第22話:真夜中の時計塔! 暴かれるパンドラの『中身』と、ブチ切れた過保護軍団
学園の時計塔が深夜の零時を告げる。
静まり返った石造りの塔の最上階、そこには一人の男が立っていた。純白の法衣を纏い、背後に薄らと後光を背負った男――天界直属の審問官、ザドキエルである。
「来たか、『災厄の器』よ」
螺旋階段を登ってきたのは、パンドラ。そしてその影にぴたりと張り付くルルだった。
「おじさん、だぁれ? 昼間の手紙、パパには内緒にしてきたけど……パパを悲しませるようなことなら、私、怒っちゃうよ?」
「くくく……。何も知らぬとは幸福だな。貴様の中に眠る『パンドラの箱』。それが開かれた時、この世界は絶望に塗り潰される。貴様は希望などではない、神が用意した『リセットボタン』なのだよ」
ザドキエルが聖なる杖を掲げると、時計塔の中に巨大な魔法陣が展開された。パンドラの身体から、ドロリとした漆黒の魔力が溢れ出し、彼女の意思に反して空中に「箱」の形を形成し始める。
「……あ、あぐっ……。何、これ……身体が、熱い……」
『……お姉ちゃん! ……おじさん、痛いの、ダメ。……ルル、おじさん、食べる……!』
ルルが牙を剥こうとしたその時、ザドキエルが冷笑した。
「無駄だ。これは対魔王用の特化結界。貴様らのような泥に塗れた存在では指一本――」
バキィィィィィィィンッ!!!
男の言葉を遮り、時計塔の外壁が「物理的に」粉砕された。
過保護軍団、推参
「――ほう。私のパンドラに『泥』と言ったか? その舌、根元から素粒子レベルで消滅させてやろう」
砕けた壁から入ってきたのは、漆黒の教員スーツを完璧に着こなしたルシファー様だった。その背後には、虚空から現れた上皇様と、窓枠をミシミシと踏み潰すフェンリル(大型犬サイズだが威圧感は銀河級)が並んでいる。
「お、お前たち、なぜここに!? 結界は完璧だったはずだ!」
「結界? ああ、あの薄っぺらい膜のことか。あまりに脆いので、私の鼻息で霧散してしまったよ」
ルシファー様が、冷徹な笑みを浮かべながら一歩踏み出す。
「パンドラ、目をつぶっていなさい。これは『教育』ではない。ただの『害虫駆除』だ」
「待て、ルシファー。この男、パンドラの『中身』について何か知っているようだ。……じーじが少しだけ、魂を1000年ほど弄って吐かせてやろう」
上皇様が扇子を開くと、周囲の空気が一瞬で腐敗し、怨念の霧がザドキエルを包囲した。
「皆さん、ストップ! 学園の重要文化財をこれ以上壊さないでください!」
私は、壊れた壁から管理用タブレットを手に滑り込んだ。
「パパ! 助けて、なんだか胸が苦しいの……!」
パンドラを抱き寄せ、私はタブレットの管理画面を操作する。彼女の体内で暴走しかけていた「箱」の魔力を、強制的にダンジョンの『遺失物フォルダ』へと隔離・セーブした。
「大丈夫だよ、パンドラ。……さて、ザドキエルさん。天界のやり方は相変わらず強引ですね。彼女は今、私の『管理下』にあります。勝手なシステムの再起動は認められません」
「貴様……ただの人間が、神の審判を邪魔するのか!」
「人間ですよ。ただし、娘の寝顔を守るためなら、神様の仕様書を書き換えるくらいは厭わないタイプの管理人です」
私が合図を送ると、背後のルシファー様たちの魔圧が最大出力に達した。時計塔がミシミシと悲鳴を上げ、天界の審問官は恐怖で腰を抜かし、泡を吹いて気絶した。
数分後。崩壊した時計塔の頂上で、私たちはレジャーシートを広げていた。
「パパ、私……やっぱり、怖かった。私の中に、世界を壊すものが入ってるの?」
「パンドラ、いいかい。中身が何であれ、それをどう使うかを決めるのは君自身だ。それに、もし君が『世界を壊しちゃいそう』になったら、パパもおじちゃんたちも全力で、その世界を君が壊しやすいように整えてあげるから」
「……それ、励ましになってないよ、パパ」
パンドラがクスリと笑った。その横で、ルルがザドキエルの持っていた「聖なる杖」をバリバリと音を立てて完食していた。
『……これ、意外と……おいしい。……ミントの、味……』
【ログ:天界の審問官を捕獲。時計塔の修復費用が発生。】
【獲得ポイント:+800,000P(神の使いが味わった『絶望』より)】
【パンドラのステータス:スキル『箱の片鱗(一部解放)』を習得。】
【管理者コメント:天界が本格的に彼女を『リセットボタン』として認識し始めたようです。明日の授業参観……もとい、学園防衛戦が忙しくなりそうですね】
「パパ、明日のお弁当は卵焼き多めにしてね!」
「分かったよ。……ルシファー様、その審問官は地下の『特別独房』へ。上皇様、学園全体の記憶処理をお願いします」
「ふん。パンドラの笑顔を守るためだ、安い御用だよ」
夜の学園に、最強の家族の笑い声が響く。
天界との全面対決は、もうすぐそこまで迫っていた。
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