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ファクトリー

ゴンゴンゴン…ゴンゴンゴン…


ゴトゴトゴトゴト…ゴトゴトゴトゴト…


洞窟の奥から響く採掘の音。

そして絶え間なく土と石くれを運び続ける、木製のコンベア。



ここはクロノ王国新生代(セノゾイック)40番都市から、徒歩で二時間程の場所にある洞窟型ダンジョン。


ダンジョンの前には札が立てられ、洞窟内には工房とその防衛用のゴーレムがある事。

洞窟への無断の侵入には防衛ゴーレムによって対処する為、命の保証は出来ない旨が明記されている。


経験ある冒険者が見ればここがダンジョンである事は一目瞭然であるが、対外的にはあくまで工房があるただの洞窟だというのがミソである。


ダンジョンの朝は、輸送係兼広報係兼営業係兼調達係であるエルフが訪れる所から始まる。



「おはようございます。マスター。ゴー太郎」


「ゴ…ゴゴ。」


両手一杯に鉄鉱石を抱えた彼女はアシュリー。

前述した四足の草鞋(輸送広報営業調達)を履きこなす、ダンジョン・レディであり、対外的にはこの工房の主でもある。


彼女は「これ、鉄鉱石ね。」と告げて荷物を警備ゴーレムに渡すと、小走りで洞窟奥へ向かう。


洞窟の地上一階は入り口から最奥まで余さず総フローリング床であり、壁も木材で補強されている。

銅斧による伐採が可能になって以降、木材は潤沢に使用できる有用な資源となり、最も人目に触れる可能性が高い地上一階が真っ先にその恩恵を受ける事となった。


視界には洞窟奥から土や石を運び出している木製のコンベアと、逆に必要な資材を洞窟の奥へ納入するためのコンベア、更に地下二階の加工所で加工された製品を搬出するコンベアの3つ以外は存在せず、洞窟内は実に整然としている。


少し進むと日の光は入らなくなるが、街で購入したウィスプの無煙灯(1つ五銅貨5枚)が等間隔で配置されているので明るさに問題は無い。

ホムンクルスもゴブリンも夜目が聞くので必須ではないが、万が一でもトラブルがあっては馬鹿馬鹿しいというダンジョンコアの意向である。


一階から地下一階への移動はらせん状の階段となっており、階移動のコンベアはダンジョンコア設計のスクリューコンベアを用いている。

スクリューコンベアは急勾配でも安定して輸送できる為、階移動には極めて都合がよいのだ。


地下一階にはダンジョンコアが座す加工所があるが、ダンジョンコアに視点を移す前に、今後の為にこの洞窟で行われている資材の選別システムを説明しよう。



洞窟の入り口で鉱石を渡された警備ゴーレムは、内容物に危険な品物がないかをチェックした後、鉱石を荒く砕き、選別用コンベアに流す。

これは鉄鉱石を名乗って売っている場合でも、意図せず別の鉱石が紛れ込むケースが少なくない為である。


選別用コンベアを流れる資材はウッドアームによる選別で鉄鉱石、銅鉱石とそれ以外の鉱石に分けられる。

鉄でも銅でもない鉱石を製錬する設備は未だ用意がない為、そういった鉱石は今後の為に貯蔵される。


鉄鉱石及び銅鉱石の場合は製錬用コンベアに流され、それぞれ鉄鉱石用、銅鉱石用の製錬炉で製錬される。


製錬炉では、投入する鉱石に複数の金属が混ざっていた場合、その二つを個別に製錬、出力する為、製錬炉の出力は再びウッドアームによる選別を受け、不適切な金属は貯蔵庫へ回される。


こうして製錬、選別された鉄、銅は装飾品への加工資材として地下一階の加工所へ運搬されていき、ダンジョンコアによって装飾品に加工された後、今度は搬出用のコンベアによって洞窟入り口まで運ばれるのである。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「昨日の作業について報告に上がりました。マスター」


-- ん、あぁ、もうこんな時間か…。

-- 地下にいると時間の感覚が掴めないから困るね。


一日の区切りを告げるアシュリーの来訪。

ここ最近は地下に引きこもりきりの僕にとって、それは屋外の情報を得る貴重な機会であり、洞窟の外に出られない僕と外界を繋ぐ唯一の接点だった。


装飾品を街に売る様になって二十日程経ち、ダンジョンの様相やアシュリーとのやり取りも、紆余曲折の末にようやく安定し始めた。


まずアシュリーだが、彼女は居を街に構える事となった。


理由はいくつかある。


第一に、アシュリーにはこのダンジョンがスタンピードの恐れのない安全安定したダンジョンであると広めてほしいという事。

風聞を広めるのなら洞窟より街に居を構えた方が何かと都合がよい。


第二に、アシュリーはゴブリンやゴーレムと異なり、定期的な睡眠や食事が必要である事。

ダンジョン内にいれば魔力は供給されるが、食事や睡眠はそうもいかない。

また、洞窟生活では清潔を維持するのも容易ではなく、外観は交易へ影響する。

清潔感の維持は交易の安定につながるのだから、この点でも洞窟より街に居を構えた方が都合がよい。


第三に、装飾品のパフォーマンスが必要である事。

装飾品の卸先が決まったのはめでたいが、それをこの先安定して続けるには装飾品が売れ続ける必要がある。

装飾品の買い手はほとんどの場合富裕層ではあるが、富裕層の耳に市場の話題が入るのは、たいていの場合抱え込んでいる冒険者からであるのだ。


その為、アシュリーには冒険者ギルドへ登録してもらい、僕の作った装飾品の性能をアピールしてもらう事になったのだが、それには円滑な人間関係が必要不可欠となる。

洞窟生活ではそれも難しい為、街に居を構える理由となる。


第四に、鉄資源の購入、運搬が必要である事。

現在僕がダンジョンを構えている洞窟では、時折銅鉱石が出土するものの、鉱脈は未だ見つかっておらず、金属資源が潤沢とは言い難い。

その為、人間の都市で鉱石を購入、更に洞窟まで資材を運搬する必要が生じる。

結局都市に足を運ばざるを得ないのなら、居を構えてしまっても構わないだろうという理屈である。


以上の理由から、アシュリーは装飾品を卸している都市に居を構え、毎日鉱石を運んできてくれているのだ。

アシスタントとして製造したとはいえ、その献身は非常にありがたい。


彼女にとっても辛いばかりではないと思ってはいるが、近いうちに日頃の出来事を聞いてみるとしよう。

もしかしたらなんかしらの不満を溜め込んでいるかもしれない。


善意に胡坐をかくようになってはおしまいだしな。


閲覧いただきありがとうございます。

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ヽ(・∀・)ノ

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