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花王女

**SYNOPSIS**


物語は、運命の「赤い糸」を通じて霊的な繋がりを持つ男、テヒモシンから始まる。

ある時、神秘的な導きに従った彼は、原生林の中で一本の若木を見つけ、丹精込めて育てる。

しかし、野蛮な習俗に縛られたウィクンタリ族の身勝手な振る舞いにより、その木は焼き払われるという悲劇に見舞われる。

灰の中から、木の魂はフアゼシンという少女の姿で転生し、テヒモシンによって救われる。

彼女は、かつて人間から怪物扱いされ追放された少女ネベルセルと深い共感を覚える。

人間への強い恐怖(対人恐怖症)を抱える二人は、テヒモシンと共に「死地」と呼ばれる荒野で自給自足の生活を送り、外世界の残酷さから隔絶された安らぎを築いていく。


だが、その平穏はウィクンタリ族が血に飢えた植物の変異体に襲われ、滅亡の危機に瀕したことで破られる。

かつての仇の窮地を前に、テヒモシンは救助を決意し、フアゼシンは憎しみを抑えて彼の命に従う。

地獄と化した現場で彼らが対峙したのは、過去に息子を失った悲しみから残酷な復讐を目論み、怪物を操る狂気の科学者だった。

物語は登場人物たちに、死活的な問いを突きつける。

残虐な部族を救うために怪物を倒すべきか、それとも復讐者の「因果応報」に委ねるべきか。

科学者が語り始めた息子にまつわる暗い秘密により、救済と罰の境界線はかつてないほど曖昧になっていく。

【第1章 森の奥の緑の芽生え】

2019年5月1日(水)

朝の柔らかな陽光の下、テヒモシン(Tehimosin)はいつものように自分の庭で精を出して作業をしていた。突然、馴染みのある震えが背筋を走った——赤い糸が再び現れた。

今回、彼はすぐに立ち去らなかった。以前の小さな少女の怯えた様子を思い出し、テヒモシンは手を止め、ネーベルゼレ(Nebelselle)のところへ向かった。自分が家にいない間も、彼女が安心していられるようにしたかった。

「ネーベルゼレ、今から少し外に出てくるよ」テヒモシンは優しい声で言った。「赤い糸がまた導いている。新たな仲間を迎えられるみたいだ」

ネーベルゼレは顔を上げ、輝く笑顔を浮かべた。「ご主人様、行ってらっしゃいませ。早く帰ってきてくださいね!」

頷きで約束に代え、テヒモシンはすぐに駆け出した。鮮やかな赤い糸が木々の葉をくぐり抜け、彼を静かな古い森の奥深くへと導いていく。しかし、そこに待っていたのは人間ではなく、小さな緑の芽——枯れ葉の絨毯の中でひっそりと芽吹いた小さな苗木だった。

テヒモシンはしばらく立ち尽くし、心の中に面白い驚きが広がった。「今回は……木だったのか。新しい仲間は人間の姿だけとは限らないんだな。どんなものでも命を授かることができるなんて」

その日から、テヒモシンは毎日森へ足を運び、その芽生えを丁寧に世話し続けた。彼は考えた。あの古い宝箱にあった宝物のどれが、この青々とした若木に姿を変えたのだろうかと。


3ヶ月後——2019年8月1日(木)

かつての小さな苗はすっかり成長し、青々とした葉を広げ、生命力に満ち溢れていた。テヒモシンはようやく時期が来たと思い、ネーベルゼレを連れてその木を見せに行った。

「これが、俺が何ヶ月もかけて世話してきた木だよ」

ネーベルゼレは息を呑み、目を大きく見開いた。その純粋で美しい姿に、心を奪われたようだった。

「なんて美しいのでしょう……」彼女は感嘆の声を上げた。「ご主人様がとても心を込めて育ててくださったんですね?」

自分の努力の成果を見て、テヒモシンは誇らしげに微笑んだ。「ありがとう、ネーベルゼレ」

「ご主人様、この木をお庭に連れて帰るんですか?」

テヒモシンは葉ずれの音を聞きながら、静かに首を振った。「いや。ここで芽を出したのにはきっと意味があるんだろう。このままここに置いてあげよう」

夕暮れが近づき、ネーベルゼレがそっと促した。「もう遅くなりましたね。お家に帰りましょう。まだたくさんやるべきことが待っていますから」

テヒモシンは頷き、二人は一緒に歩き出した。後ろには、神々しい命が静かに育ち続ける謎の芽生えが残された。


【第2章 森の奥の炎の不死鳥】

2019年8月10日(金)

