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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第5章『天界逆侵攻編』

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第56話:卑劣な罠と、偽りの再会!? 対決・勇者殺しの迷宮! 管理人の怒りと、パンドラの真の覚醒

 『機械仕掛けの要塞』を洗濯センターへと変え、私たちは最後の決戦場へと足を踏み入れた。

 三つ目の接合領域、『勇者殺しの迷宮』。

 そこは前の二つとは異なり、薄暗い霧が立ち込める、どこか見覚えのある「人間の村」の風景を模していた。

「……嫌な空気だ。ルシファー様、パンドラを中央に」

「言われるまでもない。この階層、腐った人間の精神の臭いがする」

 ルシファー様が不快そうに鼻を鳴らす。

 霧の向こうから、一人の男が拍手をしながら現れた。この迷宮の管理者、『狡猾なるマルファス』だ。彼は他の二人のように武力や論理を誇示せず、卑屈な笑みを浮かべていた。

「いやあ、素晴らしい! 竜をペットにし、機械を錆びさせるとは。ですが管理人さん、貴方は肝心なことを忘れている。……その少女、パンドラは『人間』によって捨てられたのだということをね」

「……何が言いたい」

 私の声が一段と低くなる。マルファスは指を鳴らした。

 すると、霧の中から二人の男女がふらふらと歩み寄ってきた。身なりは貧しいが、その顔立ちは……驚くほど、パンドラの面影を宿していた。

「パンドラ……ああ、私たちのパンドラ! 探した、ずっと探していたんだよ!」

「ごめんね、あの時は村を救うために君を供え物にするしかなかったんだ……。さあ、一緒に帰ろう。魔物だらけのこんな場所、君には相応しくない!」

 パンドラが目を見開き、息を呑む。

 彼女の銀色の髪が震え、胸元の「箱」が、不安に呼応するようにドクンと不規則に脈打った。

「パパ……あの人たち、私の……?」

『……パパ。……あの人たち、嘘の匂いがする。……ルル、噛みちぎっていい?』

 ルルが影を逆立てるが、マルファスは勝ち誇ったように叫ぶ。

「無駄ですよ! それは彼女の記憶と血脈から引き出した『真実の幻影』だ! パンドラよ、お前を愛しているのはその偽りの父親(管理人)ではない、この両親だ! さあ、彼らの手を取れば、この苦しい戦いから解放してやろう!」

 パンドラが、迷いながらも一歩、偽の両親へと歩みを進める。

 ルシファー様が、そして上皇様が、怒りのあまり世界を滅ぼさんばかりの魔力を膨らませた。

 だが、それよりも早く。

 私が、一歩前へ出た。

「……マルファス。君は、一つだけ大きな間違いを犯した」

 私は手に持っていた管理端末タブレットを、あえて地面に叩きつけ、粉砕した。

「な、何をしている!? 端末を捨ててどうする気だ!」

「……私は、このダンジョンの均衡を守るために『普通の管理人』を演じてきた。魔王たちの暴走を抑え、予算をやりくりし、娘に普通の生活をさせるためにね。……だが」

 私の周囲の空間が、ガラスが砕けるような音を立てて剥離し始めた。

 懐から取り出したのは、天界から持ち帰った『古びた魔導書』。それが黒い炎を上げて燃え上がり、私の右手に「深淵の法」を司る漆黒の杖として再構成される。

「――娘の心を、安っぽいトラップの道具にした。その一点だけで、君という存在はこの宇宙の法から『消去』されることが決定した」

 私の背後に、垂直都市の全階層を足したよりも巨大な「天秤」の幻影が浮かび上がる。

 私はもはや事務員ではない。この世の絶望を管理し、神々さえもシステムの一部として飼い慣らす、『深淵の執行者アドミニストレーター』の真の姿だ。

執行開始オーダー。……マルファス、君の迷宮を『ゴミ箱』へ。君の魂を『永劫のデバッグ作業』へ転送する」

 私が杖を軽く地面に突いた瞬間、迷宮の霧が、偽の両親が、そしてマルファスの絶叫さえもが、塵となって消滅していった。

 それは武力でも魔力でもない。この世界の「設定」そのものを書き換える、絶対的な管理権限の行使だった。

「ひ、ひぎゃあああああああ!? 権限が……私の存在権限が、抹消されてい、く……!」

 マルファスが消え去った後、後に残ったのは、呆然と立ち尽くすパンドラと、静まり返った審議場だった。

 私は本来の「事務服」の姿に戻り、砕けた端末の代わりに魔導書を閉じた。

 パンドラのもとへ歩み寄り、彼女の震える肩を優しく抱き寄せる。

「パパ……ごめんなさい。私、あんな見え透いた罠に……」

「謝らなくていい。君が家族を想うのは、君の心が優しい証拠だ。……でもね、パンドラ。君を捨てた過去に価値はない。君が今ここにいて、私たちが君を愛している。それだけが、この世界の唯一の『確定事項』だよ」

『……パンドラ。……ルルも、いる。……じーじも、おじちゃんも、みんな、パンドラ、大好き』

 ルルがパンドラの足にすり寄り、ルシファー様が不器用そうに彼女の頭に手を置いた。

「……ふん、管理人に美味しいところを持っていかれたな。だが、まあよい。……パンドラ、あの羽虫が言ったことは忘れろ。貴様の親は、ここにいるこの『しがない男』だ」


【通知:深淵覇権戦争・最終試合】

勝者:終焉の垂直都市

戦果:全ダンジョンを制圧・吸収。垂直都市は『唯一無二の深淵聖域』へと昇格しました。

管理人のメモ:本気を出したせいでスーツが破れた。経費で落とせるか、後でルシファー様に相談すること。


 こうして、10年に一度の覇権戦争は、一人の「父親」の逆鱗によって終結した。

 しかし、全ダンジョンを統合してしまったことで、垂直都市(わが家)の規模はとんでもないことになってしまい……。

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