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霧の令嬢  作者: Vleuingu
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雷の妖精

第1章 神の怒りを一身に受ける山

2022年1月1日。

「天に打たれた国」と呼ばれる土地では、空が平穏を知らない。

一日に二十回以上という狂ったような頻度で、稲妻が雲を引き裂く。

その轟音はまるで神の激怒が地上に降り注いでいるかのようだった。

家畜や家禽は瞬時に焼き払われ、大地は裂け、煙が立ち上る。

しかし、最も奇妙なのは人間のほうだった。

僅か十五人が落雷に遭った——彼らは気を失い、動かなくなった……が、全員が目を覚ました。

誰も死ななかった。一人も。

それでも恐怖はすべてを上回った。人々は次々と村を捨て、呪われたような荒野を後にした。

その無人の村の奥に、一つの高い山がそびえ立っていた。

山の傍らには、巨大な鏡のような静かな湖がある。

そしてその山頂に——一人の少女が立っていた。

彼女は、恐るべき雷の力を宿していた。

仮に彼女を「セツ」と呼ぶとしよう。

彼女は恐れていた。

自分が死ぬことをではなく、自分が他人の命を奪ってしまうことを。

誰にも傷をつけないために、彼女は静かに村を離れ、この荒涼とした山に身を隠した。それ以来、村に雷は落ちなくなった。

すべての雷が——彼女の存在するこの山頂に集中した。

ここでは一分間に最大30本の雷が落ちることもある。

それは膨大なエネルギーであり、同時に一億個の電球を灯すに十分な量だった。

人々はこの山をこう呼んだ——

「神の怒りを一身に受ける山」。

研究資料によると、雷は雲から地上へ約十万km/sの速度で移動するという。

自然界の雷には様々な形態がある。

・雲と大地の間の雷

・雲と雲の間の雷

・雲の中で発生する雷

その他、稀な変種も存在する。

・熱雷(光だけが見えて音がしない)

・乾雷(火を放つ)

・球雷(未だ十分に解明されていない謎のエネルギー体)

「天に打たれた国」の政府は、この異常現象を調査するため科学者たちを派遣した。

雷がどうやらあの少女の足取りに合わせて移動しているという報告を受け、彼らは結論を出した。

雷の発生源……それは彼女自身だった。

「怖がらないで。私たちが助けるよ。」

それはセツがこれまで聞いた中で最も優しい言葉だった。

彼女は彼らを信じた。

彼らは彼女に厚いゴム製の防護服を着せ、重い手袋とブーツを履かせた。

放電を抑えるためだと言った。

彼らにとって彼女はただの「帯電した人間」に過ぎなかった。

しかし彼らは知らなかった——

彼女は落雷の被害者などではない。

彼女は……神に創られた存在だった。

科学者たちは政府に報告した。

「彼女の体から帯電粒子を除去すれば、すべて解決します。」

彼らは彼女にこう言った。

「私たちはあなたの力を……医学のために必要としている。」

彼女は再び信じた。

彼女は冷たい待合室に連れて行かれた。そこで、実験室から出てきたばかりの子供たちと出会った。

一人の子供が近づいてきた。

「お姉ちゃんも、がんや小児麻痺を治す研究を手伝いに来たの?」

彼女は小さく頷いた。

「ええ、医学のために役に立ちに来たの。」

子供たちが次々に口を開いた。無垢な声が静かな部屋に響く。

「お父さんが肝臓がん……先生はあと一ヶ月だって言った。僕、お父さんを助けたいんだ……」

「僕は孤児で……自分に価値なんてないと思ってた。でも国を助けられるって言われて、初めて役に立てる気がした……」

「おじいちゃんが5年も足が不自由なんだ……治してあげたい……」

「僕は家出少年で……家族を助けるお金が欲しくて……」

その言葉の一つ一つ、儚い希望が、彼女の心を強く締め付けた。

彼女はますます確信した。ここは……正しい場所だと。

「会話はここまでだ。」

冷たい声が響いた。科学者たちが部屋に入ってきた。

白髪の老教授が前に進み出た。眼鏡の奥の目は冷ややかだった。彼は彼女を見て、静かに告げた。

「このプロジェクトの名称は……『プロジェクト・テン(仙)』だ。」


第2章 人間の世界に足を踏み入れる代償

その糸が現れた瞬間、主はそれを見た——

遥か遠くの虚空へと伸びる、細く儚い光の糸を。

彼は静かにその糸を辿った。

糸の先で……彼は彼女を見た。

分厚い絶縁ゴムをまとった少女が、子供たちの輪の中で、まるで自分も普通の人間であるかのように話している姿を。

主は彼女を呼ばず、干渉するつもりもなかった。

彼は静かに背を向け……去っていった。

いつものように、屋敷では少女たちがすでに待機していた。

主の姿が扉をくぐるやいなや、彼女たちは一斉に声を揃えた。

「おかえりなさいませ、ご主人様。」

最初に口を開いたのはネーベルゼルだった。彼女は目を細めて尋ねる。

「新しいお友達は?」

「あの子は今、人間の世界に溶け込もうとしている。」

主は淡々と答えた。

家の中の空気が一瞬で変わった。

さっきまでの安堵感は消え失せ、静かな水面に重い石を投げ込んだように、重苦しい沈黙がゆっくりと広がっていく。

その短い答えは、あまりにも明確な意味を含んでいた。

数秒のうちに、全員が事態を理解した。

沈黙は長く続かなかった。反応はほぼ即座に爆発した。

「人間の世界に溶け込むだなんて、自殺行為も同然よ。」

ネーベルゼルが、剃刀のように冷たい声で言った。

「溶け込むというのは、被害者になるということ! 人間の世界は『溶け込む』場所などではなく、底なしの墓穴よ。あの子は自分から餌になってるの!」

「全くもって盲目ね!」

フアゼッシンが目を吊り上げ、油を注がれた炎のような声で吐き捨てた。

「あの子はまた、あいつらと一緒に生きることを選んだの? どうやって人間と溶け合えるっていうの? 傷つかずに人間と暮らせると思ってるなら、それは真っ昼間の夢よ。馬鹿げてるわ! あの子は自ら死地に飛び込んでるのよ。」

「溶け合いなんて、最初から存在しない!」

エルライビジンが激しく震える声で言った。彼女の瞳は、過去の恐怖を思い出したように暗く淀んでいた。

「あるのはただ、狩りと虐殺だけ! あの子は狩られ、弄ばれ、引き裂かれ、骨の髄まで喰い尽くされるわ。あそこにいるなら今すぐ逃げなさい! 人間はあの子を殺す! 生き残ったとしても、あの子はもう自分ではいられない。……そしてもし死ぬのなら、せめて、私たちがなぜ人間を骨の髄まで憎むのかを理解するでしょう。命を代償にした教訓としてね。」

