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リュカと初等教育  作者: 近衛翡翠


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反発

帝都リンベルへ戻ったリュカは、さっそく教育制度改革案の作成に取りかかっていた。


「まずは初等教育の充実。そして高等学校の新設、帝国大学の増設……。」


机いっぱいに広げられた書類を見ながら、ヘレナが眉をひそめる。


「高等教育は通るでしょう。大学へ子弟を送りたい貴族は多いですから。」


「問題は初等教育だね。」


リルが腕を組む。


「平民に文字を教えて得する貴族なんて、ほとんどいないよ。」


リュカは小さくうなずいた。


「分かってる。でも、だからと言って最初から諦めるわけにはいかない。」


「何か策があるんですか?」


マリーが尋ねる。


「全部を一度に通そうとは思っていない。」


リュカは帝国地図を机に広げた。


「まずは帝国直轄領と、僕の領地だけで学校を作る。」


「実験ですか。」


「うん。成果を見せれば、反対する理由も少なくなる。」


ヘレナは静かに笑った。


「最初から退路も考えていたんですね。」


「政治は理想だけじゃ進まないから。」


***************************


数日後、帝国議会。


「教育制度改革案を上程いたします。」


リュカが演壇へ立つと、議場はざわついた。


「まず初等教育の整備を——」


「平民に学問だと!」


一人の伯爵が机を叩く。


「文字など覚えたら税に口を出すぞ!」


「その通り!」


「学を付けた農民は畑へ戻らん!」


あちこちから賛同の声が飛ぶ。


リュカは動じない。


「文字を読めれば契約を理解できます。」


「だから困ると言っておる!」


議場が笑いに包まれた。


***************************


別の侯爵が立ち上がる。


「教師はどこにいる?」


「学校は誰が建てる?」


「財源は?」


矢継ぎ早の質問に、リュカは一つ一つ答えていく。


「教師は養成します。」


「学校は段階的に。」


「財源は——」


しかし最後まで言い終える前に、また怒号が飛んだ。


「理想論だ!」


「夢物語だ!」


議場の空気は、明らかに冷たかった。

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