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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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84/111

第84話

 残り時間を稼ぐ。

 奏多はフィニステラを手に駆け抜ける。

 シューブ=ニググラトスによる触手攻撃を斬り捨てながら、アンネリーゼへと向かう。

 後方からは志乃に魔法の支援砲撃が飛ぶ。


「風に乗りて歩め――イトハカ」


 アンネリーゼのそんな言葉と共に、人間のような輪郭を持った眼のある紫の煙と緑の雲の化物が顕現する。

 シューブ=ニググラトスほどではないが、風を吹き荒びながら狂気を漂わせている。


「私の風魔法に対する当てつけ⁉」

「目には目を歯には歯をってヤツだねぇ?」


 志乃の言葉に、アンネリーゼがニンマリと笑みを浮かべる。

 イトハカが漂わせる風と狂気によって、志乃の放った魔法が全て無力化されてしまう。

 このままでは支援が絶たれてしまうところだが、そんなイトハカへと突っ込むひとつの影――孝也だ。

 両手の拳に魔力を込め、そのままイトハカへと打ち込む。


「ぶち抜く! メガラニカ・インパクト!」


 両手の拳に込められた魔力が炸裂し、紺碧の閃光を放つ。

 瞬間、イトハカの身体は瞬く間に蒸発する。


「はあ⁉ 何てやつなのさぁ!」


 アンネリーゼが驚きの声を上げる。

 だが、直ぐに切り替え、次を顕現させる。


「双子神――ロイガー、ツァール」


 長い触手を持った二体の緑の肉塊。

 その姿はシューブ=ニググラトスに負けず劣らずの劣悪さであり、狂気に満ちている。

 腐臭が嫌悪感を増幅させ、集中力を落とす。


「君たちに相手ができるかなぁ?」


 志乃の元へロイガーが、孝也の元へツァールが飛ぶ。

 奏多はシューブ=ニググラトスの相手で手いっぱいだ。


「二人とも⁉」

「心配する必要はないわよ!」

「そうだ、僕たちはパーティだ」


 奏多の心配に対して、志乃と孝也は不敵の笑みを浮かべる。

 その時だ。

 上空から無数の魔力弾が飛来する。

 そのすべてがロイガー、ツァールへと直撃する。


「奏多ァ、俺たちもいるぜ!」

「支援は任せて!」

「異世界を救った俺は伊達じゃないってところをみせてやれ!」


 上空に飛ぶ数人の人影。

 彼らは志乃と孝也と共に、この場を訪れた異世界帰還者。

 実力は奏多や志乃、孝也に及ばないが、支援行動に関しては他を寄せ付けない連携を有している。

 それは異世界での戦いで身に着いた技術だ。


「――目障りだよねぇ!」


 アンネリーゼが動こうとした時だった。


「――聖剣フィニステラよ! 終わりを超え、始まりの星を振り落とせ! これはあらゆる闇を払う、光の刃なり!」


 その言葉と共に、奏多がまばゆい光を放つフィニステラをシューブ=ニググラトスへと振り下ろす。


「閃光剣フィニステラ! ぶった斬れろォ!」


 閃光剣フィニステラ――それは奏多の持つ技において最後の切り札。

 使用条件が存在する。

 ひとつ、勇気が途絶えていないこと。

 ふたつ、対峙する者が巨悪であること。

 みっつ、仲間の意志が集っていること。

 それは正真正銘、自身が勇者であることを知ら占める絶剣だ。

 閃光の軌跡がシューブ=ニググラトスを両断する。


「――昇華しやがれ!」


 狂気が消失する。

 歪な肉塊は閃光によって跡形もなく気体となって霧散した。


「噓でしょぉ⁉」


 アンネリーゼの叫び。

 そして――時間は訪れる。

 強大な力の奔流が沸き上がる。

 その根本は秋雨だ。

 秋雨はジッとアンネリーゼに視線を突き刺しながら、告げる。


「水之業/氷之業・混合変化、相伝術式・転換――八寒地獄(はっかんじごく)摩訶鉢特摩(まかはどま)

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