「あの子は私の受けた苦しみを侮辱している! 頭を砕かれる? 最も残虐な拷問? 人間が変わって優しくなったとでも思ってるの?」

ディーススワノが歯ぎしりし、両拳を真っ白になるほど握りしめた。

「絶対にないわ! あいつらはただ、上手く仮面を被って騙すだけ。あの子は自ら進んで命を捧げて、新しい玩具にされてるのよ!」

「私はかつて、人間を信じる道を選んだ……」

ギグュムが嗄れた声で言った。瞳には深い憂愁が宿っていた。

「そして奴らは容赦なく私を裏切った。あの子は自分が特別な例外だと思っているのか? 私は奴らの本性を知っている。あの子はただの道具、実験のおもちゃにされ、最後には捨てられて獣のように狩られるだけだ。その『溶け込み』なんて、安っぽい嘘に過ぎない。」

ダルジョアムーンが小さく身を震わせ、肩を小刻みに震わせながら言った。

「私は今でもはっきり覚えている……心臓を駆け巡る死の電流の感覚を。叫び声すら出せないほどの痛みを。あの子は自らその悪魔の世界に足を踏み入れようとしているの? 溶け合いなどありえない! あれはただ、派手な色で塗られた罠に過ぎない。私は人間がどれほど残虐になれるかを知っている。あの子が奴らの腕の中で無事でいられるとは、絶対に信じない。」

ジョウセーレはソファに深く凭れかかり、失望の眼差しで主をまっすぐ見つめた。

「あの子が『溶け込もう』とすればするほど、人間について深く知ることになる……そして結局、より深く人間を憎むようになるだけよ。それは悲劇的な悪循環だ。私は全部見てきた。あの子はすぐに、忘れられない教訓を学ぶでしょう。見てなさい、すぐに泣きながら私たちの元に戻ってくるか……二度と戻れなくなるか、どちらかよ。」

セイントリーシュは武器を手に取り、決然とした目で言った。いつもの凶暴さが顔に浮かんでいる。

「あの子は今どこ? すぐに首根っこ掴んで連れ戻してくる! ダメなら守りに行くわ。あの残虐な人間どもが手を出さないうちに!」

アンフゥヒコは顔から血の気が引いて真っ青になり、一歩後ずさり、手で口を押さえて吐き気を堪えるように言った。声は憎悪に震えていた。

「ご主人様、あの子は死と穢れを弄んでいるわ。私はあいつらに凄惨に犯されたことがある! あいつらの本性に善など欠片もない! あの子は狂ってるの? それとも洗脳されたの? 絶対に信じてはダメ! 人間があの子に同じことをしないと思ってるなら……すぐに地獄というものを思い知ることになるわ。」

主はただ黙って、彼女たちの言葉を静かに聞いていた。

全員——かつて信じ、愛し、そして残酷に裏切られた者たち——は、セツの結末をはっきりと見据えていた。

血と涙と、残忍な搾取によって書き記された、悲惨な結末を。


一方……

地下深く、完全に密閉された実験室の中。

天井の蛍光灯がチカチカと点滅し、冷たい「タチッ、タチッ」という音を立てていた。

セツは部屋の中央に一人で立っていた。周囲には無数のコードと無機質な金属の塊が張り巡らされている。

「あと一分だけだ、我慢してくれ。」

スピーカー越しに科学者の冷たい声が響いた。

彼女は小さく頷き、目を閉じた。

巨大な機械が起動を始める。

ヴゥゥゥゥンッ——!

体内の電流が乱暴に、残酷に引きずり出されていく。

痛みが即座に襲ってきた。心臓と内臓を掻き毟られるような、魂が引き裂かれるような激痛。

一分間が、孤独な一世紀のように感じられた。

機械の部屋から出た時、彼女の足はふらつき、立ち上がることすらままならなかった。美しい顔は疲労で真っ青になっていた。

しかし、外で待つ子供たちの希望に満ちた瞳を見た瞬間、彼女は無理に優しい笑みを浮かべた。

彼女はまだ知らなかった。

その運命の「一分間」が、日を追うごとに長くなっていくことを。

彼らが言う「電荷を除去して病気を治す」という行為が、実は彼女の命を少しずつ吸い取っていることを。

そして「プロジェクト・テン(仙)」など、最初から人を救うために作られた計画などではなかったことを。

それはただ、神の力を最後の一滴まで搾り取り、彼女を魂のない抜け殻に変えるまでの、残酷な計画に過ぎなかった。


第3章 人間は変わらない

セツが研究所に足を踏み入れてから一週間が経った。

2022年1月7日、金曜日。

主と彼女の間に結ばれていた、か細い魂の糸が突然、ぷつりと断ち切れた。

心の空間に残ったのは、恐ろしいほど冷え切った虚無だけだった。

主が彼女を見つけた時、現実はネーベルゼルの最も暗い予言よりも残酷で、吐き気を催すものだった。

近代的な病室などなく、志願した「恩人」に対する敬意など欠片もなかった。

彼女の遺体は、研究所裏手にある荒廃したゴミ捨て場に、無造作に投げ捨てられていた。

そこは腐敗した死臭が充満し、鼠、猫、犬の動物の死骸と、歪に崩れた人間の腐乱死体が混ざり合っていた。

美しく飾られた「プロジェクト・テン(仙)」という名の下に、ここはただの人を屠る屠殺場に過ぎなかった。

灰色の午後、鉛のような冷たい雨が屋根に降り注いでいた。

主は家に入り、雨に濡れた白い布に包まれた冷たい体を抱いていた。

「連れて帰った……しかし、もう手遅れだった。」

主の声は低く、喉に詰まっていた。

「奴らは彼女を殺した。みんなが言った通りだ……利用し尽くし、必要なくなったら捨てた。」

周囲の空気が一瞬で凍りついた。

ネーベルゼルが震える足取りで近づき、目を見開いて恐怖に震える声で囁いた。

「……嘘……そんな……彼女……死んだの……?」

主は無言で頷き、遺体を木の台の上に横たえ、白い布で丁寧に覆った。

彼はうなだれ、両手を強く握りしめて震えていた。

「すまない……みんなの警告を信じなかった。」

ネーベルゼルは顔面蒼白になり、血の気のない唇を震わせた。

「ご主人様、彼女をどこで……?」

「研究所裏のゴミ捨て場だ。」主は嗄れた声で答えた。「そこは死体だらけだった……動物から人間まで。」

ネーベルゼルの疑念、憎悪、そして予言はすべて、苦い現実となった。

彼女は主に向き直り、絶望に震える声で叫んだ。

「利用されたのよ! 道具のように使われて……価値がなくなったらゴミのように捨てられた……!」

「だから言ったでしょう!」

フアゼッシンが狂ったように叫び、怒りの炎が全身を包み、灰色の空をも焼き尽くさんばかりだった。

「あいつらは殺人者よ!」

ギグュムは部屋の隅に立ち尽くし、いつもの軽蔑の笑みは完全に消え、ただ人間性への絶望だけを宿した虚ろな目で呟いた。

「これが、愚かな善意が支払う代償だ。これからは、人間に善意を抱く者など、誰一人として許さない。」

ディーススワノは床に崩れ落ち、頭を抱えて叫んだ。

「また一人……人間に殺された……これが奴らの本性だ!」

エルライビジンは体を縮こまらせ、恐怖と悲劇の確定に涙をぼろぼろと零しながら、肩を抱きしめて繰り返した。

「殺した……本当に殺した……」

ダルジョアムーンは膝をつき、涙を流した。

「彼女は……人間を信じたせいで死んだ……」

ジョウセーレは静かに顔を背け、抑えきれない震える声で言った。

「彼女は自分なら変えられると信じた。でも人間は決して変わらない。ただ人を殺すことだけが上手い。この世界は腐りきっている。彼女はそれを証明するために死んだ。あまりにも高すぎる教訓よ。」

