反発
帝都リンベルへ戻ったリュカは、さっそく教育制度改革案の作成に取りかかっていた。
「まずは初等教育の充実。そして高等学校の新設、帝国大学の増設……。」
机いっぱいに広げられた書類を見ながら、ヘレナが眉をひそめる。
「高等教育は通るでしょう。大学へ子弟を送りたい貴族は多いですから。」
「問題は初等教育だね。」
リルが腕を組む。
「平民に文字を教えて得する貴族なんて、ほとんどいないよ。」
リュカは小さくうなずいた。
「分かってる。でも、だからと言って最初から諦めるわけにはいかない。」
「何か策があるんですか?」
マリーが尋ねる。
「全部を一度に通そうとは思っていない。」
リュカは帝国地図を机に広げた。
「まずは帝国直轄領と、僕の領地だけで学校を作る。」
「実験ですか。」
「うん。成果を見せれば、反対する理由も少なくなる。」
ヘレナは静かに笑った。
「最初から退路も考えていたんですね。」
「政治は理想だけじゃ進まないから。」
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数日後、帝国議会。
「教育制度改革案を上程いたします。」
リュカが演壇へ立つと、議場はざわついた。
「まず初等教育の整備を——」
「平民に学問だと!」
一人の伯爵が机を叩く。
「文字など覚えたら税に口を出すぞ!」
「その通り!」
「学を付けた農民は畑へ戻らん!」
あちこちから賛同の声が飛ぶ。
リュカは動じない。
「文字を読めれば契約を理解できます。」
「だから困ると言っておる!」
議場が笑いに包まれた。
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別の侯爵が立ち上がる。
「教師はどこにいる?」
「学校は誰が建てる?」
「財源は?」
矢継ぎ早の質問に、リュカは一つ一つ答えていく。
「教師は養成します。」
「学校は段階的に。」
「財源は——」
しかし最後まで言い終える前に、また怒号が飛んだ。
「理想論だ!」
「夢物語だ!」
議場の空気は、明らかに冷たかった。




