24 星屑ヶ原にて待つ何か
少しだけ気分が悪い。
それは夢だとかそういうものは抜きにして、空気によるものだろうと思う。一時間も密閉された空間に居たから、酸素欠乏でも起きているのだろう。
全身と髪を乾かして、用意してもらった寝間着を履いて行く。
自分は服の色のセンスというものが分からないので、文句は垂れない。
リビングでは濡れたタオルを持ったルイが待っていた。
「…………」
「どうしたのベガ、調子悪いの?」
「ちょっとフラフラする」
「のぼせたんだよ!! わぁ顔真っ赤……熱いお湯で長風呂は危ないよ!!」
周囲の熱という訳では無くて、あそこまで気持ちの良いお風呂であってもここまで気分を悪くしてしまうと言うことに衝撃を受けた。何事も程々が良いんだな……。
タオルを受け取り、首周りを包むように巻く。
「結構、気持ちいい」
「濡れてるだけでも、結構冷えてるように感じるでしょう?」
なるほど、こうやって体温を下げるんだな。
「ほら座って、ゆったりしてた方が良くなるよ」
「ん、そうする……」
次第に感覚が鮮明になってきて、やがて頭もはっきりと動くようになってきた。タオル効果は凄まじいな。
「そんなにお風呂気持ちよかったの?」
「結構好きだな。最初は緊張したけど……」
「それにしても随分長かったよね。お風呂で寝てたの?」
「……うん、多分な」
自分は確かに眠っていた。だけど、その眠ったタイミングは一切分からない。
気付いたら突然、何者かに意識を持っていかれるかのように。
「ルイ、変な夢の話、聞きたいか?」
「変な夢……? すっごい気になる」
おお、興味津々だ。不思議な話が好きだよな、ルイ。
「じゃあさっき見た夢の話」
正直、自分でも驚いた。夢がこうもリアルなものだなんて。
まるで実際に体験したかのように、感覚や感情もあって、そして声も発して……。
あれは学校で、そこでの生活を垣間見ていたのだろうか。これは未来予知か何かなのだろうか。いや、多分違うな。
第一、ルイの性別が女の子だったじゃないか。オイラが普段着ているようなセーラー服を身に着けていたし、それは間違いないだろう。
それに、自分がいつも以上にドライだった。少なくとも自分は、色々な人と関わりを持ちたいと思っている。しかも、髪色は黒だった。いや、夢の中の自分が黒だと言っていたな。
違いが山ほどあるのは流石夢といった所か。とはいえ、夢にしては非常に現実味を帯びていて、下手を打てばこの現実よりも、もっと現実に近いようにも感じてしまう。
現実以上の現実って言葉も、中々意味不明な言葉だけれど。
「夢は、本当は現実なのかもしれないよ?」
「へ、どういうことだ?」
「夢を夢として考えるんじゃなくてさ、夢をもう一つの現実と考えるってこと。もっと簡単に言うと、自分が別世界にトリップしてるってことだよ」
「ううん……?」
要するに……どういうことだ?
「ええと、眠っている間には自分はこの世界には居なくて、精神だけ別の世界にジャンプしているってことなのか……?」
「そうそう。それを夢として錯覚しているだけで、本来は夢ではないんじゃないかな」
やや複雑な話ではあるけれど、これが事実だとすれば、自分が見た夢は別世界の自分が見た真実であって、嘘ではないということになる。
……ということは。
「なあ、昨日見た夢の話はしたっけ」
「え、聞いてないよ?」
昨日見た不思議な少女の夢。これも少し話しておこうかな。
「ぇえ!? 金髪の女の子!?」
「知ってるのか?」
「いや……分からないけどさ、星屑ヶ原で、金髪の女の子に会ってたんだよね」
謎の少女と、星屑ヶ原で遭遇した。そう言えばそんな事、病室で話してくれたっけ。
いやいや、本当に同一人物だなんてことは無いとは思うけれど……。
「どんな服装してた?」
「いや、そこまでは思い出せないな……白い肌で、言葉の言い回しが独特だったってことぐらいしか」
「合ってる」
「へ?」
「凄いよベガ!! 僕が見た子もとっても白い肌で、独特な言葉遣いだったんだよ!! あの子は絶対に何か秘密を隠してるよ……きっと、いや、絶対に!!」
その自信は一体どこから出てくるのだろうか。
金髪で肌が白いというのは何というか……至極当たり前のことのように感じるんだけど……。
いや……でも。
『私の所まで戻って来て……』
彼女の発した、印象深い言葉が引っかかる。
私の所……とは?
そして周囲に映った野原のような場所は……?
「本当に、星屑ヶ原に居るのかも」
「やっぱり!」
運命の悪戯なのか、それとも、何かの因果なのか。
けれど、何かに引き寄せられている気がする。
それが何なのかは、全く分からないのだけれど。