セイントリーシュは動かない遺体をじっと見つめ、骨まで冷える声で呟いた。

「利用……それが人間の唯一のコミュニケーション方法。力を利用し、弱さを利用し、体を利用する……私は人間が大嫌い!」

アンフゥヒコは重く憂鬱な、怒りに満ちた声で言った。

「これが、人間を信じた者の末路よ。あいつらに信頼される価値などない。」

ネーベルゼルが小さく、哀れむように言った。

「……彼女、可哀想……」

主はギグュムの方を向き、心配そうな目で尋ねた。

「彼女を助ける方法はないのか?」

「ご安心ください。彼女はまだ死んではいません。」ギグュムは微動だにせず答えた。「ただ、すべてのエネルギーを失って深い昏睡状態に陥っているだけです。」

彼女は少し間を置いて続けた。

「十分なエネルギーを補給すれば……目を覚まします。」

主は眉を寄せた。

「エネルギーを……どうやって?」

ギグュムは機械のように淡々と答えた。

「彼女に雷を落としてください。」

主は一瞬、言葉を失った。

「……雷を落とす?」

ギグュムは軽く息を吐き、当然のことを説明するように言った。

「簡単に言えば……彼女に『食べさせる』ということです。」

「彼女の体を生き永らえさせる根源的な力……それは雷そのものです。」

主は瞬きをして情報を飲み込み、力強く頷いた。

「……なるほど。」

彼の顔に自信に満ちた笑みが浮かんだ。

「わかった。これは俺に任せろ。」


それから——主はセツの動かない体を背負い、世界中の雷雲を追って走り続けた。

空が咆哮を上げるところ、激しい稲妻が落ちるところ——

彼は必ずそこに現れた。

豪雨と嵐の中、夜空を引き裂く稲妻の真下で——

意識のない体を、直接雷が落ちる場所に晒した。

その行為は休むことなく繰り返された。

まるで……彼が自然の怒りから、彼女の命を奪い返そうとしているかのように。

2022年2月1日、火曜日。

世界から隔絶された家の中で、時間は静かに流れていた。

ネーベルゼルが不安げにため息をついた。

「ご主人様、遅すぎる……まだ帰ってこない。」

「もう一ヶ月も経ったわ。」フアゼッシンが声を落として言った。

アンフゥヒコは腕を組み、冷たい目で窓の外を見つめた。

「十億ボルトを集めるのが、一日や二日でできると思うの?」

ジョウセーレが眉を寄せた。

「十億ボルト? そんなに必要なのかしら?」

ディーススワノが尋ねた。

「じゃあ……何日かかるの?」

ギグュムは落ち着いた声で正確な数字を告げた。

「少なくとも……百日。」

「そんなに……?」ダルジョアムーンが顔を青くして呟いた。

「ギグュム、アンフゥヒコ……何かご主人様を助ける方法を考えられない? 二人はこの手のことに詳しいでしょう?」

ギグュムとアンフゥヒコは無言で視線を交わした。

一瞬の目配せで、二人は互いの意図を理解した。

そして翌日——

主が呼び戻された。

彼が居間に現れるや否や、ギグュムがゆっくりと歩み寄り、奇妙な形の装置を手渡した。

「これは……何だ?」

主が興味深げに尋ねた。

ギグュムはいつもの落ち着いた口調で答えた。

「ご主人様は彼女を救いたいのでしょう? これは雷を蓄積する装置です。」

彼女は装置の仕組みを説明した。

「十億ボルトをこの装置に集めてください。世界中のどこからでも雷を吸収できます。地球の反対側からでも引き寄せることが可能です。」

主は手に持った小型の装置をじっと見つめ、満足げに微笑んだ。

「簡単な話だな。任せてくれ。」

エルライビジンがアンフゥヒコに尋ねた。

「今回は……ご主人様は何日かかるの?」

アンフゥヒコは一歩前に出て、迷いなく宣言した。

「ちょうど一日だけ。」


第4章 プロジェクト・テン(仙)の裏側

2022年2月4日、金曜日。

大きな扉が開いた。

主はゆっくりと居間に入ってきた。手に持っているのは雷蓄積装置。装置の先端で警告ランプが赤く激しく点滅している。

セイントリーシュが眉を寄せた。

「アンフゥヒコは一日で満充電できると言ったはずよ? どうしてご主人様はこんなに遅くなったの?」

主は頭を掻き、少し照れくさそうに答えた。

「あー……『満タン』がどのくらいかわからなくて、警告ランプが赤になるまで集め続けた。」

ギグュムがソファから飛び起き、慌てた声で叫んだ。

「赤信号は装置が深刻な過負荷状態に陥っているってことよ!」

アンフゥヒコが近づき、電子画面に躍る数値を凝視して、驚愕のあまり声が低くなった。

「……一兆ボルト……」

ギグュムはそれ以上余計な言葉を並べず、装置を奪い取ってエネルギー転送プロセスを即座に起動させた。

途方もない量の電流が、恐るべき出力でセツの体に流れ込んだ。

部屋全体が激しく震え、青紫色の小さな稲妻が周囲に飛び散り始めた。

少女の目が突然見開かれた。しかしその瞳には、もう以前のような澄んで弱々しい光はなかった。

「この邪悪な人間ども……みんな死ね!」

ドォンッ!

