30(改) 俗にいう、おんぶにだっこ
「さて、どう進むか……」
辺り一面に広がる、身長よりも長い草木。これほどまでに長いと、無理やり超えるには少し無理がある。
「どこかに通れる道がないか探そうよ」
見ると、左右に一本ずつ道が広がっている。自分はルイの提案に賛成して、この内の右側へと進んでいく。ただ進むだけでは何も進展しないので、周囲の観察を怠らない。
「ん……何だか変だな」
数十メートルほど進んだ辺りで、周囲に、他とは違う何かを感じた。
一旦足を止めて、より視野を絞った観察をしていく。
「何かあったの?」
「今探してる……あ、これか……」
右手側に生えた大きな木。単なる木なら違和感も何もないのだが、問題はそこに掘られた文字だ。
『うしろを向いて、そのままちょくしんです!』
小学生が書いたかのような、雑な掘り方だ。
「……信じる?」
「……いたずらにしか見えないけどな」
かといって、このまま何も見つからずに、先へ進めないという訳にはいかない。
後ろを振り返って、大きな草木を、よりしっかりと観察してみる。
じっくりと見てみて気が付いた。大きな木の向かいだけ、草木が少ないのだ。
ここだけ進めるようになっているのでは。それを信じて、スッと手を入れてみる。
「……どう?」
「草は生えてないみたいだ」
思い切ってその中に顔も入れてみると、確かにそこだけは全く草がなかった。はっきりとした道が作られていたのだ。
更に上を見上げると、草木がその道を覆い隠すように全面を包み込んでいた。草木で形作られたトンネルが、そこにあった。
人工的に刈られた跡がある辺り、この先に何かがあるのは必然だ。別世界からの来訪者が居るに、相応しい道がここにある。
「ちょっと、怖くなってきたよ」
対して自分は、顔と手をトンネルから出して、ルイに問う。
「どうしてだ? さっきまで、あんなに楽しそうにしてたのに」
「ドキドキしてきちゃって」
楽しさと怖さが入り混じった感情が、ずっと胸の内にあったらしい。男の子が冒険に憧れてるってことは何となく知ってたけれど、皆同じような思いで探検をしてるのかな。
さっきまで会ってた夜天や天ノ峰のような、ひとつ前の世代の少年たちも、心の中では楽しんでいたのかな。
自分はどうだろうか。自分は……。
「……ルイが居るから楽し……い……?」
「え、何が?」
ぁあっ!? 口に出てた……!!
出すつもりはなかったのにどうして!? もう勘弁してよ恥ずかしい助けて顔があついよあついあついあついあついあつい~~~~~~~~~~~!!!
「ベガ……? どうしたのうずくまって」
「…………」
「大丈夫?」
「………………」
「おなか痛いの?」
「……ちがう」
「うーーーーん」
そのまましゃがみ込んだままなのも悪いと思ってはいた。でも、この火照った顔を見られたくなくて。
それでずっとそのままで居たら、ふわりと浮き上がったかと思えば、目の前にルイの顔があって。
「ベガって、結構軽いよね」
「え、え……?」
その状況に気がつくまでに、しばらく時間がかかった。
やがて、自分が抱っこされているのだと気付く。しかも、お姫様の方。
「お、おろして、くれないか……?」
「あ、うん……」
ルイは素直に応じてくれた。
けれど、おろされた自分は複雑な気分だ。どうしておろせなんて言ってしまったのか、いっそのことルイを観察するのも面白かったろうに。羞恥心が優ってしまったのか……。
「せ……せめておんぶだろ!?」
「えぇ!? な、なんかごめん!!」
混乱のあまり、訳の分からないことを喚いてしまっている気がする。でも知らない、覚えてないし、聞こえない。
その後おんぶされてたことなんて、恥ずかしくて覚えてないから。絶対覚えてないからな。




