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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第四章

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第99話

 周囲から突き刺さる好奇の視線を一身に浴びながら、秋雨とアンネリーゼは向かい合って食事に勤しんでいた。

 秋雨はゾティークに流通している通貨を所持していないため、すべてアンネリーゼの奢りである。

 なお、アンネリーゼが所持しているゾティークの通貨は、暗躍している時に人には言えない事で荒稼ぎしたものだったりする。


「うんうん、冒険者ギルドのご飯は大味で良いよねぇ」


 ハムスターのように頬を大きく膨らませながら、もきゅもきゅと肉を頬張っているアンネリーゼ。

 その体形からは似つかわしくない量を食べていた。


「————普通のレストランじゃないとは思っていたが、冒険者ギルドなのかよ。確かに屈強で野蛮そうな人が多いとは思ってはいたが……」


 秋雨は周囲に視線を巡らせながら言う。

 鎧を身に纏い、腰に剣を差す戦士。

 トンガリ帽子を被り、ローブを身に纏う魔法使い。

 身軽そうな装いに、胸には短刀の収められた鞘を取り付けているシーフ。

 純真無垢の装いをしたクレリック。

 身体つきは各々異なるが、皆が等しくそれなりに戦える雰囲気を有していた。


「秋雨君はこの世界で話はできても文字は読めないからねぇ。ここは冒険者ギルド。一攫千金を夢見る者、人の役に立とうとする者、未知を探求する者——それぞれが様々な欲を満たすために集まる場所だねぇ。ギルドの役割は、新人の冒険者登録、クラン登録、クエストの受注、レストラン、宿などがあるねぇ」

「なるほど、概ねイメージ通りのギルドって感じだな」


 少しだけ感動を覚える秋雨に、アンネリーゼはクスクスと笑みを浮かべる。

 そんな二人の元へ向かって歩み寄って来るガタイの良い冒険者の姿があった。


「よぉ、兄ちゃん。可愛い女を連れてるじゃねぇか?」


 その言葉に秋雨は嫌な予感がした。


「話があるんだ。その女、俺に貸してくれよ、な?」


 秋雨としてはアンネリーゼのことを守る義理は微塵もないのだが、男の台詞については気に食わない。

 が、テーブルの料理に手を着けつつ、男へ顔を向けることなく口を開く。


「……貸してくれって、人を物みたいに言うアンタは随分と常識がないんだな」


 食事を進めながら、秋雨はサラッと言い放つ。

 すると男の目が鋭くなる。


「あ? 何言ってんだクソガキ!」


 怒鳴り声を上げ、男は秋雨の服の襟元を掴む。


「クソガキって、事実を指摘されてキレるなよ」


 秋雨は慌てることもなく普段通りのトーンで言う。


「ぶっ殺されてぇのか!」


 二度目の男の怒鳴り声に周囲の視線が更に集中する。

 ギルドの受付カウンターにいる職員が慌てた様子でアタフタしていた。


「殺されたくはないんだが……」


 男の顔をジッと見て秋雨は、男の実力を測る。


「……ま、大した事なさそうだな」


 ボソッと呟く秋雨。

 その言葉を聞いたアンネリーゼがニンマリと口元を歪ませる。


「そうだねぇ。秋雨君の言う通り、この程度の男じゃ相手にならないよねぇ」

「んだとコラァ!」


 遂に男がブチギレる。

 周囲から「喧嘩か!」、「おいおい、あの坊主死んだんじゃないの」などの声が聞こえる。

 秋雨は溜息を吐いた後、襟元を握っている男の腕を掴む。

 そして——、


「————あ」


 それは誰の声だったのか。

 たった一瞬で男の身体は床に叩き伏せられていた。


「ひゅー、やるねぇ?」

「はぁ……」


 ニタニタと笑みを浮かべるアンネリーゼに呆れつつ、秋雨は床に叩き伏せられ唖然としている男を見下すように告げる。


「悪いな。アンタ程度にビビり散らかすほど楽な人生歩んでないんだよ。つーか、絡む相手の実力差ぐらいわかれよな」

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