緑の芽生えが育つ場所から少し離れたところに、ウィクンタリ族(Wikunthari)の領域があった——現代社会から隔絶された共同体で、時代遅れの風習と迷信が森の根よりも深く張り巡らされていた。

その日、斧と鋸の音が辺りに響き渡っていた。ウィクンタリ族の人々が容赦なく古木を切り倒していく。テヒモシンが心を込めて育てた木に冷たい刃が迫った瞬間、激しい痛みと共に神通的な感覚が彼の心に飛び込んできた。

「助けて……助けてください……ご主人様!」

テヒモシンは幽霊のように現れ、振り上げられた斧の前に立ちはだかった。

「手を止めろ!」彼は大声で叫んだ。「この木は俺が毎日手をかけて育ててきた木だ。なぜお前たちはここまで森を破壊するんだ?」

日焼けした肌の男たちが、凶器を手に彼を敵意のこもった目で睨みつけた。一人が前に出て、傍らに立つまだ13歳ほどの幼い夫婦を指差した。「この新婚夫婦のために家を建てるんだ。これは我々の部族の掟だ」

「13歳で結婚? まだ小さすぎるだろう。なぜ学校に行かせないんだ?」テヒモシンは愕然とした。

男は鼻で笑った。「学校に行って金になるのか? それともただ街の教師どもに金を無駄に使うだけか? ここでは労働力が必要だ。子だくさんでこそ価値がある」

テヒモシンは拳を強く握りしめた。後進性に染まった心には、言葉など届かないことを理解していた。彼は迷わず前に進み、青々とした木の幹を抱きしめ、自分の体を盾にした。

「この木を切りたければ、まず俺の屍を越えていけ!」

怒りが爆発し、男たちが斧や山刀を振り下ろした。しかし奇妙なことが起きた。刃がテヒモシンの肌に触れると「カン」という乾いた音を立てて跳ね返っただけだった。かつて自分を傷つけた武器に対する「無効化」の能力により、彼は一切のダメージを受けなかった。

「化け物め」と悟ったウィクンタリ族は、悔しそうに引き上げていった。族長は振り返り、暗い目で吐き捨てた。「わかった。この木はもう切らない」

しかし、彼らの本質的な独占欲——「自分たちが手に入れられないものは他人にも渡したくない」——が、より残酷な行動を生んだ。その夜、闇が訪れると、部族の指導者たちはこっそりユーカリの油を木の葉にたっぷりとかけ、火を放った。

炎は激しく燃え上がり、すべての希望を焼き尽くした。遠く離れた場所で、テヒモシンは心の中で響く叫び声に苦痛で膝をついた。「熱い……助けて……ご主人様!」

彼が駆けつけた時、木はすでに巨大な松明と化していた。危険を顧みず、彼は近くの川に飛び込んだ。

「大洪水龍(だいこうずいりゅう)!」

川面から巨大な水の柱が龍の姿となって飛び上がり、燃え盛る炎に襲いかかった。火は消えたが、貴重な沈香の木はただの黒く焦げた幹となり、胸を締め付けるほど甘く濃厚な香りを放っていた——それは、犠牲の香りだった。

すると、幹が真っ二つに裂けた。焦げた「繭」の中から、息も絶え絶えの少女が現れた。灰色の煙の中で、彼女は弱々しく囁いた。

「ありがとう……ご主人様……これまでの日々……。あなたに育ててもらえたことは……私の一生の幸せでした。死ぬ前に……どうか美しい場所に連れて行ってください……ずっと同じ場所に立っているだけじゃ嫌なのです……」

テヒモシンはまだ熱を帯びた彼女の体を抱き上げ、自分の花畑——百花が競い咲く、夜明けの光が差し込む場所——へと急いだ。

「ほら見てみろ。ここが俺の花畑だよ」

少女は微笑み、朝陽が顔に当たった瞬間に目を閉じた。しかし、息が止まったその時、奇跡が起きた。周囲の何千もの花々がまるで意思を持つように花弁を伸ばし、彼女の体に絡みつき、強烈な生命力を注ぎ込んだ。

少女は再び目を開けた。今や彼女は木ではなく、華やかな一輪の花として転生していた。

ご主人様:「新しい人生、おめでとう。これからお前を包んだ花々は『花の公主(プリンセス)』と呼ばれる。俺はこれからお前を『花公主(ホアプリンセス)』と呼ぶよ」

ご主人様:「名前はHuaZessinだ。中国語で花は『Hua(ホア)』、ドイツ語で公主は『Prinzessin(プリンツェッシン)』から取った」

彼は優しく彼女の手を引き、小さな家へと歩き始めた。ネーベルゼレが待っている家だ。

「さあ、家に帰ろう。あそこには君のお姉さんが待っているよ。彼女はとても内気で、毎日俺のために裁縫をしてくれているんだ……」

昇る太陽の輝く光の下、テヒモシンはHuaZessinに、ネーベルゼレと出会い守ってきたこれまでの物語を語りながら歩いた。こうして、彼の特別な家族に新たな章が始まった。


