第14話 神話
「よ~し!家族会議はっじめるゾ~!」
今日も今日とて家族会議。高らかに宣言するが、姉貴と達也は白けた目で俺を見ている。
「何でそんなにテンション高いのかしら・・・」
「兄ちゃん聞いているはずだよね?命を狙われているかもしれないんだよ」
「もっちろん、聞いているぜ。だからこそ常時護衛だろ?まぁ、今はお前たちが居るから護衛の人たちは部屋を出ているけどな。どちらにしても俺じゃどうしようもないんだからさ。どうせならポジティブにいってみようって事だよ。言わせんな恥ずかしい!」
2人共すでに王子から話を聞かされているのだろう、再開してからずっと気を張って辺りを警戒しているようだ。
「しっかし、よく王様殴りに行かなかったな。いや~お前たちも成長したもんだ。わはは」
「元の世界の不良達とは訳が違うからね。後、リオン王子もすごく謝っていたし」
「そうね。リオンにお願いされたし、国王に手を出したら内戦が起こる可能性があるって言われたから我慢しているだけよ。あ、でも王子が政権取ったら、いくらでも殴ってもいいって言ってたわ」
楽しみねぇ、とにこやかに続ける。いい笑顔でございます姉上様。
「そりゃ楽しみだ。で、俺の話はいいとしてだ。そっちはどうだった?勇者の儀ってやつは」
「勇者の儀って大げさな名前だけど、私たちがしたことはただ魔道具に触れただけよ。2メートルくらいの大きさの水晶の球だったわ。触れた者の魔力量が数字で、魔法属性が色で浮かび上がってくるのよ。それで私の魔力量は963で属性は光、水、風で」
「俺が849の光、炎、雷だったよ」
確か、リアラの魔力量が500ちょいぐらいで宮廷魔術師の5人分って言ってたよな・・・このチート共め・・・
「ってか、魔法属性ってのは1人でいくつも持てる物なのか?リアラは光だけだったよな」
「属性を複数持った人間は俺たちが初めてなんだって。勇者だからじゃない?」
最早、勇者だからチートなのか、チートだから勇者なのか分からねぇな・・・
「自分の属性を知ることが出来たのは大きかったわね。自分の魔法属性と同じ属性の魔法を使えば消費魔力は少なくて済むし、威力も増すらしいから魔術師にとっては主戦力よ。もちろん他の属性も覚えなきゃいけないけどね」
「一通り学んだ後に自分と同じ属性を重点的に訓練する方が効率が良いらしいからね。まあ、勇者の儀はこんな感じだったよ。後の時間は勇者への演説とか貴族との顔合わせとか」
訓練よりも疲れたよ、と首を横に振っている。
「うへぇ、魔道具触るだけで1日使うのかよ。お疲れ様だな」
「でも、演説で中々面白い事聞けたわよ。この世界の神話時代のお話」
「神話ねぇ。昔々ある所にお爺さんとお婆さんがおったそうな。ある日お爺さんは財宝目当てに鬼ヶ島へ、お婆さんも財宝目当てに龍宮城へ私兵を連れ攻め込んだそうな・・・みたいな?」
「兄ちゃん、それ神話じゃなくて昔話だよ。お爺さんとお婆さんが怖いくらいアグレッシブだし。全然そんなのじゃないよ。もっと真面目な話だから!」
コイツは天然なのに切れの良いツッコミを返してくれるから、からかい甲斐があるんだよな。
「この国が光の精霊を神として崇めてるってリオンが言ってたでしょう。精霊神が他の精霊や魔法、そして人間を生み出した際のお話よ」
確かに魔法が生まれたって件は面白そうだ。現にこの世界には魔法が有る訳だしな。
「ほ~。魔法が生まれた際の話しには興味あるな。聞かせてくれよ、姉貴」
「じゃあ、大体の内容は覚えているから話してあげるわ。でも、結構長いお話だったから絞って話すわよ」
コホンと咳払いすると目を瞑り、話し始めた。
