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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第2章:見習い管理人編

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第19話:地獄の姉妹喧嘩!? ルルの反抗期と、パンドラ涙の鉄拳制裁!

 垂直都市の管理事務所に、かつてない不穏な空気が流れていた。

 ルシファー様が優雅に淹れたはずの紅茶が震え、第1階層の竹林からはざわざわと竹が擦れ合う「恐怖の音」が聞こえてくる。

「……パパ。ルルちゃんが、私の大事なものを食べちゃったの」

 パンドラが、目に涙を溜めて私の服の裾を引いた。

 彼女の手には、ボロボロになった「運動会の金メダル(折り紙製)」が握られていた。パンドラが私やおじちゃんたちとお揃いで作った、宝物だ。

『……お、ねぇちゃん……うるさい。……あれ、おいしそう、だったから……。ルル、悪くない……全部、食べたい……』

 対面に立つルルは、頬を膨らませてそっぽを向いていた。

 普段はパンドラの後ろを付いて回る健気な妹分だが、今日は「暴食」の本能が強く出ているのか、それとも魔王特有の「反抗期」が早すぎるのか、言葉に刺がある。

「ルルちゃん、ダメって言ったでしょ! それは食べちゃいけない『思い出』なんだよ!」

『……オモイデ、いらない。……ルル、もっと、強い力、食べたい。……おねえちゃん、邪魔……!』

 その瞬間、ルルの影がドロリと広がり、巨大な「顎」となってパンドラに襲いかかった。

第3階層:大激突

「大変だ! パンドラとルルが第3階層の『絶望食堂』で殺りあっているぞ!」

 ベルゼブブおじさんの叫び声が響く。

 私が駆けつけると、そこはもはや食堂ではなかった。

 パンドラの漆黒の翼から放たれる「拒絶の光」と、ルルの変幻自在な「暴食の触手」が激突し、周囲の空間がガラスのように砕け散っている。

「待て! 二人とも、やめなさい!」

 私が仲裁に入ろうとすると、横からルシファー様が腕を掴んで止めた。

「待て、管理人。これは……彼女たちに必要な通過儀礼だ。魔王の血を引く者が真の絆を結ぶ時、言葉など不要。拳(魔力)で語り合うしかないのだ」

「じーじも同感よ。……しかしパンドラ、あの足捌きは教えておらんが……さてはフェンリルに教わったな?」

 魔王たちが過保護を忘れて見守る中、喧嘩はクライマックスを迎えていた。

 ルルの触手がパンドラの肩をかすめ、ドレスのレースが千切れた。

 パンドラの動きが一瞬止まる。彼女の瞳から、ボロボロと大きな涙が溢れ出した。

「……ルルちゃんの、ばかぁぁぁ!!」

 パンドラが地面を蹴った。

 それは魔力による攻撃ではない。ただの、全力の「突撃」だった。

 驚愕するルルの懐に飛び込み、パンドラはその小さな拳を振り上げた。

「これもお仕事! これもお姉ちゃんの役目なんだからっ!!」

 ドゴォォォォォォォォォン!!!

 パンドラの拳がルルの額に直撃した。

 アザトース様直伝の「次元の重み」を乗せた一撃――通称『お姉ちゃんの鉄拳制裁』。

 ルルの擬態が耐えきれず霧散し、彼女は元の「黒いぷにぷにした塊」に戻って床を転がった。


 静寂が訪れる。

 パンドラは拳を握ったまま、わあわあという声を上げて泣きじゃくった。

「う、うえぇぇん! ルルちゃんのバカ! メダル、また一緒に作ろうと思ってたのにぃ!」

 その泣き声を聞いて、床に転がっていたルルが、ゆっくりと人の形に戻った。

 彼女の紫の瞳には、パンドラと同じように涙が溜まっていた。

『……ねぇ、ちゃん……。……ごめん、なさい……。……ルル、お腹、空いて……おねえちゃん、大好き、なのに……意地悪、した……』

 ルルがトコトコと歩み寄り、パンドラの服を掴む。

 パンドラは泣きながらも、ルルをぎゅっと抱きしめた。

「もう……次は、メダルじゃなくて、パパが作る特大オムライスを食べようね?」

『……うん……。……ルル、お姉ちゃんと、一緒……食べる……』

管理事務所:夕暮れ

 その日の夕食。管理事務所のテーブルには、仲良く並んでオムライスを頬張る二人の姿があった。

「パパ、見て! ルルちゃん、ピーマンも食べられたよ!」

『……にがい……けど、お姉ちゃん、見てるから……食べる……』

 私は二人の頭を同時に撫でた。

 ボロボロになった食堂の修理見積書(ベルゼブブからの請求)を見て胃が痛むが、この平和な光景には代えられない。

「ルシファー様。通過儀礼は終わったようですよ。……修理費、少し持ってくれますか?」

「ふん、貸しにしておこう。……だが、あの『鉄拳』。あれは将来、私でも防げそうにないな」

 ルシファー様が苦笑いしながら、パンドラが新しく作った「ルル用」のメダルを眺めていた。

【ログ:姉妹喧嘩が終結。絆の強さが+100されました】

【獲得ポイント:+40,000P(食堂崩壊による絶望……を上回る、魔王たちの『尊い』という歓喜より)】

【パンドラのステータス:スキル『お姉ちゃんの鉄拳』を習得】

【管理者コメント:ルルが反抗期を終えたようで安心しましたが、パンドラのパンチ力が確実に上がっています。怒らせないように気をつけよう……】

「パパ、明日はルルちゃんと一緒に、お外で綺麗なお花を摘んでくるね!」

 パンドラの笑顔は、今日も地獄の隅々まで「希望」という名の光で照らしていた。

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