第三話 大きなうさぎのぬいぐるみが知っていること
「ちょっと私は調べものしてきます」
と犯人が向かう救急処置室とは別の場所へと向かう。
「ああ、おい鏡野!」
犯人から離れるわけにはいかないからだろう、桜田さんの声だけが後ろから響く。
*
私は目指す場所についた。
コンコン
「はい」
中から返事が聞こえる。中を覗き込んだ。一人のようだ。大惨事のテレビ中継を見入るように見ていたが、誰が入ってきたのか確認しようと目線を上げた。
「アリスちゃんどうしてここに?」
「どうもご無沙汰してます。ちょっと頼みがあって…」
私はこの病院の医院長に話をした。うさぎのヌイグルミの少女を探すために。すぐにわかった。この病院に搬送されたからだ。しかも大きなヌイグルミらしくすぐにわかったみたいだ。看護師が覚えていた。
「ありがとう。おじさん」
「アリスちゃん君はなにを…」
「刑事になったんです。聞いてません?叔父から」
「いや全く」
「そう。そうですか。まあ、そういうわけです」
私は立ち上がり言う。
「では、失礼します。ありがとうございました」
ドアを開けて出ようとしたら、声をかけられる。
「医者は?病院はどうするつもりだね?」
「時がくればですかね?では、失礼します」
*
私はドアを閉め、少女の情報を電話で調べるように戸田君に頼んだ。一番若い戸田君は私と同い年で、頼めるのは彼しかいない。それにこの騒ぎ早く収束させる必要もある。犯人が意識がないんだ。調べられることは限られてる。
少女の病室についた私は安堵する。少女の容態は落ち着いているようだ。それに、そばに中学生くらいの男の子がいる。きっと兄だろう。話が聞ける。確か両親はまだ搬送されてなようだったが。あの混乱だからわからない。
集中治療室の中に入り声をかける。
「美優ちゃんのお兄ちゃんだよね」
振り返った彼に手帳を見せる。
「あ」
顔が強張る。
「ここで話すの何だから外に出てもらってもいいかな?」
「ああ、はい」
緊張しているんだろう。心細いうえに警察まで来て。例のうさぎ少し血がついてるが少年はまるでしがみつくように抱きしめていた。
休憩室にまで来て彼にココアを差し出す。甘いものでもないと疲れるだろう。一人で妹についていて、まだ両親の行方もわかっていないんだ。
「この写真見て欲しいんだけど」
私は搬送される前の犯人の写真を撮っていた。
「…あ、これ。この人!」
やっぱりビンゴか。
「知っているね。美優ちゃんに関係があるのね?」
「はい。妹はこいつにつきまとわれていて、両親が心配してたんです。で、警察にも相談して。そしたら、こいついなくなったんです。安心してたのに」
「ちょっと待っててね」
電話をかける戸田君に。ストーカーで被害届が出ていたみたいだと言ったら、すぐに折り返し電話があった。厳重注意をした記録があったそうだ。
これで、犯行動機がわかった。
「あの、僕たち…妹のせいなんですか?あんな大変なこと」
「君たちでも美優ちゃんのせいでもない。犯人のせいよ。警察に相談したことで恨みを持った。それでこんな事を。君が気にすれば美優ちゃんも気にするわ。これは犯人のせいよ。わかった?」
少年は無言で頷く。
「じゃあ、ちゃんと休んでね」
私はその場を立ち去った。少年のすすり泣きが聞こえる。
すぐには納得なんて出来ないだろう。でも、前へ進むしかできないんだ。妹の為にも。




