鉄=土、膂力

木=風、体力

動物由来の素材(骨や貝殻)=回復、生命力



耐久性(今決まってる分)

動物由来<木<銅<鉄


●今回の装飾品の説明(蛇足鴨)

装飾品内には円に内接する正三角形が全部で4つ。

材質は鉄なので膂力のパラメータ1ランク上昇が4回。

十二角形も作図されており、12は合成数でその約数は6個

約数6個の合成数が持つ特性は再適用(リピート)

膂力のパラメータ上昇がもう一回繰り返され、計8ランク上昇

よってパラメータはE→SSSSへ。

人外クラスの怪力へ一気に強化されたアシュリーは、うまく加減できず惨劇に

という流れ。


閲覧いただきありがとうございます。

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