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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第2章:見習い管理人編

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第12話:パンドラの学校計画!? 先生は……アザトース様!?

「パパ、私、お勉強がしたい!」

 朝食の『地獄産マンドラゴラのサラダ』を完食したパンドラが、突然そんなことを言い出した。

 管理事務所のデスクで、昨晩の勇者たちが残した「遺失物ゴミ」を仕分けしていた私は、思わず手を止めた。

「勉強、か。確かにパンドラももう5歳。読み書きや計算くらいは身につけないといけない時期だね」

「そう! じーじも、きらきらおじちゃんも、みんな教えてくれるんだけど……みんな言うことがバラバラなんだもん」

 それはそうだ。

 ルシファー様は「美学と傲慢」を説き、上皇様は「怨念と和歌」を教え、フェンリルは「喉笛の噛み切り方」を実演する。これではバランスのいい義務教育とは程遠い。

 そこで私は、ダンジョン内定例会議を招集した。議題は『パンドラ・アカデミー設立について』。

「……というわけで、各階層主の皆さんには、交代で『特別講師』をお願いしたいと思います」

 私の提案に、円卓を囲む面々が身を乗り出した。

「ふん、最初から私に任せればいいのだ。全知全能に近い私の知識を授ければ、彼女は一週間で天界を論破できるようになる」

「お黙りなさい、堕天使。まずは日本語の美しさと、呪いの基礎知識が必要だ。計算など、式神にやらせれば済むこと」

 早くもルシファー様と上皇様が火花を散らす中、パンドラが私の袖を引いた。

「ねぇパパ。私、一番物知りな人に教わりたいな。このダンジョンで一番古くて、一番大きい人!」

 事務所内が凍りついた。

 パンドラが指差したのは、足元の床――正確には、その遥か先にある「第7階層」だった。

「パ、パンドラ……。あの方は『物知り』というより、あの方の夢が世界そのものというか……」

『……いい……考え……。アザトース様……宇宙の、真理……。……家庭訪問……しよう……』

 クトゥルフ様がヌルリと賛成した。

 旧支配者の皆さんにとって、アザトース様は絶対の父。結局、私たちは「校外学習」として、最下層の虚無へと向かうことになった。

 第7階層。音も光もないはずの場所だが、パンドラが来ると不思議と「ひだまり」のような空間ができる。

 中心で蠢く巨大な混沌の核、アザトース様。

 その周囲では、狂ったような笛の音を奏でる従者たちが、不気味なダンスを踊っている。通常なら、この音を聞いただけで人間の脳はスクランブルエッグになる。

「こんにちは、先生! お勉強、教えてください!」

 パンドラが元気に挨拶すると、アザトース様の表面から、無数の「目」のようなものが一斉に開き、彼女を凝視した。

『グ、ギ、ギギ…………』

 全次元を揺るがす地鳴りのような声。それがパンドラの耳には、どうやら「特別な授業」として変換されたらしい。

「ふむふむ……。えっ、『宇宙はただのバブルで、弾けたらおしまい』なの? じゃあ、弾けないように私が糊でくっつけなきゃダメだね!」

「……おい、何を教わっているんだ?」

 背後で控えていたサタンが、冷や汗を流しながら呟く。

「わかりません。ただ、物理法則の根本を書き換えるような、極めて物騒な英才教育を受けていることだけは確かです」

 パンドラはアザトース様の触手の間に座り込み、従者たちの笛のリズムに合わせてノート(呪導書)に何かを書き殴っている。

 時折、アザトース様から溢れ出した「暗黒物質」を粘土のようにこねて、小さな銀河の模型を作っては「はい、あげる!」とアザトース様の口に放り込んでいた。

 それは授業というより、宇宙の主神を相手にした「おままごと」だった。

 数時間後。パンドラは満足げに第7階層を後にした。

「パパ、楽しかった! 先生、またおいでって言ってたよ!」

「……そうか。それは、宇宙の寿命が少し延びたと思って喜ぶべきなのかな」

 事務所に戻り、私はパンドラの「連絡帳」を確認した。そこには、アザトース様の思念によって直接刻まれたメッセージがあった。


【通信:第7階層・講師アザトース】

本日の授業:『次元の畳み方と、おやつの重要性』

成績:大変よくできました。

備考:生徒パンドラにより、私の『核』の一部がピンク色のリボンで結ばれました。非常に不本意ですが、温かいのでこのままにしておきます。


「……アザトース様をデコったのは、君が初めてだよ、パンドラ」

 私はタブレットを更新した。


【ログ:パンドラが『宇宙の真理(初級)』を習得しました】

【パンドラのステータス:知力が測定不能に突入しました】

【管理者コメント:彼女の描く『将来の夢』が、『宇宙の作り直し』にならないことを切に願います】


「パパ、お勉強したらお腹空いちゃった。ベルゼブブおじちゃんのところで、熟成ステーキ食べたい!」

「いいよ。でもその前に、ルシファー先生の『傲慢な算数』の宿題を終わらせようね」

 パンドラの教育は、まだ始まったばかり。

 だが、最強の怪物たちが寄ってたかって教育した結果、彼女は「人類最大の希望」から「神々すら制御不能な超天才児」へと、着実に進化を遂げていた。

 一方、その頃。

 ダンジョンの外では、パンドラの「異常な魔力」を感知した謎の組織が、本格的な介入を計画していた……。

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