【第3章 心が通じ合う二人】

テヒモシンが華ゼッシン(HuaZessin)の手を引いて家の中に入った瞬間、家の中は気まずい沈黙に包まれた。

ネーベルゼレはそこに立って、着物の裾を指でいじりながら、明らかに動揺した様子で新しい妹を見つめていた。

しかし、姉の内気さとは対照的に、華ゼッシンは勢いよく近づいていった。彼女はネーベルゼレの手をしっかりと握り、輝く瞳でまっすぐに見つめた。

「お姉ちゃん、少しだけ外で『デート』しない?」

「え……?」

ネーベルゼレが戸惑う間もなく、彼女は新しい妹に手を引かれて庭へと連れ出されてしまった。

テヒモシンはその後ろ姿を見送りながら、静かに微笑んだ。彼は何も口を挟まず、そっと庭の世話に戻った。二人の心が自分で出会い、繋がっていくのを見守ることにした。

木陰の涼しい木の下で、華ゼッシンは明るい仮面を少しずつ外し始めた。彼女はネーベルゼレに、ウィクンタリ族の残酷さ、そして人間に対する深い憎悪について語った。

「お姉ちゃん、知ってる? 木の年齢は年輪で数えるの。一つの輪が一年。私たちにとって、三ヶ月って、まだよちよち歩き始めたばかりの赤ちゃんみたいなものなの……」

華ゼッシンの声が怒りと悔しさで震えた。

「それなのにあの人たちは……まだ赤ちゃんの私を切り倒そうとして、挙句の果てに生きながら焼こうとしたの。ただ自分のわがままのために」

ネーベルゼレは胸が痛むのを抑えきれず、思わず声を上げた。

「なんてひどい……どうして『赤ちゃん』にそんなことができるの?」

共感の波が溢れ、ネーベルゼレも自分の心を開いた。

「私も同じよ。私が生まれたばかりの頃、人間たちは私を怪物だと言って……。自分たちが引き起こした天候の災いまで、全て私のせいにして。見つけたもの全てを投げつけてきたの——ナイフ、ハンマー、石……傷つけられるものなら何でも」

二人の少女は一日中ずっと寄り添って座り、互いの痛みを語り合った。それぞれの傷が、二人の絆を強く結びつけていった。

彼女たちは二つの大きな共通点に気づいた。

人間の残酷さを深く憎んでいること。そして、自分たちの命を救ってくれたご主人様に対して、誰よりも深い愛情を抱いていること。

午後、テヒモシンが庭から戻ってくると、ネーベルゼレがそっと近づいてきた。

「ご主人様、布がもうなくなってしまいました。買ってきてもらってもいいですか?」

二人がすでに影のように親しくなっているのを見て、テヒモシンは心から嬉しく思った。彼は華ゼッシンを誘い、一緒に買い物に出かけることにした。

街へと続く細い道を歩きながら、彼は静かに言った。

「華ゼッシン、ありがとう」

「どうして急に感謝するの?」花の公主は驚いて聞き返した。

「二人がこんなに早く仲良くなってくれて、本当に嬉しいんだ」

華ゼッシンは可愛らしく唇を尖らせた。

「『仲良し』じゃなくて『姉妹』だよ、ご主人様!」

「そうだな、姉妹だ」テヒモシンは頷き、ふと目を細めた。「実は……ネーベルゼレはいつも『大丈夫』って言うけど、涙がずっと止まらないんだ。彼女は俺の前では泣かないように我慢してる。でも一人になると、過去の恐ろしい記憶が蘇って、彼女を苦しめる」

彼は少し間を置いて、遠くを見つめた。

「泣くことはストレスを発散する手段だってわかってる。でも彼女は泣きすぎる。一緒にいるときも、いつも目が赤いんだ。俺の視線を避けて、声も小さくなる……」

「だから俺は生活リズムを変えた。一日24時間のうち、以前は8時間働いていたけど、今は4時間だけ。代わりに12時間を彼女のそばにいるようにした。彼女に、もう二度と一人じゃないって伝えるために」