空気を引き裂くような爆音が響いた。破壊的な威力を持つ最大出力の雷が、主に向かってまっすぐに放たれた。

ネーベルゼルが叫んだ。

「ちょっとあんた、何してるのよ!?」

フアゼッシンが歯ぎしりしながら言った。

「命を助けてくれた人を、そんな扱いするの!?」

ディーススワノが冷たい目で言った。

「自分が今生きている理由、わかってる?」

セツはびっくりして慌てた。

「ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」

ギグュムがテヒモシン(主)の方を見て尋ねた。

「ご主人様、大丈夫ですか?」

主は肩の煤を軽く払い落とし、至って平然とした様子で答えた。

「大丈夫だ……蚊に刺された程度の感覚だった。」

ダルジョアムーンが目を丸くした。

「ご主人様、もう雷に完全耐性がついたんですか? まさか以前に落雷に遭ったことがあるとか……?」

主は小さく微笑んだ。

「彼女を背負って世界中を回って雷を集め始めた最初の時から、すでに何度も落雷に遭っている。」

ジョウセーレが唇を尖らせ、感心したように言った。

「蚊に刺された程度、ですって……。さっきの爆発的な一撃、軽く見積もっても百万ボルトはあったはずよ。」

激しいエネルギー暴走の後、少女は震えながらその場に立ち尽くしていた。

主はゆっくりと彼女に近づき、優しく頭を撫でながら静かに尋ねた。

「教えてくれ。あの場所で……結局、何があったんだ?」

少女は唇を固く結び、黙っていた。

やがて、彼女の両膝が崩れ落ち、その場に跪いた。

「お願いです……あそこで無垢な子供たちを、助けてください……」

セイントリーシュが表情を引き締め、一歩前に出た。

「助けるって、どういうこと? 詳しく話してみなさい。」

セツは両手を強く握りしめ、怒りに震える声で言った。

「プロジェクト・テン(仙)……は、人を救うためのものではありませんでした。」

「あれは……地震、火山、津波などの天災に対して、人間が絶対的に生き残るための実験……」

「最初は『がんや小児麻痺の患者を救うための人道的実験』だと聞かされました。本当に聞こえが良くて……」

彼女は苦々しい笑みを浮かべ、涙が溢れそうになった。

「でも全部……非人道的な実験を隠すための偽装でした。」

「彼らは孤児や、貧しい家庭の子供たち、苦境にある人々の善意を利用して実験体にしました。当然、実験は繰り返し失敗しました。そして彼らは私——無尽蔵のエネルギー源——を見つけたのです。」

声が震え、喉が詰まった。

「最初はすべて順調でした。でも、ある日、一人の子供が実験中に死ぬのを目の当たりにしました。その子は、家で小児麻痺の父親を治すためのお金を稼ぎたくてここに来たのです。それから気づきました。一人だけじゃない……たくさんの子供たちが、この実験室で無駄に命を落としていることに。」

涙がぼろぼろと零れ落ち、声が詰まった。

「私はすぐに彼らを問い詰めました。すべてを正直に話さないなら、ここを去ると宣言しました。彼らはもう隠しきれなくなったと悟ると、口封じのために私を殺すことを決めたのです。私が意識を失う直前、彼らは得意げにすべてを話してくれました。」

彼女は拳を握りしめ、爪が掌に食い込むほど力を込めた。

「彼らは私からすべての雷のエネルギーを一気に吸い取って、私を殺したのです。」

主が低い声で言った。

「だから……俺が着いた時、あの辺りは人間と動物の死体だらけだったのか。」

ギグュムが頷き、分析した。

「つまり動物実験は成功した……だから人間実験に移行したというわけですね。」

セツは顔を上げ、頰を伝う涙を拭いもせずに言った。

「私はあの無垢で善良な子供たちを救いたい。あの子たちは貧しい家を助けるために、親孝行のために自ら実験体になったのに……彼らは子供たちの命をゴミのように扱い、次から次へと騙し続けたのです。」

主は数秒間沈黙して考え込み、やがて力強く言った。

「その研究所へ行こう。」

彼はまだ跪いている少女を見て、柔らかい声で続けた。

「ああ、そうだ……まだ新しい名前をつけていなかったな。」

少女が呆然と顔を上げた。

「ユウセインダー——これからお前の名前だ。」

主は優しく言った。

「日本語の『妖精(Yousei)』と、英語の『Thunder(雷)』を組み合わせた名前だ。」


一行はすぐに旧研究所の座標へと向かった。

しかし、そこにあったのは焼け落ちた瓦礫の山と、未だに赤くくすぶる炎だけだった。

「危険——核放射能汚染区域」という巨大な警告看板が至る所に立てられていた。

すべての残酷な真実は、完全に葬り去られていた。政府は自らの手で、あらゆる犯罪の痕跡を——核爆発レベルの破壊によって消し去ったのだ。

「嘘よ! 全部嘘!」

ユウセインダーは拳を握りしめ、無力感に叫んだ。

「ここは明らかに核兵器研究施設なんかじゃなかったのに!」

アンフゥヒコが冷たい目で瓦礫を見つめながら言った。

「生き証人を根絶やしにするために、施設ごと爆破したのでしょう。」

ネーベルゼルが厳しい表情で低い声で言った。

「今、一番大きな疑問は……彼らの実験は成功したのか、失敗したのか、ということね。」


屋敷に戻った後、ユウセインダーは居間で他のメンバーたちの間に座っていた。

一人ずつ、過去に受けた天を貫くような痛みを、静かに語り始めた。

「私も人間が大嫌いよ。人間は私を中傷し、汚らわしい嘘で私に八つ当たりしたわ。」

ネーベルゼルが、うっすらと恨みを込めた声で言った。

「人間は生きている私を焼き殺したわ!」フアゼッシンが苦々しく語った。

「人間は最も残虐な方法で私を拷問した。」ディーススワノは目を固く閉じ、恐ろしい記憶を押し殺した。

「私は人間に裏切られた。」ギグュムが軽蔑の笑みを浮かべた。

「人間は私に注射をして、痛みで麻痺するほど苦しめたわ。」ダルジョアムーンが肩を震わせた。

「人間を知れば知るほど、ますます憎くなるわ。」ジョウセーレが冷たくまとめた。

「人間は銃を私に向け、徹底的に追い詰めて殺そうとした! 私を死ぬまで狩り続け、たとえ一人しか生き残らなくても決して許さない。」セイントリーシュは武器の柄を強く握った。

「私は生まれたばかりで、まだ息もしていなければ、自分が何かも理解していないうちに、追いかけられたわ。一人ではなく、大勢に。私の正体など関係ない。ただ存在しているだけで、彼らは私を滅ぼしたがった。」エルライビジンが冷たい声で囁いた。

アンフゥヒコは長い間沈黙した後、重く憂鬱で怒りに満ちた声で言った。

「私はあいつらに性的暴行を受け、犯されたわ。人間が大嫌い。ただ思い浮かべるだけで胸が苦しくて、息ができなくなるほど。」

そして最後に——ユウセインダーがゆっくりと顔を上げ、瞳に深い憎悪の光を宿して言った。

「私は人間を心の底から憎んでいます。信頼を徹底的に利用したあと、容赦なく殺そうとしたから。」

十人の少女、十通りの違う痛み。

しかし彼女たちは皆、同じ運命の呪縛を背負っていた。

——人間は決して変わらない。そして、彼らは誰からも信頼される価値などない。

その小さな屋敷の中で、復讐の同盟が正式に結成された。

それは、引き裂かれた人生と、人間世界に対する骨の髄まで染み渡る憎悪によって固く結ばれた同盟だった。


第5章 爆発後の生存者たち

2022年3月1日、火曜日。

テレビ画面では、煙と炎が空を覆う混乱の映像が絶え間なく流れていた。

「『天に打たれた国』が正体不明の怪人集団による激しい攻撃を受けています。政府は緊急に軍を派遣しましたが……現在の戦力では完全に圧倒されており、対応が追いついていません。」

