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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第1章:乳幼児編

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第10話:開かれた箱、そして少女は深淵に咲く

 パンドラの背中に浮かび上がった「黒い翼」の紋章。

 それは、垂直都市ダンジョンに渦巻く天文学的な量の絶望ポイントと、階層主たちが分け与えた強大すぎる加護が、彼女という小さな器の中で飽和し、ついに形を成した証だった。

「……やはり、こうなったか」

 第6階層の玉座の間。ルシファー様が、沈痛な、しかしどこか悦びに満ちた表情でその紋章を指でなぞる。

「管理人よ。パンドラの箱の伝承を覚えているか? 最後に残ったのは『希望』だと言われているが、それは同時に、あらゆる厄災を内包し、制御するための『核』でもある。彼女は、この地獄そのものをその身に宿し始めたのだ」

 ルシファー様の言葉に呼応するように、パンドラの体から溢れ出す魔力が、王宮の柱を次々と結晶化させていく。

 パンドラ本人は、自分の背中の変化など露知らず、「ぱぱー! ぴこぴこ!」とアヒルの人形で遊んでいるが、彼女の周囲では空間が歪み、現実と虚無の境界が曖昧になり始めていた。

「このままでは、彼女の精神が肉体の成長を追い越してしまう。あるいは、強すぎる魔力に肉体が耐えきれず、自壊するでしょう」

 私はタブレットを叩き、一つの「賭け」を提案した。

「ダンジョンの因果律を一時的に加速させます。パンドラを『安定期』まで一気に成長させる。リスクはありますが、階層主である皆さんの魔力を注ぎ込めば、彼女をこの世界の『あるじ』の一人として固定できるはずです」

「……よかろう。我らすべての力を、この幼子に預けるというわけか」

 崇徳上皇が扇子を閉じ、決然と頷いた。

 小型化を解き、本来の巨体に戻ったフェンリルが、そして深海から思念を送るクトゥルフ様が、一斉に魔力を解放する。

「パンドラ、少しだけ長いお昼寝だよ。次に目が覚めたら、もっとたくさんお話ができるようになるからね」

 私は、光の繭に包まれ始めたパンドラの額にキスをした。

 彼女は不思議そうに私を見つめ、最後の一言を漏らした。

「……ぱぱ、また、あとでね」

 ――直後、管理事務所から放たれた虹色の光柱が、垂直都市の全7階層を貫いた。

 それから、どれほどの月日が流れただろうか。

 ダンジョン内では時間の概念が希薄だが、地上の暦ではおよそ「5年」の歳月が、一瞬の魔力奔流の中に凝縮されていた。

 管理事務所。

 かつてのベビーベッドは片付けられ、そこには小さな木製のデスクと、可愛らしい刺繍が施された椅子が置かれている。

 コツ、コツ、と軽やかな靴音が響く。

「……パパ、第3階層のベルゼブブおじちゃんから、最新の『腐敗汚泥報告書』が届いてるよ。あと、第5階層のわんわん(フェンリル)が、また毛玉を吐いちゃったって」

 現れたのは、5歳から7歳ほどに見える少女だった。

 絹のような銀髪に、吸い込まれるような深淵の瞳。背中には、意志によって出し入れ可能な漆黒の翼が、お洒落なリボンのように折り畳まれている。

 拾われた時のボロ布ではなく、ルシファー様が仕立てた最高級のドレスに身を包んだその少女――パンドラは、慣れた手つきで私に書類を差し出した。

「ありがとう、パンドラ。助かるよ。もうすぐ第1階層の『呪術試験』の時間だけど、準備はいいかな?」

「うん! 上皇のじーじに、新しい呪歌を教えてもらうんだ。あ、でもその前にルシファーおじちゃんと『傲慢なテーブルマナー』の練習もしなきゃ……。もう、おじちゃんたち、私を取り合いしすぎだよ」

 パンドラは困ったように、しかしとても幸せそうに笑った。

 かつて世界を滅ぼしかねない泣き声を上げていた赤ん坊は、今やこの地獄の垂直都市における「小さな女王」にして、私の「有能な助手」へと成長していた。

 私は、すっかり大きくなった彼女の頭を優しく撫でる。

「パパ。私、決めたよ」

「何をだい?」

 パンドラは窓の外――地獄の空を見上げ、力強く宣言した。

「私、このダンジョンを世界で一番『楽しくて、絶対に出たくなくなる場所』にする。絶望してやってくる人たちも、みんな私の友達にしちゃうんだから!」

 それは、最凶の魔王たちすら想像しなかった、究極の「地獄運営計画」だった。

【ログ:パンドラが『幼児期』に到達。ステータスが大幅に向上しました】

【現在の絶望ポイント:∞(パンドラの笑顔により測定不能)】

【管理者の日記:彼女がペンを持てるようになったので、これからは二人で運営日誌をつけていこうと思います。……パパ、頑張るよ】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

読者の皆様の応援のおかげで、ここまで書き進めることができています。

もし「続編が気になる!」「応援してるぞ!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや、星での評価で応援をいただけないでしょうか。

皆様のポイントが、ランキングを駆け上がる原動力となります!

これからも熱い展開をお届けします!

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