テヒモシンは感心したように華ゼッシンを見た。

「でもお前は本当にすごいな。ネーベルゼレは見知らぬ人が苦手なのに、どうやってあんなに早く打ち解けられたんだ?」

華ゼッシンは優しく微笑んだ。それは深い理解に満ちた笑顔だった。

「簡単だよ。私たち二人とも、同じ人を愛していて、同じものを憎んでいる。それだけで十分、家族になれるよ、ご主人様」


【第4章 「人間」という名のトラウマ】

賑やかな街へと続く道が目の前に現れた。しかし、最初に見せていた期待とは裏腹に、華ゼッシンの足取りはどんどん重くなっていった。

人影がまばらに現れ始めた頃、彼女の顔は一瞬で青ざめた。

心臓が激しく鼓動し、胸から飛び出しそうだった。息が荒くなり、吐き気と悪寒が背筋を駆け上がる。華ゼッシンは立っていられなくなり、その場に崩れ落ち、両手で頭を抱えて震え始めた。

「大丈夫か?」テヒモシンが慌てて屈み込んだ。「辛いなら無理しないで、家に帰っていいぞ。この道をまっすぐ進めばすぐ着く」

華ゼッシンは弱々しく頷き、よろよろと立ち上がると、まるで怪物から逃げるように人ごみから背を向けて走り去った。

テヒモシンはその小さな背中を心配そうに見送り、ため息をついた。それからネーベルゼレの頼みを果たすため、一人で街へと足を進めた。

好みの布を選び終えた後、テヒモシンは急いで家路についた。人通りの少ない道の途中で、彼は意外な人物が待っているのに気づいた。

「華ゼッシン? さっきからここで待ってたのか?」

少女はうつむいたまま、嗚咽混じりの声で言った。

「ごめんなさい、ご主人様……私、役立たずで……一緒に買い物に行けなくて……」

「謝らなくていい」テヒモシンは彼女の肩に優しく手を置いた。「むしろ、俺の方がありがとうと言わなきゃいけない」

華ゼッシンは驚いて顔を上げた。

「どうして?」

「俺の人生に、ちょうどいいタイミングで現れてくれたから」彼は穏やかに微笑んだ。「実は、頼みたい大事なお願いがある。お前、俺の代わりに花畑と森の木々の面倒を見てくれないか?」

華ゼッシンの目がぱっと輝いた。

「もちろん! 私にできることがあって嬉しいよ!」

「助かる。それが終わったら、家に帰ってネーベルゼレと遊んでやってくれ。きっと彼女もお前を待ってる」

「うん!」

少し迷った後、華ゼッシンは小さく尋ねた。

「でもご主人様……さっきのあれ、何だったの? すごく怖かった……」

テヒモシンは少し考え、静かに答えた。

「あれは人間恐怖症(アンスロポフォビア)だ。ネーベルゼレが抱えているものと同じ。お前たちが今まで経験してきたことを思えば、人間を恐れるのは当然の反応だ。自分を責めすぎるな」

あの日から、小さな家の中の生活は少しずつ安定していった。それぞれの役割がはっきりと分かれていった。

ネーベルゼレは才能あるファッションデザイナーとして、家でほとんどの時間を過ごした。彼女の器用な手は、家族の服を作るだけでなく、精巧な衣類を制作して販売し、生活費を支えていた。

一方、テヒモシンの負担は華ゼッシンの助けによって大幅に軽くなった。元々放浪者だった彼は、森林育成と長期栽培に豊富な経験を持っていた。彼は香りの高い貴重な木々と、果樹園の管理を担当した。

そして華ゼッシンは、花としての鋭い感性で、色鮮やかな花畑と短期間で育つ野菜や穀物の世話をした。二人の手によって生み出される新鮮で清らかな作物は、食料であると同時に主要な収入源となり、かつて「死の大地」と呼ばれたこの土地で、彼らは穏やかで自立した生活を送り始めた。

奇妙な家族——

それぞれが過去の傷を背負いながらも、一緒に緑豊かな希望の未来を育んでいる家族。


【第5章 救済か、罰か?】

2019年8月25日(日)

静かな農場の穏やかな空気の中、晴天の霹靂のような衝撃的な知らせが届いた。

ウィクンタリ族が攻撃を受けているという。

その知らせを聞いた瞬間、華ゼッシンの唇に冷たい笑みが浮かんだ。

肌を焼き尽くす炎の記憶、ユーカリの油の強烈な臭い、そしてあの者たちの残酷な笑い声が、今も鮮明に彼女の心に焼き付いていた。

一度は命を奪われかけた者にとって、これはまさに因果応報だった。

「これが……報いね」

彼女は小さく呟き、満足げな光を瞳に宿した。

しかし、その短い喜びはすぐに消え失せた。

テヒモシンが荷物をまとめ始めたのを見たからだ。彼の目は揺るぎない決意に満ちていて、華ゼッシンの心を不安で締め付けた。

「俺たちはあそこへ行って、彼らを助ける」

テヒモシンは簡潔に言った。

「なぜです!?」

華ゼッシンは怒りに声を震わせて叫んだ。「ご主人様、あいつらは私たちを怪物扱いしたんですよ! 私を生きながら焼き殺そうとしたんです! あいつらは今受けているものを当然受けるべきです!」

