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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第5章『天界逆侵攻編』

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第41話:パンドラ、12歳の誕生日と『消えたパパ』

 垂直都市ダンジョンに、祝祭の鐘が響き渡っていた。

 今日はパンドラの12歳の誕生日。赤ん坊だった彼女が、今や銀色の髪をなびかせ、少し大人びた表情を見せる少女へと成長した。

「パパ! 見て、ルシファーおじちゃんが作ってくれたドレス、とっても可愛いよ!」

 鏡の前でくるりと回るパンドラ。その姿は、かつての「厄災の器」という呼び名を忘れさせるほど、希望に満ち溢れていた。

 だが、その問いかけに応じる声は、どこからも返ってこなかった。

「……パパ?」

 いつもなら「ああ、世界で一番似合っているよ」と、少し照れくさそうに笑うはずの管理人の姿が、執務室のどこにもなかった。

 異変に気づいたのは、パンドラだけではなかった。

「……おかしい。管理人の魔力反応が、このダンジョンの全階層から消失している」

 豪華な正装に身を包んだルシファー様が、険しい表情で執務室に踏み込んできた。その後ろには、顔色を変えた上皇様と、不安そうに周囲の影をパクパクと食べているルルがいた。

「堕天使よ、冗談はやめろ。あやつはこの垂直都市の『心臓』も同然。管理人がいなければ、階層間の因果律が崩れ、魔物共が暴走を始めるぞ」

「……冗談であってほしいのは私の方だ、上皇。……見ろ、管理端末スマホが『管理者不在』の警告を発している」

 デスクの上に置かれたタブレットには、血のような赤文字でメッセージが点滅していた。


【緊急警告:管理権限が凍結されました】

【原因:管理人の魂が、現世・冥界・深淵のいずれの観測範囲からも離脱しました】

【絶望セーブ:現在、管理人の生存確率は 0.0001% です】


「うそ……パパが、死んじゃったの……?」

 パンドラの声が震える。

 その瞬間、ダンジョン全体が鳴動した。パンドラの感情の乱れに呼応して、封印されていた「箱」の力が漏れ出し、周囲の空間がひび割れ始める。

『……パパ。……匂い、しない。……どこ? ……パパを、連れて行ったやつ……ルルが、全員、噛み砕いて、飲み込む』

 ルルの姿が、巨大な虚無の獣へと変貌していく。彼女の「飢え」は、父を奪われた悲しみによって「破壊の衝動」へと変わろうとしていた。

「待って、ルルちゃん!」

 パンドラが、暴走しかけたルルの首元を強く抱きしめた。

 虹色の光がルルを包み込み、その荒ぶる魔力を鎮めていく。

「パパは、死んでない。私にはわかるよ……。パパは、誰かに連れて行かれたんだ。……天界の、もっと奥。私を『厄災』だって言った、あのおじさんたちのところに」

 パンドラが顔を上げた時、その瞳にはもはや涙はなかった。

 12歳。それは、少女が「自らの意志」で運命を切り開く年齢。

「ルシファーおじちゃん、じーじ。……パパが帰ってくるまで、私が『仮の管理人』をやる。……そして、パパを捕まえた悪い人たちに、私が最高に怖い『めっ!』を言いに行くから!」


 管理人のいない垂直都市。

 最強の魔王たちは、パンドラの背中に「かつての神々をも恐れさせた女王」の片鱗を見た。

「……よかろう。管理人がいない間、この垂直都市は貴女の庭だ。パンドラ、我ら魔王軍を好きに使うがいい。……天界を更地にする準備は、既にできている」

「ほっほっほ……。ようやく面白くなってきたのう。管理人の救出、そして天界の崩壊。……これぞ、最高の誕生会ではないか」

【ログ:管理人の消失を確認。第5章『天界逆侵攻編』が開始されました。】

【獲得ポイント:+100,000,000P(パンドラが味わった『唯一の理解者を失った絶望』と、それを力に変えた『覚醒』より)】

【パンドラのステータス:称号『暫定管理人』『深淵の守護女王』を習得。】

【管理者コメント(自動返信):……パンドラ、ごめんね。少しの間だけ、お留守番をお願いするよ。……君が迎えに来てくれるのを、信じているから】

 管理人の残した最後の一行が、パンドラの心の中で強く光った。

 少女と魔王たちの、天界への「逆襲」が今、始まる。

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