煙が立ち込め、爆音が響き渡り、市民たちがパニックに陥って互いに踏みつけ合いながら逃げ惑う光景。

主はゆっくりとソファから立ち上がり、落ち着いた声で言った。

「助けに行くぞ。」

ユウセインダーは一瞬言葉を失い、憎しみがまだ冷めやらぬ瞳で言った。

「え……? どうして私たちがあいつらを助けるんですか? 人間は裏切り者のくせに?」

「主の命令だからよ。」アンフゥヒコが冷たく答え、彼女の周囲の炎が小さく揺れた。

エルライビジンが小さく頷いた。

「主の命令は絶対です。」

セイントリーシュは腕を組みながら言った。

「単純にそう考えればいいの。余計なことは考えない。」

主はネーベルゼル、フアゼッシン、そしてユウセインダーを連れて戦場へと急行した。

終末のような混乱した光景が、すぐに目の前に広がった。

彼らが最初に行ったのは、無辜の市民たちを危険区域から避難させることだった。

その時——瓦礫の山の真ん中で、一体の生物が突然足を止めた。

その生物はユウセインダーをじっと見つめていた。

アルファが低い、掠れた声で言った。

「……雷の姉さん……ですか?」

ユウセインダーは驚愕した。

すぐ隣にいたベータが大声で肯定した。

「間違いない……姉さんだ。」

ユウセインダーは警戒を解かず一歩近づきながら尋ねた。

「あなたたちは誰? どうして私のことを知っているの?」

ガンマが変形した頭を傾け、異様な声で言った。

「姉さん……あの恐ろしい実験で死んだんじゃなかったんですか?」

ユウセインダーの胸が激しく上下した。

「どうして……それまで知ってるの?」

デルタが重い声で言った。

「姉さんが気づかないのも当然です……僕たちの姿は、待合室で最初に会った時とはあまりにも変わり果てて、気持ち悪い姿になってしまいましたから。」

ユウセインダーは目を見開き、息を荒げた。

「……あなたたちは、あの時の実験の子供たち……?」

イプシロンが少し詰まりながら答えた。

「はい……僕たちです。」

戦場の空気が一瞬、重く淀んだ。

ユウセインダーは声を低く抑え、感情を堪えながら言った。

「私がどうして生きているのかは後で話すわ。今は教えて。……私が息絶えた後、彼らはあなたたちの体に何をしたの?」

イータがゴツゴツした皮膚が軋むほど拳を握りしめた。

「姉さんの体から雷のエネルギーをすべて抜き取った後……奴らはすぐに次の狂った実験を始めました。」

ユウセインダーが眉を寄せた。

「次の実験……?」

シータが憎悪の光を瞳に宿して説明した。

「ご存知の通り……現在、人類が持つ最強の破壊兵器は核兵器です。大国同士が互いに脅し合っています。だから……彼らは放射能汚染された環境でも生き残れる超戦士を作りたかったのです。」

ラムダが憤りを込めて続けた。

「奴らは姉さんのエネルギーを強制的に僕たちの体に注入し……その後、核兵器を研究所内で爆発させました。そしてその残酷な過程を何度も繰り返したんです。」

ミューが体を震わせながら一歩前に出た。

「その狂気の実験は結局、『優れた人間』を生み出すことに成功しました。僕たちは地震、火山、津波……そして核爆発の中心にいても生き残れるようになりました。」

オミクロンが続けた。

「しかし成功した瞬間、実験体である僕たちはすぐに反乱を起こし、科学者たちを皆殺しにしました。なぜならその過程で、僕たちはとても大切なものを失ってしまったからです……」

ユウセインダーは嫌な予感に震えた。

「……何を?」

パイが異形の頭を仰向け、苦しげに吼えた。

「人間の姿です。僕たちは目も鼻も耳もない、醜悪でゴツゴツした怪物に変わってしまいました。肌の色まで変わったんです。」

ローはゴツゴツした指で自分の厚い装甲に触れた。

「奴らはこの汚くて醜い姿を隠すために、僕たちにこの装甲を着せました。科学者どもがどんな化学物質を使ったのか知りませんが、この装甲は皮膚と肉体に寄生するように張り付き、もう二度と外せないんです。」

シグマが石が砕けるような低い声で言った。

「状況が手に負えなくなったと判断した政府は、すぐに全域を爆破する命令を下し、研究所ごと僕たちと科学者たちを葬り去ろうとした。非人道的な実験の秘密を外に漏らさないために。」

