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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第四章

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第96話

 ――異世界へ行く。

 言葉にするのは簡単だが、実際にどのような手段があるのかと問われると首を傾げざるを得ない。

 奏多たちは世界間を行き来する魔法を有しているが、他人を連れて渡ることはできない――と、秋雨は本人からそう聞いていた。

 だからこそ、アンネリーゼが異世界を行き来する力を有していることに、秋雨は懐疑的だった。


「で、実際アンネリーゼは異世界を渡る方法を持ってるのか?」


 玲香は「ちょっと出てくる」と告げて外出してしまい、店内は秋雨とアンネリーゼの二人きり。

 アンネリーゼは何とも思っていない様子ではあるが、秋雨としては非常に居心地が悪い。

 そんなこともあり、秋雨はアンネリーゼに異世界への渡航方法について問う。


「そうだねぇ、渡る方法――というよりは、渡る為ための道具を持っていると言った方が良いかなぁ?」


 そう言ってアンネリーゼは懐から、奇妙なアラベスク模様に覆われた大きな銀の鍵を取り出した。


「鍵?」

「そうだねぇ。これは出自不明とされる大いなる銀の鍵。私の惑星では国宝とされていた遺物だよぉ」


 ケロッとした様子で告げるアンネリーゼ。

 銀の鍵をマジマジと秋雨は観察していく中で、それから妙な気配があることを感じる。

 虚無、或いは狂気。

 少なくとも人が創り出したものではないことだけは、直感で察することができる程度に妙だった。


「この銀の鍵さえあれば時空連続体すら凌駕して、無限の領域、或いは制限すらも物ともせず、あらゆる次元すら容易く超えることができちゃうんだぁ」


 クスクスと笑いながら、アンネリーゼは銀の鍵を秋雨へ見せつけるように持つ。


「滅びたユゴスからこの地球へやって来た時も使ったし、ゾティークで少しだけ仕事をする際にも使ったねぇ」

「……ゾティークに行ったことがあるのか?」

「あるよぉ。確か小倉駅での一件でどこぞの宗教団体の信者と一戦交えた記憶はないかなぁ?」


 アンネリーゼに問われ、秋雨は眉を顰める。

 記憶はあった。

 確かにあの男はリファのことを知っていた。

 なるほど――と、秋雨は合点がいく。


「あの男はアンタが連れて来たのか?」

「そうだよぉ」

「…………何のために?」

「そうだねぇ。彼はルクシャ・ハーナの信奉者だったからねぇ。この地球に封印されているって話をしたら、喜んでついて来たんだよ。ま、彼に関しては秋雨君の実力を見るための鉄砲玉要員だったけどねぇ」


 その言葉に秋雨は顔を顰める。

 やはり彼女の思考に共感はできそうにない――少なくともそう感じた。


「玲香さんの感じだと早めに動いた方が良さそうだな」

「そうだねぇ。あの勇者君は兎も角、それ以外の人たちがルクシャ・ハーナを相手にどの程度の抵抗ができるのか気になるところだねぇ。ま、私としては異世界に旨味が無いから行きたくないんだよねぇ」

「……いや、着いてきてもらうからな」

「わかってるよぉ。雇い主の言葉に従うことが条件で自由にさせてもらっているから、しっかり役目は果たすよぉ。何より秋雨君のお願いならちゃんと聞くしねぇ?」


 ネットリとした声音でそう告げるアンネリーゼに、秋雨の背筋に悪寒が奔る。


「……勘弁してくれ」

「ふふっ、じゃあ、明日にでも動くとしようかなぁ?」


 秋雨の反応を楽しむ様子を見せながら、アンネリーゼはそう告げるのだった。

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