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V[M]星屑の漂流者~自世界転生で仲間達を守り抜く~  作者: くろめ
記憶のない自分と向き合うということ
28/40

★

「……ねえ」


 …………。


「ねえってばー」


 ……眠ってる(フリしてる)んだぞ。起こさないでくれよ。


「もしもーし」


 ハァ……しょうがないな……。


 机から、嫌々顔を上げて見てみる。するとそこには、覚えの無い少女がそこに居た。

 いや、正確には、自分が覚えていないだけかもな。クラス内に居れば嫌でも顔は見るし。

 でも、知らないものは知らない。


「……誰?」

「全く失礼なこというなぁ。まあそんなに話したこと無かったしね」


 不満そうなふくれっ面だ。


「お前と話したことがないどころか、学校内で誰かと話すのも久しぶりだ」


 友達は居ないし、作るつもりもあんまり無い。

 そんな気持ちでいたから、クラスメートの顔も覚えていなかった。


 いつも休み時間は執筆か、もしくは突っ伏して、想像を膨らめて過ごしてきた。


 誰かと話すぐらいならば、自分の世界に浸っている方が有意義だと思うこともしばしばある。


 だからこうして関わって来る相手への応対は、結構億劫だったりする。「そんなことより違う遊びをしようよ」などと言ってくる奴がいるんだろうからな。


「ルイだよ。覚えといてね」

「ああ、覚えとく。それで、何か用か?」

「んと、移動教室なのに突っ伏してたから、心配になって」

「え……えっ!?」


 周囲を見回しても、人っ子一人居ない。


「うわぁ……教えてくれてありがとう。言われなかったら遅れてた」

「えへへ、いいんだよ気にしないで」


 なんだ、そういうことだったのか。

 どうやら悪意なき悪意を持って、話しかけて来た訳では無かったんだな。よかった。


 とりあえず準備だ……。科目は何だっけ……ああ、音楽だ。



「そういえば――ちゃん。いつも休み時間に、何書いてるの?」

「……えーっと」


 思わず手が止まってしまう。

 ……どうしてだろうな。「小説を書いている」って、素直に言いたくない。あまりバレたくも無いからな。でも、嘘は嫌いだから吐くことが出来ない。だから、出来るだけ濁すことにする。


「もしかして、絵描いてた?」

「んーちょっと……違うかな」


 絵は苦手だ。練習したいと何度か思ったことはあるが、絵を描く時間があるならば、その分執筆がしたいと思う。もし話が分かる人が居たなら、挿絵を描いてもらいたいんだけどな。

 まあ、そう上手い話がある訳ない。


「じゃあライトノベル的な小説かな?」

「うっ……」

「ほほぅ。図星だね」

「…………」


 当てられてしまった。何だよ鋭いな……。


「大丈夫だよ。私も隠してる秘密、沢山あるから」


 少々捻くれた考えかもしれないが、自分の趣味を探ってきたのだから、彼女も何かを教えて然るべきでないかと思う。


「……どんな秘密だ?」

「やっぱり聞いちゃうよね。えっと、私は絵を描いてるよ。いつかイラストレーターになりたいって夢見てる」

「いいじゃないか。素敵な夢だと思うけど」


 どういう道を進もうと、意欲を持って進むことは何であっても素晴らしい。

 自分だって、小説家になりたいって言う、傍から見たら小さな夢を持っている訳だ。けれどこれも、自分から見たらとても大きな夢だ。いつか叶えたい、言わば人生の目標。


「本当!? そう言ってくれたの、――ちゃんが初めて!!」

「思ってることを言ったまでなんだけどな……」


 思ったのだが、彼女と話すのにあまり抵抗を感じない。

 同族というか、そんな匂いがしたからなのかな……。


『ベガー?』


 絵、描いてるのか……。

 彼女のことが何だか、気になってきた。


『ベガってばー』


 もしかしたら、いつか一緒に――。


『もしもーし?』

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