「遙か昔、まだ何の生物も居ない頃、精霊神様は世界の中心で、ただ一人佇んでいました。ある時、一人で居ることが寂しくなった精霊神様は自らの力を分け、新たな精霊を生み出しました。寂しさを紛らわしたいという熱い思いは火の精霊を、零した涙からは水の精霊を、纏っていた羽衣からは雷の精霊を、吐息からは風の精霊を、佇んでいた場所からは土の精霊を、そして最後に自らの影からは闇の精霊を。力を分けた精霊神様の身には光の力だけが残りました。7人となった精霊たちはさらに自らの力を分け続けました。すると世界には沢山の精霊達が生まれ、動物さえも様々な種類が生まれました。しかし、多くの精霊や生き物を生み出しても精霊神様の寂しさは紛らわすことはできませんでした。そこで精霊神様は力ではなく自らの身を削り、新たに人を作りました。人は精霊たちの良き友であり、家族でした。人が生まれたことで精霊神様が寂しいと思うことは二度と無く、幸せな時間が長く続きました。しかし、その幸せな時間は崩れ去ることになります。闇の精霊が反旗を翻したのです。闇の精霊は皆が幸せに過ごしている間に力を蓄え続け、自らが神となろうと画策していたのです。闇の精霊は精霊神様と同じ様に身を削り、新たな種を作り出しました。それは魔人や獣人、エルフ、ドワーフ、竜人という人に在らざる魔族と呼ばれる者達でした。身を削った闇の精霊は尚も強大な力を持ち続け、自らを魔王と名乗りました。そしてついに魔王は人在らざる者達を引き連れ、人と精霊、そして精霊神様に戦争を挑みました。長い戦争の果てに精霊神様と精霊達は最後の力を振り絞り、ついに魔王を倒すことに成功しました。世界には平穏が戻りましたが、精霊神様と精霊達は力を使い果たし姿を消してしまいました。しかし、姿が見えなくとも彼らは我々、人を常に見守ってくれていることでしょう」
姉貴は話し終えるとふぅ、と息をついて目を開けた。そして、どうだった?と聞いてきた。
「はい、先生質問です!」
「何でしょう、要君」
「魔法が生まれたという要素が見当たりません。どこに有るのですか?」
ビシッと手を上げ質問する。姉貴もノリノリで女性教師の真似をしている。
「良い質問ですね~」
まさかのイケ○ミ先生!?予想外すぎるわっ!
「精霊に自分の魔力を分け与えることで魔法が使える、これは知っていますよね?つまり本来、人間は魔法が使えないのです。なので精霊を呼び、私の魔力で魔法を使ってくれとお願いする、という一連の行為を魔法と呼んでいるのです。では実際にやってみましょう。『集え炎よ! 赤き力を持つ者たち 今目覚めよ!』」
人差し指を立て、魔法を唱えた。赤い球が指先に現れたかと思うとポゥ!っとライターで点けたか様な小さな炎が飛び出した。それにしてもさすがイ○ガミ先生・・・分かりやすい・・・のか?
「はい、この『集え炎よ』という言葉の部分で炎の精霊を召喚しています。そして『赤き力を持つ者たち 今目覚めよ』の部分でどのような炎魔法にするかを決め、与える魔力量で威力を決めます」
指先の炎の勢いが強くなったり弱くなったりしているのは与える魔力量を調節しているのだろう。
「つまり!このことから人間にとって魔法と精霊は同意義なのであり、故に精霊が生まれたというのは魔法が生まれたという事なのであ~る」
結局精霊についてにしか言ってねーじゃんと思っていると最後の最後に無理矢理魔法に持っていきやがった。先生ェ、これならもっと説明短くてもいいじゃねぇか・・・
「3行でおk」
「全て
精霊の
おかげ」
本当に3行で返しやがった・・・まぁ、つまり魔法が使えるという事は、精霊が見守ってくれているという意味でもある訳だ。神話だと。
「おk、把握。ん~後は・・・魔族にエルフとか獣人とかってまだいるの?」
異世界と言えば、だ。定番中の定番だが魔法に次いで大事だな。
「魔王のいるクラウディア大陸に居るらしいわよ。他の魔族もね。私も獣人には会ってみたいわ。メルヘンチックだと嬉しいわね」
「姉ちゃんは魔族に会いたいの?魔王が作ったんだから、勇者が会いに行っても戦いになるだけじゃない?」
達也が言う事も最もだ・・・しかし貴様のロマンはそんなものか!そんな障害を乗り越えてこそのファンタジーだろうがっ!