テヒモシンは多くを語らなかった。ただ、優しくも重みのある眼差しで彼女を見つめた。

その視線は見えない糸のように、華ゼッシンを激しい怒りから引き戻した。

心の中ではまだ憤りと反発が渦巻いていたが、第二の人生を与えてくれたご主人様への絶対的な信頼から、彼女は渋々その後をついていった。

しかし、二人がウィクンタリ族の領域に足を踏み入れた瞬間、彼女の胸にあったすべての恨みは吹き飛ばされ、代わりに極度の恐怖が押し寄せた。

そこにあったのは、かつての傲慢で凶暴な部族の姿ではなかった。

そこはまさに地上の地獄だった。

燃えかけた小屋の間で、引き裂かれるような悲鳴が響き渡っている。

鋭い牙を持ち、うねる蔦をまとった異形の植物生物たちが、哀れな人間たちを狂ったように引き裂いていた。

鮮血が乾いた大地を真っ赤に染め上げ、どんな暗黒の想像をも超える恐ろしい光景が広がっていた。

テヒモシンは即座に鋭い声で命じた。

「華ゼッシン! あいつらを今すぐ止めろ!」

「はい、ご主人様!」

華ゼッシンは精神を集中し、血の中に眠る自然のエネルギーを爆発させた。

テヒモシンから教えられた技を放つ。

【木王の拘束】

大地が激しく揺れた。

鉄のように硬い巨大な蔦が地面から突き上がり、大蛇のようにうねりながら植物の怪物たちに絡みつき、瞬時にその動きを封じた。

「やめろ!」

廃墟の中から、しわがれた声が響いた。

暗闇の中から、一人の老いた科学者が姿を現した。

憎悪に満ちた深い皺が刻まれた顔で、テヒモシンと華ゼッシンを軽蔑の目で見つめた。

「貴様らはこの部族の者ではない。なぜ関係のないことに首を突っ込む? なぜこのゴミどもを守る?」

老人は蔦で拘束された怪物たちを指差し、吠えた。

「早く解放しろ!」

テヒモシンは華ゼッシンを守るように一歩前に出た。

「殺戮は決して答えにはならない」

老人は狂ったように笑い、自爆装置らしきものを取り出した。

「説教など聞きたくない! もし私の『子供たち』を殺すつもりなら、私はここで死ぬぞ。選べ! 一人の老いぼれを殺して部族を救うか、それとも私を生かしてこの村が消滅するのを見届けるか?

死にかけの老人の命と、数百人の命……どちらを天秤にかける?」

テヒモシンは華ゼッシンに視線を送った。

主人の意図を理解した彼女は、歯を食いしばりながら悔しげに魔力を収めた。

巨大な蔦が引き下がると、肉食植物たちは一斉に解放され、村の隅々へと散らばって狩りを再開した。

テヒモシンが交渉のために近づこうとした瞬間、老人はそれを阻んだ。

「どこにも行くんじゃない。貴様ら全員、ここに残ってこの崩壊の最後をしっかり見届けるんだ」

テヒモシンは低い声で尋ねた。視線は相手を深く射抜いていた。

「結局のところ、何があったんだ? なぜ科学者であるあなたが、この部族に対してここまで深い恨みを抱き、滅ぼそうとしている?」

老科学者は一瞬沈黙した。

燃える小屋の炎が、彼の濁った目に化石化したような苦痛を映し出していた。

「……この話は」

老人の声は、記憶の波に合わせて震え始めた。

「私の息子がまだ生きていた頃から、語らねばならない」


【第6章 憎悪の根源】

燃える家々から立ち上る炎の揺らめきが、老科学者の厳しい顔を照らしていた。

彼は廃墟の真ん中に立ち、血と涙にまみれた記憶のページをめくり始めた。

「私の息子、テストラウォリット(Thestraworit)は、植物学者であり探検家だった」

老人は掠れた声で語り始めた。「あの子はこの土地に、理想に燃える心を抱いてやって来た。新たな植物の遺伝子を発見したいと願ってな。

しかしあの子が見つけたのは、自然の美しさなどではなく、人間性の腐敗だった」

当時、テストラウォリットは現代人の想像を遥かに超える風習を目の当たりにして愕然とした。

ウィクンタリ族において、女性の存在は単なる道具に過ぎなかった。

「寝訪い……」

テヒモシンが眉を寄せ、聞き慣れない言葉を繰り返した。「それは何だ?」

老人は吐き捨てるように、嫌悪に満ちた笑みを浮かべた。

「結婚適齢期に達したのにまだ夫のいない娘がいたら、その家族は毎晩扉を開けておかねばならない。村の男たちが忍び込み、獣欲を満たすために女と関係を持つ。気に入れば娶るという建前だが、実際はただの玩具だ。今夜はこの家、明日は別の家。

