表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
V[M]星屑の漂流者~自世界転生で仲間達を守り抜く~  作者: くろめ
記憶のない自分と向き合うということ
27/40

休憩 深夜のバスルーム(やましいことはない)

 シャワーを浴びるのは累計三回目だが、風呂桶に入るのは今日が初めてだ。

 温かい湯に浸かるというのが、一体どういう感覚なのか、とても興味があった。


 ……その前に、先ずは全身を洗っておかないと。


 頭は昼過ぎごろと同じように、ゆっくりとマッサージをするように行った。

 何だろうなあ、やっぱり気持ちいい。


 身体を洗う際には、ボディソープをジュリジュリとしたタオルに乗せ、泡立てる。その後にそれで全身を洗うんだと、昨日ルイ一通りが教えてくれた。


 どういうことなのか、これも何となく無意識でも行うことができた。不思議だな……。


 ……って、そのタオルを持ってきてない!


 どうしようか。タオルで泡立てないとならないんだよな……?

 ……ルイを呼んで、持ってきてもらうか?


 それも有りだけれど、そもそも本当にタオルって必要なのか?

 泡立てることならば、自分の手でも出来るし、しかも身体を洗っている内に、自然と泡立って行くんじゃないのか……?


 完全に悪知恵なような気もするが、今はそれが最善だと思う。

 泡状でなければならないという条件もきっと無いし、多分大丈夫だ。


 早速ボディソープをツープッシュ。


 手で泡立てようと試みるが、ヌルッとしていて中々泡立たない。

 それでもまあ仕方がない。洗っている内に、きっと馴染むだろう。


 首筋辺りから、優しく、ゆっくりと首全体を洗って行く。


 あれ……何だろう……くすぐったい。

 でも、嫌ではないかな……。


 首から両肩、腕へと進んでいく。


 んー……何だろう。くすぐったいけど、笑っちゃうのとはまた違う……。

 ずっとやっていても、寧ろ心地いいくすぐったさというべきか……。


 末端からやがて胴体を念入りに洗っていくが、どうも気分が落ち着かない。

 何というか、うん……変だなあ。


 そそくさと他のところを洗って、さっさと流しておく。とりあえず、流し忘れが無いよう念入りに。


 変な気分だったから仕方ない。




 さて、ようやく本命の入浴……か。


 初めてだと、何だか……ちょっと緊張するな……。


 ほんの少し手で触れてみて、温度を確認する。湯気で温かいことは確認済みなのだけれど、それでもこわい。何だかこわい……。


 落ち着け……落ち着くんだ自分。

 お風呂上がりのルイは、とっても満足そうな顔をしていた。ということは、その理由がこの中にあるってことだろ……?


 その満足度合いを知りたい。

 ……なら、入るべきだよな。


「頑張れ……先ずは片足……」


 意を決して、恐る恐る、右足を湯船に浸けてみる。


「……あ、いい、かも」


 そのまま一気に足を下ろして、もう片方も入れてみる。


「あっ……あったか……ほふ」


 足だけの筈なのに、全身に伝わる温かさ。もしこれが、胴体に伝わったらどうなってしまうのだろう……。少し怖いけど……でも、気持ちよくなるため、だもんな。


 ゆっくりゆっくり、とても遅いリフトのように、しゃがみ込んでいく。傍から見たら本当に機械みたいな音が出ているかもしれない。そんな訳ないか。


 やがて腰を越えた辺りで、この世を悟るが如く幸福が、脳の全てを侵し始めていく。


 ああ、こんな世界があったのか。

 ここまでの幸せが、こんな小さな部屋にあったなんて。


 湯と空気の境界面は、自分が入ったためかタプタプと揺れている。それが肌に当たる度に、不思議とピリピリして、その気持ちよさに鳥肌まで立ってしまう。


 鳥肌は、恐怖や驚きで立つものだとばかり思っていたけれど、それだけじゃないんだな。


 至福の快楽とでも呼ぼうかな……それでもぞわりとなる。こんな体験も、あるんだな……。



 風呂桶の底にお尻を付けた頃には、もう湯の虜になっていた。

 この世界に意識は無くて、もしかしたら別のどこかへと飛んで行ってしまっているのかもしれない。


 世界の中心に自分が居て、それ以外は何でもないような、そんな気分にすらなってしまう。


 自分でも何言っているんだとおもってしまうけれど、ルイがあんな幸せそうになる理由が分かった。湯船とは、自分自身が世界の船になれる、不思議な空間だったのだ。


 湯と親睦を深めることで、自身の心と混じり合って、やがて溶けて一つになる。

 その先に見えるのは一つの宇宙であり、世界であり、自分自身……。


 湯から出るのは、あまりにも惜しい。


 暫くは出ないでここに居よう。ルイのお父さんが帰ってくるまでは、ゆっくりしていてもいいよな……。




    ★☆★


「ベガ……流石に遅いよなあ……」


 彼方がお風呂に入って、もうかれこれ一時間以上経過している。

 温度設定は結構高めにしてあったので、流石に不安になってくる。


 待っているだけでは仕方が無いので、とりあえずノックだけしてみよう。


「ベガー? ベーガー??」

『――……!? フハッ!? ルイ!?!? 大丈夫だ!! 今出るぞ!!!』


 大丈夫そうで一安心。

 何か焦っているみたいだけど、もしかして、湯船で寝てしまったのだろうか。

 ともあれ、のぼせてしまっていた訳でなくて良かった……。


 とりあえず冷えたタオルを用意しておこうっと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