↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第5章『天界逆侵攻編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/69

第60話:文化祭の夜と、忍び寄る天界の影……。パンドラの『箱』を巡る最終決戦の予感

 文化祭の最後を飾る後夜祭。学園の中庭では巨大なキャンプファイヤーが焚かれ、生徒たちが手を取り合って踊るフォークダンスの輪が広がっていた。

 私は、離れた時計塔のバルコニーから、その光景を静かに見守っていた。隣には、舞台衣装のままのルシファー様と、上皇様が並んでいる。

「……終わりますね。パンドラにとって、一生の思い出になる一日が」

「ふん。あの王子役の小僧と踊っているのが気に食わんが……まあ、今日のパンドラは最高に輝いていた。それを免じて、今夜だけは見逃してやろう」

 ルシファー様が、珍しく穏やかな表情でワインを口にする。だが、その平穏は唐突に、そして不遜な光と共に引き裂かれた。

 夜空が、まるで見開かれた「目」のように割れたのだ。

 そこから溢れ出したのは、祝祭の灯火を塗り潰すほどに不浄で、傲慢な黄金の輝き。

「――見つけたぞ。深淵の汚泥に塗れた『厄災の器』よ」

 空から降臨したのは、白銀の甲冑に身を包んだ、天界の過激派組織『神罰代行者』の長、熾天使メタリアス。背後には数百の武装天使が控え、学園全体を包囲するように魔法陣を展開し始めていた。


 地上では、楽しんでいた生徒たちが悲鳴を上げ、パンドラを庇うようにテオが前に出る。だが、熾天使の放つ圧倒的な威圧感プレッシャーに、少年は膝をつきそうになっていた。

「パパ! おじちゃんたち!」

 パンドラが空を仰ぎ、叫ぶ。

 その瞬間、時計塔の上にいた三人の男たちの空気が、絶対零度よりも冷たく、深淵よりも深く沈み込んだ。

「……管理人。今の状況を簡潔に説明しろ」

 ルシファー様の声から、一切の感情が消えた。それは彼が「育児」を始める前、神に叛旗を翻した当時の『魔王』のトーンだった。

「はい。……彼らはパンドラの文化祭の思い出を台無しにし、さらに彼女を恐怖させ、あろうことか後夜祭の『最高のクライマックス』に泥を塗りました」

「ほっほっほ……。わしがせっかく用意した特注の花火を上げる直前に、割り込んでくるとはのう。……これは、救いようのない『重罪』じゃな」

 私は管理端末を起動し、学園の防衛システムを「完全排除モード」へ切り替えた。


「『器』を返せ。さもなくば、この学園ごと焼き払……ッ!?」

 メタリアスが宣告を終える前に、彼の視界から「空」が消えた。

 気づけば、彼の眼前にルシファー様が浮遊していた。翼を広げることすらせず、ただそこに存在するだけで、熾天使の黄金の輝きを漆黒で侵食していく。

「貴様……天界を追放された敗北者か。汚らわしい手で聖なる……」

「――黙れ。パンドラの歌声の余韻が、お前の下卑た声で汚れる」

 ルシファー様が指をパチンと鳴らす。

 それだけで、メタリアスの背後にいた数百の天使たちが、一瞬にして自らの翼に絡め取られ、地上の影へと引きずり込まれた。ルルの影が巨大な口を開け、彼らを「一口」で飲み込んでいく。

「な、なんだと!? 我ら神罰代行者の守護結界を、一瞬で!?」

「守護結界? ……ああ、これのことか?」

 私が時計塔から杖を振る。

 管理権限を発動させ、天界の軍勢が展開していた魔法陣を、そのまま『垂直都市・第3階層:肥料加工場』への転送門へと書き換えた。

「悪いね、メタリアス君。君たちの魔力、今期の農作物の成長にちょうどいいんだ。……さあ、パンドラを怖がらせた代償を払ってもらおうか」

 だが、トドメを刺したのは魔王たちではなかった。

 地上でテオを支えていたパンドラが、一歩前へ出た。彼女の胸元の「箱」が、かつてないほど激しく、虹色の光を放つ。

「……あなたたち、私のパパと、おじちゃんたちを『汚らわしい』って言ったね」

 パンドラの声が、学園全体に響き渡る。それは慈愛に満ちた聖女の声ではなく、世界の理を司る『パンドラの箱』の所有者としての宣言。

「せっかくみんなで作ったお祭りを、こんな風に壊す人は……私が許さない!」

 虹色の光が天に昇り、メタリアスの白銀の甲冑を、一瞬で「ただの粘土」へと変質させた。権能の格が違いすぎた。

 武装を失い、空中で無様にジタバタする熾天使を、テュポーン様が崖下から伸ばした触手で捕らえ、そのまま海中へと引きずり込んでいった。

 天界の侵略は、わずか三分で終了した。

 空の割れ目は修復され、代わりに上皇様が合図を送る。

 ヒュゥゥゥゥ……、ドンッ!!

 夜空に大輪の花火が咲き誇る。

 生徒たちは、今のが「演出の一部」だと思い込み、再び大きな歓声を上げた。

「……パパ! おじちゃんたち! 大丈夫だった?」

 駆け寄ってくるパンドラ。その笑顔は、いつもの無邪気なものに戻っていた。

「ああ、もちろんだよ。……さあ、祭りの終わりだ。パンドラ、最後の一曲を踊っておいで。……パパたちは、ここで見ているからね」

 私は、テオの元へ戻っていくパンドラの背中を見送りながら、深いため息をついた。


【戦報:学園後夜祭・防衛戦】

勝者:終焉の垂直都市(パパ同盟)

戦果:熾天使メタリアス以下、天界過激派を完全捕獲。全員、第3階層にて「一生分のタマネギの皮剥き」に従事。

管理人のメモ:パンドラが怒ると魔王より怖いことが判明。教育方針の再考が必要か?


しかし、天界の動きはこれで終わりではなかった。

 メタリアスの襲撃は、より巨大な「神の計画」の端緒に過ぎないことを、私はまだ知らなかった。

更新通知を受け取りたい方は、ぜひブックマークをお願いします!

「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。