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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第5章『天界逆侵攻編』

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第61話:天界からの最終通告! 神々の王ゼウス降臨と、垂直都市の『立ち退き勧告』

 文化祭の翌朝。

 学園の校庭には、昨夜のフォークダンスの跡や、少しだけ散らかった飾りが残っていた。私は清掃ドローン(旧・機神クロノスの端末群)を指揮しながら、パンドラが淹れてくれた温かいお茶で一息ついていた。

「パパ、昨日は本当に楽しかったね! また来年もできるかな?」

「ああ、もちろん……」

 私が答えようとしたその瞬間、空の色が「不自然なゴールド」に染まった。

 雲が割れ、そこから巨大な『黄金の巻物』が、まるで超高層ビルの垂れ幕のように学園の正門前に向かってドサリと落とされた。

「……なんだ? 忘れ物か?」

 ルシファー様が欠伸をしながら現れる。しかし、その巻物に記された文字を見た瞬間、私の「管理人的な直感」が最悪の警報を鳴らした。


【聖域立ち退き勧告状】

通告者:全能の神ゼウス

対象:垂直都市の全住民、および不当に占拠されている『パンドラの箱』。

内容:本領域は天界の特別管理区域に指定された。48時間以内に全階層を解体し、パンドラを天界へ返還せよ。さもなくば、世界ごと『初期化リセット』する。


「……立ち退き、勧告?」

 私は思わず笑いそうになった。天界の王ともあろうお方が、まさか物理的な実力行使の前に「書類」を送ってくるとは。

 巻物が光を放ち、その中から一体のアバター(分身)が立ち現れた。

 眩い雷光を背負い、白い髭を蓄えた筋骨隆々の老人。かつてルシファー様を天界から追い落とし、上皇様を影に封じたとされる、神々の頂点――ゼウスだ。

「……久しいな、不浄の息子ルシファーよ。そして、しがない人間の管理人よ」

 ゼウスの声は、それだけで空間を震わせる「神の雷」そのものだった。

 パンドラが私の後ろに隠れる。ルルが威嚇するように影を広げるが、ゼウスは一瞥いちべつすらしない。

「世界はパンドラの箱によって乱れている。天界のことわりを外れた『垂直都市』は、もはや許容できぬ。管理人よ、貴殿にはそれ相応の『神の地位』を用意しよう。その少女を渡し、この醜い地獄の扉を閉じるのだ」

「……地位、ですか。それは有給休暇が取れて、胃薬が不要な職場でしょうか?」

 私が一歩前に出ると、ゼウスの眼光が鋭くなった。

「冗談はやめろ。……これは『命令』だ。貴殿のような脆弱な種族が、神の所有物を管理するなど、宇宙の調和が許さぬのだ」

 私はため息をつき、懐から『古びた魔導書』を取り出した。

 天界を逆侵略した際に得た膨大な因果、そして覇権戦争で吸収した全てのダンジョンの所有権。それらが、魔導書の中で黒い火花を散らす。

「ゼウス様。残念ながら、貴方の主張には『法的な根拠』がありません」

「何だと……?」

「第一に、本領域は『深淵法』に基づき、私が正当に所有権を継承しています。第二に、パンドラは天界から『不法投棄』されたのであり、所有権は既に放棄されています。第三に――」

 私は魔導書を高く掲げた。

「――この垂直都市には、貴方がたの『神の雷』すら届かない、独立した運営システムが構築されています。立ち退きを要求されるのであれば、まずはこちらの『慰謝料請求書:パンドラの12年分の養育費、および天界による精神的苦痛への賠償』をお支払いいただけますか?」

「……小癪な!! 人間の分際で、神に算盤そろばんを弾くか!!」

 ゼウスのアバターが激昂し、右手に巨大な雷の槍を形作った。


「……そこまでだ、親父」

 ルシファー様が、私の肩に手を置く。

 彼の背後には、上皇様、テュポーン様、そして再就職したクロノスや黒竜までもが、かつてないほど「冷え切った殺意」を湛えて並んでいた。

「パンドラは私の娘だ。貴様のような、娘を器としか見ない無能な王に渡す道理はない。……管理人、これ以上の交渉は不要だ。この老人に、『地獄の引越し代』がどれほど高いか教えてやろう」

「ほっほっほ……。神の王の髭、三味線の弦にするには少々硬そうじゃが、試してみる価値はありそうじゃのう」

「……パパ」

 パンドラが私の服をぎゅっと掴む。

「……パパ。あの人、神様なのに、ちっとも綺麗じゃない。……私、ここにいたい。パパと、みんなと一緒に、ここにいたい!」

 パンドラの声に、虹色の光が爆発した。

 その光はゼウスの黄金の輝きを容易く打ち消し、彼のアバターを「ただの古びたホログラム」のようにノイズまみれに変えていく。

「な、なんだこの光は……!? 器の力が、神性を上書きして……ぐわぁぁぁッ!!」

 ゼウスの幻影が霧散する直前、私は最後の一撃を叩き込んだ。

 管理権限を発動し、天界から送られてきた『黄金の巻物』に、特大の「受理拒否:送り主へ返送」のスタンプを刻印した。

「……ゼウス様、48時間も待つ必要はありません。今すぐこちらから、全階層主フルメンバーを引き連れて、貴方の『玉座』へ挨拶に伺います」

 黄金の巻物が空へと逆流し、天界の門を物理的に叩き割る音が響いた。

 私は眼鏡を直し、呆然としている学園の生徒たちと、やる気満々の魔王たちを見た。

「……さて、皆さん。どうやら有給休暇は、また先延ばしになりそうです。……垂直都市、全階層、戦闘配備バトル・ステーション。天界の王を『解雇』しに行きますよ」


【緊急クエスト:神殺しの事務作業】

目標:神々の王ゼウスの完全沈黙、および天界の全資産の強制収用。

備考:パンドラが「帰りたい」と言った場所が、唯一無二の『天国』であることを分からせてやる。


 垂直都市が、咆哮を上げながら上昇を始めた。

 それは管理人と魔王たちが贈る、パンドラへの「12歳の誕生日プレゼント」の最後の一幕だった。

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