生まれた無垢な子供たちでさえ、自分の母親ですら誰が父親かわからない」

テストラウォリットはそれを見過ごせなかった。

彼は辱めから身を投げ出そうとしていた一人の少女を救い、次第に他の女性たちも守るようになった。彼女たちのために仕事を作り、部族の束縛から逃れられるようにした。

しかし、保守的な長老たちは彼を敵の目でしか見なかった。

「私の息子は、迷信と異端を根絶やしにしたかった」

老人は続けた。「この土地は非科学的なものを盲信し、現実を否定して愚かな推測を崇拝している」

テストラウォリットは一度、部族の前に立ち、こう宣言した。

「あなたたちが本当に必要なのは、胡散臭い神託などではない。知識だ。科学と技術だ。それで人生を変えられる!」

その呼びかけに対する答えは、石つぶてと追放の言葉だけだった。

それでも彼は諦めなかった。一度家に戻った後、再び村を訪れることを決意した。粘り強さが彼らの心を動かすことを信じて。

しかし、遅れた風習は罪へと変わっていた。

ウィクンタリ族では、双子が生まれた場合、一人は殺される。病人が出れば、医者ではなくシャーマンのところへ行く。

最も忌まわしいのは「死者の呼び声」という掟だった。

兄が亡くなった後、弟が病に倒れた場合、村は兄が弟を「呼んでいる」と信じる。

不吉を防ぐため、まだ息のある弟を生きたまま火葬にするのだ。

「テストラウォリットは現代医学を使って、そんな哀れな弟を救った」

老人は拳を強く握りしめ、震えていた。「そしてその報酬が何か?

あいつらはあの子を魔女と呼び、森の怪物のように武器を手に追い回した!」

松明と槍から必死に逃げる中、テストラウォリットは足を滑らせ、深い谷底へと落ちた。

「あの子は私に電話をかけてきた……」

老人の声が詰まり、遅すぎた涙が深い皺の上を伝った。「最後の言葉は助けを求めるものではなく、親孝行できなかったことを謝る言葉だった」

壊れた携帯電話の位置情報から、老人は冷たい谷底で息子の遺体を発見した。

その瞬間、穏やかな植物学者は死に、氷のような復讐者の心だけが残った。

「この部族は救われる価値などない」

老人は、なおも虐殺を続ける植物の怪物たちを見つめながら言った。

「奴らは私の人生の光を、間接的に殺したのだ。

今、私は自然にこの腐敗を『浄化』させる」


【第7章 時の最終判決】

四十年。

その老人が、湿った実験室の闇の中に自らを閉じ込め、植物学の最高の知識を駆使して「草木の殺人兵器」を生み出すために費やした時間だった。

あの怪物たちの肉片の一欠片、樹液の一滴に至るまで、すべてが四十年近くにわたる静かな憎悪によって育て上げられたものだった。

物語が終わった瞬間、得も言われぬ静寂が辺りを包んだ。

村の隅々から肉食植物の怪物たちが這い出てきて、老人を中心に集まり始めた。血に染まった葉が微かに震え、まるで勝利を報告しているかのようだった。

老人は周囲を見回し、嘲るような声で掠れながら言った。

「……ふん。ようやくこのゴミの山を片付けてくれたようだな?」

テヒモシンは荒廃しきった村の残骸を見つめ、愕然として尋ねた。

「何だって? この部族の人口は一体どれだけあったんだ? どうしてこんな短期間でほぼ全滅できる?」

老人は乾いた笑みを浮かべ、虚空を見つめながら答えた。

「1979年、ウィクンタリ族はまだ1,251万1,718人という繁栄した共同体だった。

だが今日、私の子供たちが動き出す前には、わずか400の命しか残っていなかった。

わかるか? 私は大したことをしていない。ただ、遅れきった風習と無知、そして自分勝手さが、彼らの民族を内側から蝕み、死に至らしめていただけだ。私はただ、長く腐り続けていた死体に、最後のピリオドを打ったに過ぎない」

