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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第2章:見習い管理人編

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第15話:パンドラの家出!? 初めての『冒険』と、パニックの過保護軍団

 それは、運動会の翌日のことだった。

 自分の首にかけられた手作りのメダルを、何度も、何度も、壊れ物を扱うように指でなぞっていたパンドラが、ふと真面目な顔で私を見上げた。

「パパ。私、わかったことがあるの」

「なんだい? 運動会の反省点かな? ルシファー様のスタートダッシュが早すぎたこととか」

「ううん。……私、みんなに守られてばっかり。私一人でも、みんなを笑顔にするための『素敵なお土産』を見つけに行けるようになりたいの!」

 嫌な予感がした。

 そしてその予感は、翌朝の「パパ、探さないでください(ひらがな)」という置き手紙によって現実となった。

管理事務所:パニック・レッドアラート

「……消えた。パンドラの気配が、全階層から消失しただと……!?」

 ルシファーの咆哮が管理事務所の窓を割り、背後の6枚の翼が怒りでどす黒く変色する。

「落ち着いてくださいルシファー様! 彼女はアザトース様から『次元の隠れんぼ』を教わったばかりなんです。気配を消すのはお手の物ですよ!」

「落ち着けるか! もし、もし万が一、地上の不潔な泥棒に捕まったら……! もし、不味いパンを無理やり食べさせられたら……! ああ、世界を滅ぼす準備をしろサタン!!」

 事務所内は地獄絵図だった。

 フェンリルは血眼になって地面の匂いを嗅ぎ回り、その鼻息で第1階層が砂嵐に。

 上皇様は「パンドラを傷つけるすべて焼き尽くす」と、全人類を呪うための呪詛儀式を今にも始めようとしている。

「皆さん! とりあえず捜索隊を編成します。ただし、彼女の『冒険』を邪魔してはいけません。こっそり、バレないように見守るんです。いいですね!?」

地上:辺境の村付近

 その頃、パンドラは一人、街から少し離れた森を歩いていた。

「えっと……ルシファーおじちゃんは『美しく歩け』って言ってたし、わんわんは『風の音を聴け』って。……あ、あそこに美味しそうなキノコがある!」

 パンドラがキノコに手を伸ばそうとした時、茂みから唸り声と共に、数匹の「フォレスト・ウルフ」が飛び出してきた。地上では初心者冒険者を数分で食い殺す、立派な魔物だ。

「わぁ、わんわんのお友達? こんにちは!」

 パンドラがにこやかに手を振る。

 だが、狼たちは容赦なく飛びかかった。……その瞬間。

「…………めっ、だよ?」

 パンドラの瞳が、一瞬だけクトゥルフ様と同じ「深淵の翠色」に光った。

 ピキィィィィン!! と、周囲の重力が数万倍に膨れ上がる。

 狼たちは地面にめり込み、恐怖のあまり失禁して気絶した。パンドラが無意識に放った「おもてなし(物理)」の圧力だ。

(……う、撃ちたい。今すぐあの駄犬を暗黒魔法で塵にしたい……!)

(……待てルシファー、管理人に止められている。我慢だ、我慢するのだ……!)

 実は、すぐ横の次元の隙間から、ルシファー、サタン、上皇、そして私が「全速力で隠密」しながら彼女を追っていた。

 狼が牙を剥いた瞬間、ルシファー様が危うく森ごと消滅させそうになったが、私が必死に羽交い締めにして止めたのである。


 やがて、パンドラは街道で一台の馬車に出会った。

 乗っていたのは、卑俗な笑みを浮かべた悪徳商人。彼は一人の幼女が高級なドレス(ルシファー製)を着て歩いているのを見て、すぐさま「金蔓」だと判断した。

「おや、お嬢ちゃん。一人で冒険かな? 街まで乗せていってあげよう。美味しいお菓子もあるよ」

「本当? ありがとうございます、おじさん!」

 パンドラが馬車に乗り込む。

 その瞬間、背後の空間(不可視)で、四つの絶大な殺気が爆発した。

「……あいつ、今、パンドラを『獲物』の目で見たな。管理官、もういいだろう? あの男の魂を10万回引き裂いても文句はないはずだ」

 ルシファーの翼から黒い雷が漏れ出している。

「待ってください! まだパンドラは傷ついてません。彼女がどう解決するか見守りましょう!」

 馬車の中で、商人が本性を現した。

「ヒッヒッヒ、運がいい。このドレスを剥ぎ取って、お前を奴隷市場に売れば一生遊んで暮らせるぞ。さあ、大人しく……」

 商人がパンドラの腕を掴もうとした。

 その時、パンドラは悲しそうな顔で、カバンから一つの「小さな石」を取り出した。それは、アザトース様が寝言で吐き出した「宇宙の塵」を私が研磨した、特製の文鎮だ。

「おじさん……。パパがね、『悪い人には、重みのあるお話をなさい』って言ってたの」

 パンドラがその石を、馬車の床に「そっ」と置いた。

 

 ドゴォォォォォォォォォン!!!

 馬車は一瞬でぺしゃんこになり、地面に巨大なクレーターが穿たれた。商人はその圧倒的な「物理的な重み(概念レベル)」に押し潰され、恐怖で精神が先に真っ白に燃え尽きた。

「あ……。やりすぎちゃった。パパ、怒るかなぁ」

 パンドラがクレーターの真ん中でしょんぼりしていると、私は我慢できずに飛び出した。

「怒らないよ! 怒るわけないだろう、パンドラ!!」

「あ! パパ! ……と、おじちゃんたち! なんでここにいるの?」

 隠れていた魔王たちも続々と姿を現す。

 ルシファー様は即座にパンドラを抱き上げ、商人の残骸をゴミを見るような目で見下ろした。

「当然だ。貴様がこの世界の空気を吸う間、私が片時も目を離すとでも思ったか?」

「……パパ、お土産。これ、綺麗だと思って」

 パンドラが差し出したのは、先ほどのクレーターの圧力で、商人が持っていた安物のガラス玉が結晶化し、偶然にも「超高純度魔石」に変化したものだった。

「……ありがとう、パンドラ。最高のお土産だよ」

管理事務所:後日談

 結局、パンドラの家出(冒険)は、開始からわずか3時間で「過保護軍団による一斉回収」という形で幕を閉じた。

【ログ:パンドラの初めての家出、無事終了。】

【獲得ポイント:+50,000P(商人の絶望と、クレーターの修復費用より差し引き)】

【パンドラのステータス:スキル『物理説法(重圧)』を習得しました】

【管理者コメント:彼女を一人で外に行かせるのは、100年ほど早いことが証明されました。世界の安全のためにも】

「パパ、次はみんなでピクニックに行こうね!」

 パンドラの笑顔に、魔王たちが一斉に頷く。

 地獄の垂直都市は、今日もしようがないほどの愛と、少しの破壊に満ちていた。

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