タウが狂ったように大笑いした。

「しかし皮肉なことに、奴らの実験は想像以上に成功しすぎた! あの核爆発は僕たちを殺せなかった。ただ、残虐な科学者どもを地獄に送っただけです。」

フィーが震える声で言った。

「僕たちは数百メートルもの土砂と放射能の中に何日も埋もれていました。」

カイが毒煙の立ち込める灰色の空を見上げた。

「どれだけの時間が経ったかわかりません……やっと土を掘って地上に出てこれたんです。」

プサイが拳を握りしめ、怒りに満ちて吠えた。

「そして僕たちが最初にやりたかったこと……それはあの独裁的な政府を破壊することでした。」

オメガがユウセインダーに近づき、まっすぐに見つめた。

「今度は姉さんの番です。どうして生き返れたんですか?」

ユウセインダーは深く息を吸って平静を取り戻した。

「今……私はもう『雷』という名前じゃありません。」

彼女は18体の変異した子供たちを見て、優しい声で言った。

「これからはユウセインダーと呼んで。」

彼女は遠くに立つ男性の方を見て続けた。

「私がここに生きて立てているのは……死神の手から私を奪い返してくれた人がいるからです。彼は何度も恐ろしい雷に打たれながらも、決して諦めませんでした。」

オメガは目を丸くして驚いた。

「この世に……そんな優しい人間が本当にいるんですか?」

ユウセインダーは誇らしげに微笑み、頷いた。

「それが私の主です。」

彼女は子供たち全員を見て、心に一筋の希望が灯った。

「そうだ……私には科学技術に非常に詳しい仲間がいるわ。もしかしたら……彼女ならあなたたちの元の人間の姿を取り戻す手助けができるかもしれない。」

プサイが感動で小さく震えた。

「本当ですか……? また人間に戻れるなら……それ以上嬉しいことはありません。」

ユウセインダーは首を軽く振り、過度な期待をさせないように言った。

「100%大丈夫とは約束できない……ただ、可能性はあるわ。」

その後、ユウセインダーは18体の変異体を連れて主の元へ急いだ。

主は何も言わず、即座に瞬間移動でギグュムを現場に呼び寄せた。

眩い光が瞬き、眼鏡をかけた博識の少女が現れた。

異形の変異体たちを見ても、ギグュムの目に恐怖や嫌悪の色は一切浮かばなかった。むしろ、深い共感と理解の光が宿っていた。

「私の研究室に来なさい。」

彼女は平坦だが安心感を与える声で言った。

「研究室」という言葉が出た瞬間、子供たちは本能的に体を震わせた。

カイが一歩後ずさり、怯えた声で言った。

「……また研究室に……?」

ユウセインダーがすぐに前に出て、温かく言い聞かせた。

「大丈夫よ、怖がらないで。彼女はいい人よ。姉さんを信じて。」

ネーベルゼルが静かに片手を天に掲げた。

すると四方から巨大な純白の雲が集まり、足元にゆっくりと降りてきた。

彼女は自らの力を操り、神々しい雲を操って一行全員を空に浮かべ、崩壊しきった戦場から、嘘に満ちた人間の世界から遠ざけていった。


第6章 嘘の上に築かれる安全

2022年3月2日、水曜日。

青い電子機器の光が満ちる研究室内で、ギグュムは眼鏡を軽く押し上げ、平坦でありながら重みのある声で言った。

「人間の姿を完全に取り戻す手助けはできるわ。」

短い沈黙の後、18人の子供たちから歓声と喜びの声が爆発した。

変形してしまった哀れな顔の上を、幸せの涙が伝っていった。

しかしギグュムの表情は微塵も変わらなかった。彼女は冷たく熱狂を打ち消した。

「ただし……絶対に忘れてはいけない条件がある。」

チが不安げに一歩前に出た。装甲の手が小刻みに震えていた。

「何か深刻な問題があるんですか、姉さん?」

ギグュムは子供の目を見つめ、一語一語を強調した。

「この生物学的逆転技術は、一度しか使えない。もし後でどんな理由であれ、自ら突変エネルギーを再活性化させて怪物に戻ってしまったら……二度と人間の姿には戻れなくなる。永遠にその醜い姿のままよ。わかった?」

ユウセインダーがそばに寄り、心配と厳しさを込めた目で子供たちを見渡した。

「みんな、姉さんに約束してくれる? 二度と『突変人間』の姿に戻らないって。」

アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、イータ、シータ、ラムダ、ミュー、オミクロン、パイ、ロウ、シグマ、タウ、フィー、チ、プサイ、オメガ——18人全員が迷いなく、力強く頷いた。

フィーが唇を噛みしめ、涙声ながらも固く言った。

「誓います。もう二度と、この醜くて気持ち悪い怪物の姿には戻りません。」

ギグュムは小さく安堵の息を吐き、ドアのところで腕を組んで立っている炎の少女に声をかけた。

「アンフゥヒコ、手伝って。姉さんはアルファからミューまでの9人を担当する。残りの9人はあなたにお願い。」

アンフゥヒコは小さく頷き、周囲の炎を穏やかな光に収束させた。

「わかりました。任せてください。」

放射能除去と細胞再構築のチャンバーが起動した。

機械の低い作動音とともに、柔らかな青い光が異形の体を包み込んだ。

人間の姿を取り戻す作業は、予想を遥かに超える成功を収めた。

寄生した毒性装甲が剥がれ落ち、ゴツゴツした皮膚が消え、かつての無垢で整った少年少女の顔が現れた。彼らはついに、人間の姿を取り戻した。


2022年3月3日、木曜日。

主はネーベルゼル、ディーススワノ、ダルジョアムーン、ジョウセーレと共に、子供たちをそれぞれの家まで護送した。

死んだと思われていた子供たちと家族の再会は、言葉にならないほどの感動に包まれた。

固い抱擁と嗚咽が、郊外の小さな家々に響き渡った。

アルファの家で、白髪の老父は我が子を信じられない目で見つめた。

「……政府から、研究所の核事故で息子は死亡したという緊急通知が来たはずだが……?」

アルファは父の手を強く握り、事前に決めた苦笑いを浮かべた。

「たぶん……書類上の手違いだと思うよ、父さん。」

父は涙を拭い、立ち上がろうとした。

「なら町の役場に行って、政府に訂正してもらわねば……」

「だめだよ父さん!」アルファが慌てて父の肩を押さえた。

その時、主が部屋の隅からゆっくりと歩み寄った。

彼は落ち着いた、信頼感のある声で言った。

「叔父さん、それは必要ありません。考えてみてください。放射能で死亡したと発表された子供たちが、何事もなかったように突然帰ってきたら、どれだけ不自然に映るか。僕たちは命がけで彼らを連れ帰りましたが、この情報が外に漏れたら——特に政府や裏の勢力に知られたら——アルファや他の子供たちの安全が深刻に脅かされます。」

主は少し間を置き、より厳しい口調で続けた。

「彼らは軍を派遣して子供たちを再び研究所に連れ戻すか、最悪の場合……口封じのために殺すかもしれません。今、アルファを守る最善の方法は、彼が政府の記録上『行方不明』または『死亡したまま』であることです。父親としてこの嘘を受け入れるのは辛いでしょうが、今はそれが息子を守る唯一の方法です。どうか信じてください。」

老父は呆然と立ち尽くし、肩を震わせた。

長い葛藤の末、彼は力なく頷き、再び涙を零した。

「……わかった。君の言う通りにする……ありがとう……本当にありがとう……死んだはずの息子を連れ帰ってくれて……」

他の子供たちの家族でも、同じ光景が繰り返された。

彼らの平穏は、甘い嘘の上に築かれるものとなった。

最後の子供であるオメガが無事に家族の元に戻ったことを確認した後、主とネーベルゼル、ディーススワノ、ダルジョアムーン、ジョウセーレは静かにその場を離れ、屋敷へと戻った。

今、彼らは外界の混乱に対処しなければならなかった。

主は、政府が「怪人」と呼ばれる存在(既にこの世に存在しない)を執拗に追っている状況を終わらせるため、決定的な行動を取る必要があると理解していた。

彼はコンピューターの前に座り、高度に暗号化された匿名書簡を政府最高機関に送った。

内容は簡潔だった。

「すべての突変人間は力を解除され、完全に消滅した。」

しかし、支配者たちの反応は彼の予想を裏切った。

政府は匿名書簡など完全に無視した。

最高司令部で、軍総司令官は作戦地図を叩きつけ、残忍で極端な目で叫んだ。

軍事掃討作戦はさらに大規模に継続された。

総司令官は無線で部下に厳命を下した。

「引き続き徹底的に捜索せよ! 草の根を残さず根絶やしにしろ!

