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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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第87話

 運命の魔人マラコイデス。

 それは魔法少女が魔女へと変貌するように、元々は律が魔人へ変貌した際の名であった。

 しかし、前の世界の律は魔人になる運命を捻じ曲げ、自身の使用する魔法へと昇華させ、九十九を打倒した。

 その魔法をこの世界の律も発現させた。


運命を切り開く魔法プリムラ・マラコイデス。それは私が到達できなかった可能性の魔法だ。そして、桜目律が私を打倒した魔法。ああ――それでこそ私の知る桜目律だ」


 極彩色の魔力が律の周囲で逆巻いている。

 金之業とも、マーリンたちが使用している魔法とも異なる新たな魔法。


「行くぞ、九十九」


 ただ、そう呟いた律が地を蹴った。


「そうだ、それでいい!」


 迫る律へと大鎌を振り下ろす。

 しかし、その斬撃は律の身体を擦り抜ける。


「私に斬り割かれる運命を捻じ曲げたか!」

輝け(Prism)!」


 極彩色の斬撃が九十九を襲う。

 だが、その斬撃を九十九は難なく弾く。


屈折(Refraction)!」


 短文詠唱魔法により、弾かれた斬撃が弾かれなかったことになる。

 故に、極彩色の斬撃は九十九の身体を斬り割いた。

 血飛沫が舞う。


「ああ――運命を切り開く魔法プリムラ・マラコイデス。その魔法名に相応しい魔法だ。だが、私もそう簡単に勝ちを譲る気はない!」


 大鎌を振り回し、九十九は律との距離を取る。


「これまでの旅路。失敗は次の未来へと繋ぐ礎なり。幾多の因果を束ね、破滅の閃光を放とう。さあ、受け切って見せろ!」


 律へ向けて放たれるは、過去の因果と魔力を束ねた収束砲。


因果律収束砲コーザリティ・バスター


 これまで繰り返し続けた因果と執念が魔力となって律へと放たれる。

 強烈な力が束ねられた一撃。

 周囲の空気を震わせ、触れた大気の水分すら蒸発させる九十九の切り札。


「っ――――⁉」


 不意の一撃。

 運命を切り開く魔法プリムラ・マラコイデスの斬撃で防ごうとするが、絶妙に間に合わない。

 そんな状況であったが、律の前に躍り出るひとつの影があった。


「ここで受け止め切れずに聖剣は名乗れないよ! さあ、受け止めるよ――エクスカリバー!」


 アルトリウスが直撃寸前で割り込み、その因果律収束砲コーザリティ・バスターを受け止める。


「おおおおおおお! 律、ブチかませ!」

「ああ! 任せろ!」


 記憶の中で、桜目律はこの魔法の本質を持って九十九を打倒した。

 それは数多くの者たちの願いと希望を背負い、その全てを叶えるための一撃。

 極彩色の魔力は運命を切り開く。


「|そして、運命は開かれた《ガーベラ・アベマリア》」


 九十九の放った因果律収束砲コーザリティ・バスターを、極彩色の光はその全てを捻じ伏せる。

 そして、そのまま九十九の身体を瞬く間に飲み込んでいく。


「――とんだ笑い種だ。まったく同じ手で敗北とは」


 極彩色に飲み込まれていく中で、自重するような言葉を紡ぐ九十九。

 しかし、その顔は満足そうな笑みを浮かべていた。

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