第12話 勇者の儀、そんなの関係無かった
ちゅん、ちゅん。
「むぅ、まぶしぃ」
ああ、もう朝か。ん~、誰も起こしに来ないという事は、まだ寝てていいということだな。よし二度寝二度寝。はぁ~ん、この二度寝する瞬間ってのは最高だぜ。そうと決まったら、この布団を被って光を完全に遮断しよう。この堕落へ導く暗黒は闇属性の魔法だな、間違いない。
「まだ、まぶしぃ・・」
おいぃ、俺の掛け布団サン頑張って下さいよ。アンタ光を通すほど薄くないでしょ・・・おい、布団の中が光ってるぞ、これ。
「うおっ!?なんぞこれ!?あだっ」
驚いて、布団を跳ね飛ばし、ベットを転げ落ちる。最近良くベットから落ちてるな、俺。
一方、跳ね飛んだ布団からは白色の謎の発光物体がフワフワと飛び出している。大きさはソフトボール位か。
「なんだこりゃ?もしかして魔道具か?いや、それとも未確認飛行物体?やべぇな異世界。UFOふれあい広場とかパネェ。よっしゃ、地球人の意地見せたんぞ」
先ほどまで使っていた布団を引っ掴み、投網のように投げてみる。
「そりゃ、あ、コイツ意外と機敏。おりゃ、クソ。あ、まてまてまて。あ~あ、逃げられたか」
UFOは窓から逃げていった。敗因は窓を開けっぱなしだったこと。でも、アイツ窓から入ってきたのかな?まぁ、どうでもいいか。
さてと、太陽はもう出てるけど、後少しは寝れるだろう。気を取り直して二度寝しよ「要、入るわよ。もう朝だから早く起きなさい」・・・。
「あら、珍しい。起こされる前に起きてるなんて。おはよう、要」
「・・・おはよ。色々あってね・・・」
「色々?」
姉貴が聞き返しながら天井を見る。
「・・・とにかく着替えなさい。二度寝は駄目よ」
部屋を出て行く姉貴にふぁ~い、と欠伸と返事を同時にしながら、着替えに手を伸ばした。
「UFO?」
「うん、白く発光する、ソフトボールサイズの飛行物体。窓から逃げた」
着替えを終えて、只今朝の食事中。パンがモチモチで美味しいです。
「見間違えとかじゃないの?寝ぼけてたとか」
「あー、かもしれん。いやでも、多分起きてたと思うけど」
「虫かもしれないわよ?蛍みたいに発光する虫。こっちの世界は虫までファンタジーかもよ」
某有名狩猟ゲームでそんなザコ敵いたな。てか、飯食ってる時に虫って・・。ああ、そうだ、姉貴はゴキでも平気でスリッパで叩く人だった。
「虫説が一番濃厚かも。でも飯中だから以降虫は禁止な」
「あら、失礼」
朝のUFO事件はとりあえず置いておき、他の話題を話しながら食事を続ける。あ、このスープおいしい。
「あ、そういえばさっき聞いたんだけど、今日結構忙しくなるみたい。魔力を測る魔道具が用意できたってさ。それと同時に貴族の人たちを色々と紹介してもらうんだって」
魔力を測る魔道具って前にリアラが言っていたやつか。それより、貴族の云々ってのはすごいだるそう。イメージだけど。
「うへぇ、めんどくさそうだな。まあ、俺は関係ないから部屋でゆっくりしてるけどな」
「もう、完全に人事なんだから要は。でも、そんな暇な貴方に、はいこれ」
そう言って、折りたたまれた紙切れを渡された。文字が書かれているようなのでその紙切れをぺラッと開けて見る。
「ん?左側にはアルファベットが並べて書かれてんな。左側のそれぞれの文字から矢印が出て、右の文字に繋がってるが・・・何この文字?象形文字?」
「左の文字は知ってのとおりアルファベットね。右の文字はこっちの世界の一般的な文字よ。基本的な文法は英語と同じだから。単純に元の世界で使っていた文字を訳すだけで少しはこちらの文は読めるようになるわ。でも、知らない単語もかなり有るみたいだから、そのへんは人に聞くしか無いわ。どうせ暇なら本でも読めるようになってみたら?」
「それいいね。じゃあ面白い本があったら教えてよ、兄ちゃん」
俺は姉貴の話を聞いた後、紙切れを見ながらこう呟いた。
「俺、英語自体そこまで得意じゃないんだけど・・・」
「「Oh・・・」」
「・・・そういえばそうだったわね。でも大丈夫よ、学校のカバンの中に英語の教科書と参考書が入ってるから勉強はできるわ。英語が出来るようになって、本も読めるようになる。一石二鳥ね」
「召喚された日が英語の試験日だったのは運が良かったかもね。兄ちゃん、ファイト!」
「Oh・・・」
異世界に来てまで英語のお勉強なんて・・・どうしてこうなった。
「じゃあ、いってくるわね。ちゃんと勉強しておくのよ」
「へいへい、分かってるって。姉貴達こそ変なトラブルに巻き込まれないようにな。いってら~」
食事を終え、少しするとメイドさんが2人を呼びに来たので見送る。どうやら今日の出来事を『勇者の儀』と言い、公式に勇者を任命する場らしい。さてと、こちらは乗り気はしないがさっき貰った文字くらいは覚えておかねぇと姉貴に怒られそうだからな、パパッとやっちゃいますか!
「え~と『A』は三角形の中心に丸が書かれてて、『B』は・・・・・」
「・・・が『Z』だな。よし、何とか姉貴達が帰ってくる前に覚えたぞ」
なんと現在は昼食をとっくに終え、すでに日が傾き出した頃。まさか、昼食後の昼寝がこんな結果を招いてしまうとは一体誰が予想しただろうか・・・さて、文字を覚えた後は英語の文法の勉強か。うわぁ、何この分厚さ、マジだりぃ。
む~んむ~ん、とうめき声を挙げるが本の厚さに変化は無い。その後、掌に参考書の背表紙で軽く叩き、ペシンペシンと音を出して手遊びしていると、コンコン、と扉がノックされる音がした。はいよ、どうぞ、と言うとメイドさんが入ってきた。
「失礼します、カナメ様。勇者の儀が終わりました。タツヤ様とリン様は訓練場にそのまま行かれ、カナメ様も見学に来られたらいかがか、とリオン王子が言われています。どうなさいますか?」
「ちょうどやる事も無くなったし、もちろん行きます。案内頼みます」
いやー、王子に誘われたら勉強し続ける訳にもいかないわー。勉強できなくてつらいわー。マジつらいわー(棒)
べっ、別に勉強から救われて嬉しいわけじゃ無いんだからねっ!




