表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
口だけの商人、神の戦争を生き抜く ~戦の女神が俺に本気なのは誤算だった~  作者: 蒼月よる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
246/257

沈黙の食卓

 朝日が帳面を照らしていた。


 新しいページを開いた。上部に大きく「棚卸し」と書いた。商人の在庫確認。全ての持ち札を並べ、何が使えるか、何が足りないかを洗い出す。昨夜の絶望は消えていない。だが朝が来たなら動ける。朝が来ても動けないのは死人だけだ。アシュタルはまだ生きている。


 持ち札の一覧。


 一、バアル帰還を導いた実績。これは「信用」になる。神々の世界で、人間がバアルを取り戻す手助けをしたという事実は前例がない。前例のない実績は——高く売れる。


 二、捧げものの印。右手首の内側にある銀色の円環紋様。正体は完全には分かっていない。だがバアルとモトの力に反応し、アナトの力が触れた時には光の筋を生んだ。何かの力がある。何の力かは分からないが——ないよりはましだ。


 三、モトの真意に関する情報。アシェラとヤムから得た断片的な情報。モトが欲しいのはバアルの体ではなく力。冥界を維持するためにバアルの力が必要だという逆説。これは「切り札」になりうる。


 四、粘土板の破片。冥界への旅路で入手した古い粘土板の欠片。文字の一部しか読めないが、何かの契約書の断片のようだった。


 五、銅のペンダント。


 ペンダントを手に取った。祖父の形見だ。ずっと首にかけていた。旅の間も、嵐の中でも、冥界の門の前でも。肌身離さず持っていたが——「手札」として意識したことはなかった。


 摩耗した表面。長い年月で角が丸くなり、元の形が分からないほど擦り減っている。何かの文字が刻まれているように見えるが、摩耗がひどくて判読できない。


 だがエルに会えば——この形見の意味が分かるかもしれない。祖父の形見。一族に代々伝わったもの。「捧げもの」の印を持つ一族に——なぜこのペンダントが伝わっているのか。偶然か、必然か。


 棚卸しの結論を書いた。


 エルに会うべきだ。


 持ち札は少ない。だがゼロではない。バアル帰還の実績は「信用」になる。ペンダントは「名刺」になるかもしれない。捧げものの印は「話題」になる。モトの真意に関する情報は「交渉材料」だ。


 少ない手札だが——手札の数で勝負が決まるなら、商人という職業は成り立たない。手札が少ない時こそ、使い方が問われる。


 帳面を閉じた。


 「最後のテーブル」——エルに商談を仕掛ける。


 最後の一枚。祖父の形見のペンダント。これが「最後のテーブル」への切符になるかもしれない。


 エルに会いに行く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