もしあの怪物どもが逃げ延びて子孫を残せば、突変の血は国家全体の脅威となる。

どんな手を使っても、一匹残らず皆殺しにしろ!」


第7章 平和という名の罠

2022年4月1日、金曜日。

一ヶ月もの間、政府の徹底した掃討作戦は「海底の針を探す」ような徒労に終わっていた。

痕跡も、手がかりも残さず、18体の突変体はまるでこの世界から蒸発したかのようだった。

政府高官による極秘会議室は、張りつめた空気に包まれていた。

大統領が机を叩き、苛立ちを露わにした。

「本当にあの突変体どもは全滅したのか?」

首相が眉を寄せ、首を横に振った。

「死んだのなら遺体が見つかるはずだ。なのに、装甲の欠片一つ出てこない。」

その時、大統領首席顧問が眼鏡を軽く押し上げ、陰険な笑みを浮かべた。

「私が彼らをおびき寄せる良い方法を考えました。所詮、あいつらも鼻の穴の汚れも拭えないガキどもに過ぎませんからね。」

政府は直後、全メディアを通じて衝撃的な声明を発表した。

「怪人掃討作戦は終了。国家非常事態を全面解除する。」

大統領が驚いた顔で尋ねた。

「いきなりどうしてそんなことを?」

顧問は薄笑いを浮かべながら説明した。

「これで突変体どもは油断するでしょう。自分たちはもう本当に安全だと思い込めば、社会に戻りたがる。

そうすれば捕らえるのもずっと簡単になります。」

首相が冷たい目を光らせて頷いた。

「以前『死亡』または『爆発で行方不明』と発表された市民が、突然姿を現した場合、即座に特別監視対象リストに登録する。」


2022年4月10日、日曜日。

今日は政府が大々的に開催する国家行事——国際児童デー200周年記念大祭だった。

街はイルミネーションと花で飾られ、人々が祭りのように溢れかえっていた。

アルファたちの一団とその家族は、暗い実験室の日々を埋め合わせるように、祭りの賑わいに誘われて外に出てしまった。

しかし彼らは知らなかった。

政府のAI広域監視カメラが、フル稼働で彼らを捉えていたことを。

数秒後、司令センターの画面に赤い警告が次々と点滅した。

核事故で死亡が確認されたはずの人物が、街中を普通に歩いているというデータが飛び込んできた。

軍は即座に動員され、装甲車が電光石火で地域を包囲した。

関係のない一般市民を迅速に避難させ、広場一帯を完全に孤立させた。

そこに残されたのは、アルファたち——「死んでいるはずなのに生きている」とカメラに認識された者たちだけだった。

無数の銃口が彼らに向けられた。

警告も、説明の機会も与えられず、軍は容赦なく発砲した。

弾丸が空気を引き裂き、無実の家族たちに向かって降り注ぐ。

家族を守るため、アルファたちは選択の余地を失った。

彼らは苦痛に満ちた咆哮を上げ、再び人間の姿を捨て、鬼の血を強制的に活性化させて醜悪な怪人の姿へと戻った。

ギグュムの冷たい警告——「一度でも突変体に戻れば、二度と人間には戻れない」——を無視して。

「てめえらが俺たちを追い詰めたんだ!」

アルファが吼え、棘だらけの装甲が再び皮膚を引き裂き、体を覆い尽くした。

ベータが弾丸の前に立ちはだかった。銃弾は彼の体に当たると歪み、地面に落ちた。

彼は狂ったように笑い、目を燃やした。

「ただの銃弾で、核爆発を生き延びた俺たちを殺せるとでも思ってるのかよ!?」

監視画面越しにその光景を見た国防大臣は冷や汗を流し、慌てて大統領に報告した。

大統領は立ち上がり、息を荒げた。

「つまり……あの実験は完全に成功したというのか? 奴らは不死の兵器だ!」

国防大臣が厳しい声で言った。

「次なるご命令を。」

大統領は机に両手をつき、政治家特有の狂った野心を瞳に宿して言った。

「計画変更だ! 奴らを軍に勧誘し、その力を国家のために使わせろ。」

国防大臣は即座に大音量の拡声器で、アルファたちに傲慢な声で呼びかけた。

「大統領の命令を伝える! お前たちに最高の任務を与える。

世界中のすべての核兵器庫を破壊せよ!」

彼は汚らわしい脅しの笑みを浮かべた。

「任務を完遂して無事に帰還すれば、お前たちの家族の命と生活は保証する。

拒否するか失敗した場合、家族の命は即座に奪う。」

その時、副首相が装甲車の後ろから姿を現し、堂々と付け加えた。

「政府がこうするのは自国の利益だけではない。人類全体の核の脅威を排除するためだ。

お前たちは不本意ながら英雄になるだろう。世界の強国はお前たちを将来の脅威と見なし、排除しようとするかもしれない。

しかし、お前たちに選択権はない。」

アルファたちは激しく動揺した。互いに顔を見合わせ、無力感と板挟みの苦しみに苛まれた。

その息苦しい空気の中、落ち着き払った聞き覚えのある声が空から響いた。

「ここに英雄などいない。彼らは……ただの子供だ。」

アルファたちは一斉に顔を上げ、歓喜に表情を輝かせた。

彼らが心から崇める真の英雄——主——が現れた。

その後ろにはユウセインダー、ギグュム、エルライビジン、アンフゥヒコの姿があった。

ユウセインダーは軍隊を冷たい目で睨みつけた。

「この汚い話……セイントリーシュが『追い詰められて殺されかけた』話とそっくりね。」

ギグュムは眼鏡を押し上げ、淡々と続けた。

「私は人間を一度も信じたことがないわ。人間の心がどれほど卑劣かを知り尽くしているから。

だから前回の治療の時、わざと突変細胞を10%残して90%だけ除去したの。

いつか自衛のために必要になるとわかっていたから。……そして予感は的中したわ。」

エルライビジンが一歩前に出て、小さいが戦場全体に響く声で言った。

「世界の核兵器を本当に破壊したいなら、自分たちで体を張ってやればいいでしょう?

他人の家族の命を盾に取るなんて、卑怯よ。」

アンフゥヒコは腕を組み、首を傾げて意地の悪い質問を投げかけた。

「ねえ、基本的なことを知らないの?

この程度の細胞レベルで重度被曝した人間が……あとどれくらい生きられると思う?

