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V[M]星屑の漂流者~自世界転生で仲間達を守り抜く~  作者: くろめ
帰ってこない大人たちと、見知らぬ少年たち
39/40

32 緑髪少年は愛おしい

    ★☆★


「おまちしてました。ベガさん、ルイさん」


 草のトンネルを抜けてしばらく歩くと、緑髪で身長がやや低めで、温和な雰囲気を持った少年が待っていた。顔を見るなり、いきなり名前を呼んでくるから驚いた。


 ルイの知り合いという訳でも無さそうだし、何故名前を知っているのだろうか。それを聞く間もなく、少年は続ける。


「研究所で朝倉さんがまってますよ! はやくいきましょう!」

「ちょっと待て、朝倉って誰だよ。それに、君は……」

「あっ、え……? 何もお伝えされてないんですか……?」


 自分たちは朝倉という名前はおろか、この先にあるものが研究所だとも知らない。伝えられていたのは、ただこの先に居るのが「別世界からやって来た人間」であるということだけな訳で。


「んーー……」


 少年は悩ましそうだ。自分のすべきことを考えているのだろうか。


「えっと、そしたら最初は、君の名前を教えてほしいな」


 ルイが問う。別世界のような、不可思議なことが大好きな彼だ。自分なんかよりも質問には適していることだろう。


 ……それにしても、随分と平凡な質問だな。自分も気になっていたこととはいえ。


「えっと、僕の名前は『朝比奈 星夜』です。よろしくお願いします」


 ぺこりと、礼儀正しくお辞儀をしてくる。ここまで礼儀正しい人に会ったことが無かったため、何だか新鮮だ。


 一応言うと、ルイも礼儀正しい方だ。けれど、それが霞んで見えるほどに動作の一つ一つが丁寧で、心が込められている。相手を想う気持ちがしっかりとしていなければ出来ないことだろう。


「せーやかぁ……良い名前。よろしくね」


 ルイはそう言うと、手を差し伸べる。ほら、こういう所が丁寧なんだよ、ルイは。


 対して少年は、はわわと言わんばかりにワタワタとしながら、両手でその手を握り返す。


 握手が終わる頃には、それまでの慌てようはどこへやら、朗らかな笑みが浮かんでいた。



 ……この子、面白いなぁ。




 それから例の施設―朝倉研究所というらしい―へと移動している最中にも、ルイは間髪入れず星夜に質問攻めをする。幾ら楽しみだったからといって、がっつき過ぎだ。


「それからえーっと……」

「はふう、ちょ……ちょっとまってくれませんか……?」


 星夜にも疲れが見え始めている。ルイがその言葉にしっかりと応じて、しっかりと待ったのは安心できた点だが……。


 このように質問質問、待ってまた質問のサイクルを繰り返して、深い所まで聞こうとする。


 具体的には、朝倉という人物から研究所について。果てには星夜や他の職員の詳細なプロフィールまで。


「星夜は元々の世界で何してたの?」

「それはー……えっとー……」


 だからといって個人情報の領域は流石にまずいだろう。星夜が若干たじろいでるじゃないか。


 流石に聞き過ぎだと、そろそろ静止をかけておく。

 自分が居なかったらどうなっていたんだろうな。


 とはいえ、おかげで今必要な情報は全部手に入ったのはありがたいことだ。


 今向かっている朝倉研究所の職員は、星夜を含む三人。そしてその全員が、確かに別世界からやって来たということ。


 天才研究者朝倉と、凄腕技師の技師『能冥 械斗』の力で、どのようなものでも作成し、世に送り出すことができるということ。


 これを聞いた時、ヒカリがどうしてこの場所を勧めたのか、何となく分かった気がした。


 きっと朝倉研へ行けば、過去から来たお父さん達を、元の時間に戻す方法がわかるのではないか。そう思ったのだろう。


 自分らは先に来ることで、全てを納得できた状態でお父さん達を送り出すことができると。そういうことか。



 長々と考え、結論を出した頃には施設に到着していた。


 球体を横半分に切ったような形をしている。何というか、ただそれだけだ。


 小さな窓が幾つかあって、上の方に屋上があるように見えるぐらいで……。外観はそれ以上に大した特徴があるわけでは無さそうに思える。


「……?」


 何だろう、何か違和感がある。既視感だ。

 (わたし)は、この施設を一度見たことがあるような気がする。


「ベガ、どうかしたの?」



「……あぇ? あ、いや……何でもないよ。不思議な外観だと思ってさ」

「半球体って形に心擽られるよ~」

「そ、そうか……」


 ルイはブレないな、それが良さでもあるのだけれど。


 ……はて、自分は何を考えていたのだろう。


 忘れてしまうのなら大したことではないか。


「あ、そうそう。今、ジクウがみだれているみたいで、それをどうにかするために、お二人は頑張ってるみたいです。なのでもしかしたら、しばらくお時間をいただくかもしれません……」


 星夜の口から、何やら複雑な言葉が出てきた。


「時空……? 具体的にはどういうことが起きてるんだ?」

「んー……。ごめんなさい、センモンガイです……」


 星夜は申し訳なさそうに言う。どうやら分かり切っていない言葉を、頑張って使っているようだ。


 舌ったらずな喋り方も相まって、とても愛おしい。母性が擽られる気分は、こういうものなのか。



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