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「……ねえ」
…………。
「ねえってばー」
……眠ってる(フリしてる)んだぞ。起こさないでくれよ。
「もしもーし」
ハァ……しょうがないな……。
机から、嫌々顔を上げて見てみる。するとそこには、覚えの無い少女がそこに居た。
いや、正確には、自分が覚えていないだけかもな。クラス内に居れば嫌でも顔は見るし。
でも、知らないものは知らない。
「……誰?」
「全く失礼なこというなぁ。まあそんなに話したこと無かったしね」
不満そうなふくれっ面だ。
「お前と話したことがないどころか、学校内で誰かと話すのも久しぶりだ」
友達は居ないし、作るつもりもあんまり無い。
そんな気持ちでいたから、クラスメートの顔も覚えていなかった。
いつも休み時間は執筆か、もしくは突っ伏して、想像を膨らめて過ごしてきた。
誰かと話すぐらいならば、自分の世界に浸っている方が有意義だと思うこともしばしばある。
だからこうして関わって来る相手への応対は、結構億劫だったりする。「そんなことより違う遊びをしようよ」などと言ってくる奴がいるんだろうからな。
「ルイだよ。覚えといてね」
「ああ、覚えとく。それで、何か用か?」
「んと、移動教室なのに突っ伏してたから、心配になって」
「え……えっ!?」
周囲を見回しても、人っ子一人居ない。
「うわぁ……教えてくれてありがとう。言われなかったら遅れてた」
「えへへ、いいんだよ気にしないで」
なんだ、そういうことだったのか。
どうやら悪意なき悪意を持って、話しかけて来た訳では無かったんだな。よかった。
とりあえず準備だ……。科目は何だっけ……ああ、音楽だ。
「そういえば――ちゃん。いつも休み時間に、何書いてるの?」
「……えーっと」
思わず手が止まってしまう。
……どうしてだろうな。「小説を書いている」って、素直に言いたくない。あまりバレたくも無いからな。でも、嘘は嫌いだから吐くことが出来ない。だから、出来るだけ濁すことにする。
「もしかして、絵描いてた?」
「んーちょっと……違うかな」
絵は苦手だ。練習したいと何度か思ったことはあるが、絵を描く時間があるならば、その分執筆がしたいと思う。もし話が分かる人が居たなら、挿絵を描いてもらいたいんだけどな。
まあ、そう上手い話がある訳ない。
「じゃあライトノベル的な小説かな?」
「うっ……」
「ほほぅ。図星だね」
「…………」
当てられてしまった。何だよ鋭いな……。
「大丈夫だよ。私も隠してる秘密、沢山あるから」
少々捻くれた考えかもしれないが、自分の趣味を探ってきたのだから、彼女も何かを教えて然るべきでないかと思う。
「……どんな秘密だ?」
「やっぱり聞いちゃうよね。えっと、私は絵を描いてるよ。いつかイラストレーターになりたいって夢見てる」
「いいじゃないか。素敵な夢だと思うけど」
どういう道を進もうと、意欲を持って進むことは何であっても素晴らしい。
自分だって、小説家になりたいって言う、傍から見たら小さな夢を持っている訳だ。けれどこれも、自分から見たらとても大きな夢だ。いつか叶えたい、言わば人生の目標。
「本当!? そう言ってくれたの、――ちゃんが初めて!!」
「思ってることを言ったまでなんだけどな……」
思ったのだが、彼女と話すのにあまり抵抗を感じない。
同族というか、そんな匂いがしたからなのかな……。
『ベガー?』
絵、描いてるのか……。
彼女のことが何だか、気になってきた。
『ベガってばー』
もしかしたら、いつか一緒に――。
『もしもーし?』