彼らの余命はもう『日』単位よ。」

「なっ……!?」

その場にいた全員——政府側、突変体側、家族までもが驚愕の声を上げた。

アンフゥヒコは逆に驚いた顔をして言った。

「え? みんな本当に知らなかったの?」

ギグュムは平静に電子タブレットを掲げた。

「私は研究所の中核データシステムを復元し、数分前にその一部を実験データをSNSに公開したところよ。」

主が前に進み出て、18人の突変体とその家族を完全に守るように立った。

彼の視線は圧倒的な威圧感を放ち、周囲の兵士たちを震え上がらせて後退させた。

「よく聞け。

今すぐ全軍を撤退させろ。そして二度と——繰り返すが二度と——彼らの家族に指一本触れることすら考えるな。」

国防大臣は顔面蒼白になりながらも叫んだ。

「貴様ら……この国家に敵対する気か!?」

エルライビジンは彼を極度の軽蔑の目で見下し、きっぱりと言った。

「違うわ。私たちは国家に敵対しているのではない。

私たちはあなたたちの非人道性に敵対しているのよ。」

その言葉が終わると同時に、眩い光のオーラが主の一行と18人の突変体、そして彼らの家族を包み込んだ。

次の瞬間、全員は跡形もなく消え去り、政府側だけが広場に取り残された。

直後、事態は急変した。

ギグュムが公開した黒い実験記録と、子供たちを対象にした非人道的な実験映像は世界中に拡散された。

数時間のうちに、国内外で大規模な非難の嵐が巻き起こり、独裁政権は崩壊の危機に瀕した。


第8章 子供たちが使命を果たした時

2022年4月18日、月曜日。

広場での衝撃的な対決から一週間後、民衆の怒りの波は頂点に達し、残虐な独裁政権を完全に打倒した。

国家の名の下に非人道的実験を行っていた者たちは、すべて正義の裁きを受けた。

しかし、その勝利は決して完全な喜びをもたらすものではなかった。

突変した子供たちの残り少ない命が、ついに尽きようとしていた。

不可逆的な生物学的崩壊の影響により、18人の体が次々と輝く光の粒となり、静かに広大な虚空へと溶け消えていった。

その運命の別れの前で、主はただ黙っていた。

彼の両手は血がにじむほど強く握りしめられ、哀れな子供たちの命を救えなかった無力感に心が張り裂けそうだった。

主の苦悩を見て取ったアルファの老父がゆっくりと前に進み出た。

震える手を主の肩に置き、嗚咽を堪えながら言った。

「息子が光になって消えた時、俺はわかった。あの子は無駄死になどしていないと。あの子は人生の崇高な使命を見事に果たした。

残されたわずかな力で、最後までこの家族を守り抜いた。

お前さんが後悔したり自分を責めたりする必要はない……。

お前さんは俺たち親に、永遠の慰めをくれたんだ。自分の息子が怪物ではなく、英雄として旅立ったことを。」

ベータの母は瘦せた頰を伝う涙を拭い、言葉を続けた。

「お前さんはこの世の誰もが恐れてできなかったことを、勇敢にやってくれた。

どんなに辛い結末でも、お前さんのおかげで、私たちは一度でもう一度、産んだ我が子を抱きしめることができた。

心から……ありがとう。」

ガンマの父は、息子が消えた空間を見つめながら、低い声で言った。

「お前さんがあの日に現れなければ、俺たち家族は一生、息子が生きているのか死んでいるのかもわからないまま、苦しみ続けていただろう。

お前さんは子供たちに帰る道を与えただけでなく、残された俺たちに希望と愛をくれた。」

デルタの母は静かに首を振り、深い理解を込めた目で言った。

「誰もお前さんを責めたりしないわ。

お前さんが人間としてできる限りのことをしたのは、みんな知っている。

子供たちは自ら進んで親を守るために犠牲を選んだの。

それが一番勇敢で強い心の選択よ。」

「今はもうこの世にその姿はないけれど、優しく孝行な息子たちの記憶は、俺たちが目を閉じるその日まで、ずっと心の中に生き続ける。」——イプシロンの父が、声を詰まらせて言った。

エータの母は一歩近づき、主を敬う眼差しで見つめた。

「お前さんは名声や地位のためではなく、純粋な人間愛と慈悲のために戦った。

それは私たちが一生、胸に刻み続ける偉大なことよ。」

シータの父は頷き、旧政権が崩壊した広場の方を見つめながら言った。

「残虐な政府は倒されたが、お前さんはそれ以上に大きな記念碑を打ち立てた。

それは、人間の中にまだ善意が残っているという、絶対的な信頼だ。」

「この世でただ一人、あの哀れな子供たちを怪物ではなく、愛されるべき生身の人間として見てくれたのはお前さんだけよ。」——ラムダの母が涙を流しながら言った。

「そしてきっと、子供たちもお前さんのことを第二の父親のように思っていたわ。」

ミューの父は長いため息をついたが、顔はすっかり晴れやかになっていた。

「お前さんは親である私たちに、子供と正式に別れを告げる、かけがえのない機会を与えてくれた。

この価値がどれほど大きいか、誰にもわからないだろう。」

オミクロンの母はそこにいるすべての親を見回し、力強く言った。

「ここにいる私たち全員が、お前さんに一生恩義を感じ続けるわ。」

「もしこの世に、本当に『英雄』と呼ぶにふさわしい人間がいるなら、それは間違いなくお前さんだ。」——パイの父が断言した。

ローの母は涙に濡れた笑みを浮かべた。

「お前さんはすべての子供たちの命を救えなかったかもしれない。

でも、一番大切なものを救ってくれた。

それは、私たちの子供たちの人間としての尊厳と名誉よ。」

シグマの父は拳を握り、郊外でこちらを見ている幼い子供たちの方を見て言った。

「俺たちはこの伝説を、必ず次の世代に語り継いでいこう。

運命に抗った勇敢な子供たちと、最後まで彼らのために戦った偉大な男の物語を。」

夕陽が空を赤く染めるとき、主は重い足取りで小さな家に戻った。

彼の顔は虚ろで、肩には言い知れぬ悲しみと想いがのしかかっていた。

ネーベルゼルが静かに近づき、温かい手を主の肩に置いた。

彼女の声には、もう昔のような冷たさや辛辣さはなく、ただ優しさと深い理解だけがあった。

「主は精一杯やったわ。

一人で運命や、あの者たちが彼らの体に仕込んだ残酷な生物学的仕組みに抗うことなんて、できなかったのよ。」

フアゼッシンは窓枠に寄りかかり、悲しげな目で再建されつつある広い世界を見つめながら言った。

「子供たちは自ら家族を守ることを選び、そしてその死闘に勝ったの。

彼らの犠牲は決して無駄じゃない。

主が彼らに、人間としての最後のひと時と、勇気を与えてあげたのよ。」

ユウセインダーは主の腕を強く抱きしめ、熱い涙を頰に伝わせながら言った。

「主……。

地獄の実験室から生きて出られたのは私だけ。

主が命がけで私を救ってくれた。

私にとって、主はたった一人の、唯一の英雄です。

みんなを救えなくても、私の人生は救ってくれた。」

ギグュムは眼鏡を軽く押し上げ、いつもの落ち着いた現実的な口調で、しかし深い敬意を込めて言った。

「私たちの誰一人として、あの放射能実験の根源的な生物データシステムを変えることはできなかった。

彼らが自ら突変形態に戻って戦った瞬間、細胞の自己崩壊プロセスが起動したの。

主は彼らに、平穏な一ヶ月の家族団らんの時間を与えた。

それは奇跡に等しいことよ。決して失敗なんかじゃない。」

アンフゥヒコが一歩近づき、もう片方の手も主の肩に置き、力強い目で言った。

「彼らは無意味に消えたわけじゃないわ、主。

子供たちの旅立ちは、より良い新しい世界の基盤を残したの。

権力者たちの罪が明るみに出た基盤を。」

セイントリーシュは優しく微笑み、穏やかな声で言った。

「もう自分を責めないで。

残虐な政府は完全に倒され、暗黒の真実が全人類の前に晒された。

それができたのは、この世に主がいたからよ。」

主はゆっくりと顔を上げ、夕陽の光が差し込む部屋の中で自分を取り囲む十人の少女たちを見た。

彼の瞳に宿っていた激しい痛みは徐々に和らぎ、新たな決意に変わっていった。

傷ついた魂たちの同盟は、もはや憎しみだけで結ばれたものではなく、愛情と犠牲、そして真の正義を守る理想によって温められたものとなっていた。

雷の力を宿した子供たちの物語はここに終わりを告げた。

しかし、彼らが人間の尊厳を守るための旅は、今ようやく始まったばかりだった。

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