「神話なんて言ってしまえば辻褄を合わせただけの物語よ。よく聞けば、この神話はあまりにも人間本位だと思わない?内容は面白かったけど、多分この物語はほとんど嘘よ」
「えっ!?そうなの?」
「へー、でも確かに精霊神様と人間様って感じだよな」
いきなりの爆弾発言に驚く達也。ちなみに俺は魔法と魔族が現存しているという事実以外どうでもいいので、あまり驚かなかった。
「ええ、少なくとも私はそう思うわ。リオンもそれとなく言ってたし。ああ、これ他人に言っちゃ駄目よ。私達の立場で宗教を否定しちゃうと、本当にややこしい事になると思うから」
そりゃそうだ。精霊神様に選ばれたはずの勇者様や王子様が神話を信じてないとか公言出来無いからな。
「じゃあ、他に質問ないのかしら?リオンが言うには現実と神話が矛盾しないように情報操作しないと不味いらしいわ」
リオン王子も辛い立場だな。王子としては神話を信じなければいけないだろうが、放っておけば矛盾が生じて国全体の宗教観が揺らぐ。だから情報をある程度調整して
「えー、エルフと獣人以外にあまり興味ないから別にいいや。そんなことより写真撮ってきてくれよ。獣人は猫耳とか最高だな。もちろん可愛い子を頼むぜ」
「貴方ねぇ・・・私達旅行に行くんじゃ無いのよ・・・コホン・・・ま、まあ、ケータイのバッテリーが生きてて、余裕があれば考えておくわ」
ふっ、俺は知っている。姉貴は動物好きで、中でも特に猫が大好きなことを・・・
「矛盾か。すでに今の時点であるよね・・・今の魔王は闇の精霊なのかな?倒されたはずなのに」
「魔王については何も分からない状態よ。神話時代以外にも600年前に魔王軍を撃退した記録があるけれど、魔王については倒したっていう記述だけで姿形については何も書かれていないらしいわ。色々と信憑性が疑われるわね。私達はきちんと記録を残しておかないと」
姉貴は頭を横に振り、ため息をつきながら答える。
「まあ、魔王についてはいずれ会うことになるでしょうからその時に直接聞きましょう。今日の話はこれぐらいにして明日に備えましょう」
「そうだね。勇者の儀も済んで明日からが訓練も本番だろうからね」
「じゃあ、寝るかぁ」
達也も俺も席を立ち、軽く伸びをしながら扉へ向かった。
「ああ、そうだ。姉貴、一つ聞きたいことが在ったんだ」
「ん、なにかしら?」
扉に近づいたとき、不意に思い立って振り返った。
「リアラ、リオン。信頼できるのは他に誰がいる?」
現在、俺がこの世界で信頼できるのは姉貴と達也を除いてこの2人。信頼できる人間は多いに越したことは無いが、無闇に増やすことは出来ない。だから聞く、最も信頼できる姉貴に、信頼のできる人物を。・・・うん、達也も信頼はしてるけどね。アイツの信頼できる人物はどうも性格が合わないんだよな。いい奴らってのは分かってるんだけどさ。だからこういう事を聞くのは姉貴に限る。
「まずはザイン。そしてリオンの部下ね、数人見ただけだけど。後は貴方の護衛よ。裏仕事の臭いがしたけどリオンの命令以外は死んでも聞かない人達だろうから問題無いわ。今の所こんな感じね」
「へぇ、護衛の人達も。あいよ、ありがとさん。んじゃ、おやすみ」
「ええ、二人ともおやすみ」
姉貴が信頼出来るって言える程の人達を俺の護衛に送るとはリオン王子も随分奮発したな。俺としては嬉しい誤算だが王子の手駒を減らす事にもなってるからな。
「ふぅ、俺が心配してもどうしようもないなぁ。王子も分かってることだろうし、俺に出来ることは平穏に過ごすことだけか。とうっ」
一人呟いた後は恒例のベットダイブ。今日もふかふかである。今日は昼寝をしたので寝付くまで少し時間がかかりそうだが・・・今時間を潰せる物も英語の教科書ぐらいしかないし、さっさと寝るにかぎる。じゃあ、おやすみなさ~い。