そう言いながら、老人はゆっくりとポケットから小さなスプレー缶を取り出した。

ボタンを押すと、薄紫色の霧が空気に広がった。

すると、凶暴だった肉食植物たちが一斉に縮み上がり、棘だらけの外皮が剥がれ落ち、普通の食虫植物のような姿に戻って、静かに大地に根を下ろした。

すべてが終わった。

老人は長く息を吐き出した。まるで四十年もの間、胸にのしかかっていた千斤の岩をようやく下ろしたかのように。

濁った瞳が徐々に曇り、老いと疲労に蝕まれた体は、もはや時間の重さに耐えられなかった。

老人はその場に崩れ落ち、目を閉じ、息子の命を救おうとした土地の上で静かに息を引き取った。

テヒモシンと華ゼッシンは、静かに老人をその場に埋葬した。

墓の周囲には、肉食植物たちが忠実な衛兵のように立ち、哀れな父親の永遠の眠りを見守っていた。

テヒモシンは長い間無言で立ち尽くし、静かにため息をついた。

「本当に……かわいそうな人だ。偉大な父親だったのに、選び取った結末があまりにも痛ましい。

この年齢なら、本来は子や孫に囲まれて、穏やかな老後を送るはずだったのに……。

あまりにも大きな悲しみのせいで、あの人は一生を復讐の中に生きなければならなかった」

華ゼッシンはその横に立ち、手に老人の形見である古びたスプレー缶を強く握りしめていた。

彼女は今や灰と瓦礫の山と化した村の方を見つめ、小さく尋ねた。

「ご主人様……この村はどうなるのですか? すべて……こうして消えてしまうのですか?」

テヒモシンは少し考え、静かに答えた。

「ウィクンタリ族とこの村は、世界地図から正式に消え去った。しかし、歴史は常に彼らの足跡を記録し続けるだろう。それはひとつの証明だ。

知識と進歩を拒絶する社会は、いずれ自らの遅れによって淘汰されるということを」

彼は華ゼッシンに向き直った。

「さあ、帰ろう」

華ゼッシンは頷き、手の中のスプレー缶を強く握りしめた。

燃えるような夕陽の下、二人の影は長く伸び、死の大地を離れる細い道に落ちていた。

こうして、痛ましい一章が閉じられ、二人は再び農場の穏やかな日常へと戻っていった。


【第8章 選択の責任と共に生きる】

2019年8月25日(日)

夜はとてもゆっくりと訪れた。まるで闇が濃度を増し、庭の木々の葉の一枚一枚にしっかりと張り付いているかのようだった。

華ゼッシンは色褪せた木製の椅子に一人で座っていた。

古木から漂う沈香の香りは今も庭に満ちていたが、不思議とこれまでのような安らぎを与えてくれなかった。それはまるで、失われたものを思い出させる残酷な合図のように感じられた。

彼女は自分の両手を見つめ、次に周囲の花壇を見た。

以前なら、彼女が歩くだけで花たちは競うように身を傾け、ドレスの裾に絡みつき、柔らかい蔦が子供が甘えるように彼女の手首にそっと触れてきた。

しかし今夜は、すべてが静止していた。

花たちは月明かりの下でなお美しく咲き誇っていたが、彼女との間には見えない壁ができてしまったようだった。

花たちが怖がっているのか、それとも自分がこの純粋な世界から自らを引き離してしまったのか——。

「人間が間違っているの……それとも、この世界が最初から間違っていたの?」

彼女の小さな声は、静寂の中に溶けていった。

彼女は老科学者の顔を思い出した。あの人が息子のことを語っていた時の表情を。

狂気も絶叫もなかった。ただ、自分の痛みを正当化するために、人生の残りの半分を捧げた一人の父親の顔だけがあった。

彼女は考えた。

もし愛が人を鬼に変えてしまうのだとしたら、その愛はまだ高貴なものと言えるのだろうか?


翌朝——2019年8月26日(月)

空は灰色に覆われ、雨の訪れを予感させていた。

テヒモシンは、華ゼッシンが昨夜と同じ場所にまだ座っているのを見つけた。夜露が彼女の髪を少し湿らせていた。彼は「大丈夫か」とは聞かなかった。答えはわかっていたから。

