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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第5章『天界逆侵攻編』

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第59話:波乱の文化祭! パンドラの演劇ヒロインと、衣装担当・ルシファー様の暴走

 聖アウレオール魔法学園が一年で最も活気づく行事、それが「光輝祭こうきさい」――いわゆる文化祭だ。

 校内は魔法の飾り付けで彩られ、出店の準備に奔走する生徒たちの笑い声が絶えない。そんな平和な光景の中、私は管理事務所でパンドラから衝撃の報告を受けた。

「パパ! 私、クラスの出し物の劇で、ヒロインの聖女様役に選ばれちゃった!」

 その瞬間、執務室にいた「最強の過保護軍団」の動きが止まった。

「……演劇だと? パンドラが、舞台の上で、数多の観衆にその美しさを晒すというのか」

 ルシファー様がワイングラスを置き、ゆっくりと立ち上がる。

「ほっほっほ、それはめでたい。……しかしパンドラ、聖女の衣装は用意してあるのか? 学園の予算で作ったようなボロ布を、お主に着せるわけにはいかんのう」

「えっ、でも、衣装係のみんなで作るって……」

いな!!」

 ルシファー様の断じが、執務室の窓ガラスを震わせた。

 

「我が愛娘が纏う衣が、凡俗の手によるものなど断じて許さぬ。パンドラ、その役……この私が、全宇宙で最も気高く、最も美しい『真の聖女』へと仕立て上げてやろう」


 数日後。学園の演劇部の部室は、もはや「異界」へと変貌していた。

 私は管理端末を叩きながら、あまりの光景に目眩を覚えた。

「ルシファー様、そのドレス……布地が『天界の最高級絹』なのは百歩譲っていいとして、なぜスカートの裾に『対消滅防御魔法』が編み込まれているんですか?」

「ふん、舞台上で不測の事態(物理攻撃)があったらどうする。これは衣装ではない。パンドラを守る『絶対不可侵の礼装』だ」

 ルシファー様は六本の魔力を帯びた手を影から出現させ、超高速で針を動かしている。

 隣では、機神クロノス(現・清掃主任)が、部室の片隅に設置した巨大な演算装置と格闘していた。

「照明および特殊効果の担当として進言。……パンドラの登場シーンにおいて、太陽光のスペクトルを20%強化。さらに、劇のクライマックスでは私のサブ・プロセッサを同期させ、リアルな『隕石落下メテオ』を投影……いえ、実際に落とします」

「落とさないでください! 舞台演出で更地を作るつもりですか!」

 さらに演出担当の上皇様は、脚本を真っ赤に書き換えていた。

「管理人よ、この脚本はなっとらん。なぜ聖女が最後に死なねばならんのだ? パンドラが悲しむ結末など認めん。……よし、この中盤で『深淵の軍勢』が突如現れ、悪役を全員呪い殺した後に、パンドラを女王として戴冠させる流れに変更じゃ」

「それ、もはや学園演劇じゃなくて『垂直都市のプロパガンダ』ですよ!」


 そんなカオスな制作現場に、運悪く台本の確認に来たのが、パンドラの相手役――王子様役を務めるテオ君だった。

「あ、あの……パンドラさん、衣装のサイズ合わせに……」

 テオが部室のドアを開けた瞬間。

 ルシファー、上皇、クロノス……そして天井の影で待機していたルルの殺気が、一点に集中した。

「……貴様か。パンドラを誘惑し、舞台上で愛を囁こうなどという不届きな『王子』は」

 ルシファー様が、裁ち鋏をチャキリと鳴らす。

「ほっほっほ。……テオ君と言ったかの。お主、舞台で噛んだりしたら、その瞬間に舌がカエルのそれになる呪いをかけてやろうか?」

「ヒ、ヒィィィッ……!」

『……テオ。……パンドラ、泣かせたら。……ルルが、胃薬、あげる。……(意味:食べてあげる)』

「みんな、やめて!! テオ君、ごめんね、みんなちょっと熱が入っちゃって……!」

 パンドラが慌てて割って入るが、テオの顔色はもはや「絶望セーブ」が発動しそうなほど真っ白だった。


 そして文化祭当日。

 学園の講堂を埋め尽くした観客の前に、ついに「聖女パンドラ」が現れた。

 彼女が舞台に立った瞬間、会場の空気が一変した。

 ルシファー様が徹夜で仕上げたドレスは、周囲の魔力を吸収して虹色に輝き、彼女の美しさを次元の壁を超えて増幅させている。クロノスによる「神がかったライティング」は、もはや彼女の背後に後光が差しているようにしか見えない。

「(……やりすぎだ。絶対にやりすぎだけど……)」

 私は最前列で、手に汗握りながら見守った。

 脚本こそ、私が死に物狂いで修正して「ハッピーエンド(魔王乱入なし)」に留めたが、演出の迫力は完全に学園レベルを超越していた。

 劇の終盤、パンドラが平和を祈る歌を歌い始めたとき。

 彼女の胸元の「箱」が共鳴し、観客席に優しい光の花びらが舞い散った。それは魔法や技術ではない、彼女自身の心の輝きだった。

「……パパ、見ててね」

 舞台上から一瞬、こちらに向けられた視線と微笑み。

 その瞬間、私の隣で「ふん、まあまあの出来だ」と強がっていたルシファー様の目から、一筋の光るものが流れたのを、私は見逃さなかった。


【通知:学園演劇「深淵の聖女」無事終了】

【観客の反応:全員がパンドラの信徒へと改宗する勢い】

【王子役テオのステータス:九死に一生を得たが、魔王たちの顔がトラウマに】

【管理人の一言:衣装代の領収書をどうやって経理に通せばいいのか、誰か教えてください】


「パパ! 私、上手にできたよ!」

 舞台を終え、制服に着替えたパンドラが駆け寄ってくる。

 その笑顔があれば、どんな予算オーバーも、魔王たちの暴走も、報われる気がするのだった。

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