第二話 医者の証言
私が指差した先には包丁をお腹に刺した男がいた。そばには先に現場に向かった安田さんと河村さんがいる。犯人に間違いないだろう。遅かった。そばには医者がいる。凄く戸惑っているが応急処置を施している。犯人だということに戸惑っているんだろう。ここまで、散々に見てきた惨状の犯人だから、救うことに迷いがある。
「犯人は裁判で裁かれるべきなんです、救って下さい」
私は医師に声をかけていた。
私の言葉に医者は黙って頷き処置を続ける。
無線が入った。救急車の到着を告げる。医師は応答する。
「ここにいる患者の搬送、お願いします」
苦しげに言う。
「私がついて行きます。すみません。一緒に来てもらえますか?」
私は同僚に次は医師に話をした。医者には犯人の状況を知るために少しでも話を聞かないといけない。
「鏡野。俺も行く」
「じゃあ、病院で」
乗ってきた車があるし救急車にはそんなに乗れない。
*
医師の無線にドクターヘリの到着を伝える声がはいる。医師はホッと息をつく。搬送が遅れているのに、犯人の搬送を決めたからだろう。そして、しばらくかかってまたドクターヘリの到着を伝えた。
何とかこれで…
「鏡野…これお前が呼んだヘリだよな?」
「えっ!」
医者が驚いて私を見る。今は犯人を救急車まで運んでいる途中なんだし、それは言わないで欲しかった。
「ああ、まあ。」
「ああ、まあって。二つの病院だろ?…どういう事?」
「今はそれどころじゃないでしょ?」
「あ、ん」
桜田さんの追求を何とか逃れた。
そのまま私は医者と犯人と救急車に乗り込む。桜田さんは乗ってきた車で向かう。
犯人の容態は安定しているが、意識はないようだ。これは話をするチャンス。
私は医者に尋ねる。
「犯人は何か言ってませんでしたか?」
「えっ!ああ…あ、うさぎのヌイグルミの少女はどうなったのかと。呼ばれた時に犯人だとは聞いていなくて、少女は僕が搬送したので、そう伝えました」
「犯人は何て答えたんです?」
「ちくしょう、やり損ねた…と」
なるほどこれはいい情報を聞いた。このやりとりで医者は犯人が誰かわかったんだろう。
「その少女の搬送先は?」
「さあ。混乱状態でしたから、そこまでは。病院に帰ればわかるかと」
では、病院に着くまでは何もできない。が、一応手袋をして犯人の所持品などを探る。バックは押収されてるからか、何も持っていない。最初から自殺目的だったのかも。
私はあらゆる可能性を頭に入れて考える。私が考えてるのがわかったのか医者は何も言わない。
そして、病院に到着した。なんだ佐伯総合病院か。桜田もすぐに中に入ってきた。