「ご主人様……」

華ゼッシンは、彼の影が芝生に長く伸びるのを見て呼びかけた。

彼女の声は感情を欠いた、平板なものだった。

「ご主人様にとって、正義とは何だと思いますか?」

テヒモシンは少し考えてから答えた。

「正義とは、人間が互いに滅ぼし合わずに一緒に生きていくために作り出したものだ。

それはまるで檻のようなものだよ、華ゼッシン。

人間の内側にいる野獣を閉じ込めておくための檻だ」

「では、人間が一緒に生きることを望まない場合はどうなるのですか?」

彼女の瞳が鋭く光った。「お互いを踏みつけにしてでも自分の目的を達成したいだけなら、その檻にどんな意味があるというのです?」

「その時は、正義はただの歪められた道具に過ぎなくなる」

テヒモシンの声は低く、重かった。

華ゼッシンは小さく笑った。それは決して楽しい笑みではなかった。

「あの科学者……村人を直接殺したわけではありませんでした」

「彼は世界中に自分の痛みをわかってほしかった」

「では、彼は悪者ですか? それとも、ただ息子のための『正義』を、自分のできるすべてを使って取り戻そうとした一人の父親ですか?」

テヒモシンは否定しなかった。

「俺は彼を無罪だとは思わない」

彼は言った。「しかし、完全に間違っているとも言い切れない」

華ゼッシンはうつむいた。

「では私は? 私を殺そうとした人たちを守ることを選んだ私は、正しかったのですか? それとも間違っていたのですか?」

テヒモシンは彼女を長い間見つめた。

その質問は、重い鉛のように空間に落ちた。

彼は彼女の傍らに片膝をつき、木々の世話でまだ土のついた両手で静かに言った。

「俺にはわからない。

ただ、こう理解してほしい。

許すことは心の選択だ。それはお前自身が穏やかになるためのものだ。

殺さないことは理性の選択だ。お前が彼らを殺さなかったのは、彼らが生きる価値があるからではない。

お前が、彼らよりも清らかな心を持つに値する存在だからだ」

その後、ネーベルゼレが現れ、華ゼッシンの隣に静かに腰を下ろした。

彼女は例のスプレー缶には目を向けず、ただ庭を見つめていた。

「私、昔は思っていたの」ネーベルゼレは言った。「自分を嫌う人たちが全員いなくなったら、私は幸せになれるって」

華ゼッシンが顔を向けた。

「でも気づいたの」

ネーベルゼレは続けた。「たとえ彼らが消えても……彼らに関する痛い記憶は残ったままなの」

「復讐は痛みを消してくれない。ただ、その痛みを別の誰かに渡すだけ」

その時、テヒモシンが立ち上がり、遠い地平線を見つめた。

「誰かを憎むこと自体は悪いことじゃない。それは本能だ。

しかし、その憎しみに自分がどういう人間になるかを決められてしまうのは、危険だ」

彼は静かに言葉を続けた。

「もしお前が彼らの残酷さを使って彼らを罰するなら、最終的に勝つのは彼らだ。

なぜなら、彼らはお前を『自分と同じような存在』に変えてしまったから」

華ゼッシンは目を閉じた。

その言葉が肌に染み込んでいくのを感じた。

胸の内で渦巻いていた葛藤が、少しだけ和らいでいくのがわかった。

「では、これからどうやって生きていけばいいのですか?」

「他人の正義のために生きるのでもなく、自分の憎しみのために生きるのでもない」

ネーベルゼレは華ゼッシンの冷たい手を優しく握った。

「ただ、毎朝鏡を見た時に、自分に違和感を覚えないように生きること。それだけよ」


その日の午後、庭に小さな変化が訪れ始めた。

ネーベルゼレは静かに布を倉庫へ運び、新しいデザインの準備を始めた——痛みの裸を覆い隠すための衣服を。

華ゼッシンはジョウロを手に、花壇に水をやり始めた。

今度は手が震えていなかった。

花たちは彼女の心に少しずつ戻ってきた優しさを敏感に感じ取ったように、そっと揺れ、一部の小さな蔦が恥ずかしそうに彼女の足首に絡みついてきた。

彼女は丁寧に種をチェックしているテヒモシンを見て言った。

「知識に道徳が伴わなければ、それは災厄になりますよね、ご主人様?」

テヒモシンは静かに頷いた。

「ああ、その通りだ」

部屋の明かりが消える前、華ゼッシンは棚の上のスプレー缶を見つめ、非常に小さな声で呟いた。

「私はまだ人間が嫌い。この憎しみは、おそらく一生消えないでしょう。

でも、私は自分が嫌悪するような存在には、絶対にならない」

その夜、華ゼッシンは深い眠りについた。

それはすべての答えを見つけた者の眠りではなかった。

彼女は理解していた——道徳に関するある問題には、最初から「正解」など存在しないのだということを。

それは、自分の選択に対する責任をしっかりと背負うことを受け入れた者の眠りだった。

これからの道は、まだ憎しみで満ちているかもしれない。

しかし彼女はもう恐れていなかった。

なぜなら、彼女はようやく理解したからだ。

荒廃した世界の中で、それでも自分自身を保ち続けること——

それこそが、力の最も高い形なのだと。


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