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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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83/111

第83話

 律が九十九を相手に奮戦をしている頃。

 奏多がフィニステラを手に、アンネリーゼへと斬り込んでいた。

 後方では限定解除(リミットブレイク)を発動し、一撃へ全てを賭ける為に出力増幅へ意識を集中する秋雨の姿が在った。


「へぇ? ルクシャ・ハーナに一矢報いた限定解除ってヤツかなぁ?」

「さて、どうだろうね!」


 秋雨へと近づこうとするアンネリーゼを奏多は阻み続ける。

 限定解除からの出力最大の相伝術式の発動。

 今、頂点捕食者であるアンネリーゼを完全な形で討ち取るには、この方法しか存在しない。

 限定解除には制限時間があり、時間を超過してしまえば秋雨は戦えなくなってしまう。

 それこそ、この一撃で決め切る以外に先はない。

 僅か五分、されど五分。

 短いようで、長い戦いを奏多は全うしなければならない。


「勇者君じゃ、私には届かないけどぉ?」

「舐めるな! これでも異世界で魔王を――」

「――アルデネイラを倒しただっけぇ?」


 奏多の言葉を遮るように、アンネリーゼが口を挟む。

 そんな彼女の言葉に、奏多は眉を顰めた。


「……何で知っている?」

「さぁ? どうしてだろうねぇ? 魔王アルデネイラ――ルクシャ・ハーナが死んだわけじゃなく封印されていたが故に、頂点捕食者になれなかった悲劇の強者。確かに、勇者君の功績は称えられるに値するねぇ。だけどさぁ?」


 シューブ=ニググラトスが奏多へと触手を伸ばしてくる。

 触れられたら即発狂コース。

 それに故に掠り傷すら許されない攻撃をフィニステラで斬り捨てる。


「その程度じゃ、頂点捕食者には届かないねぇ。異世界ゾティークじゃ、救世主や勇者と持て囃されたんだろうけど――そもそも君の力じゃ、この世界の脅威に対抗する土俵に立ててないよぉ」

「ッ――――」


 奏多は奥歯を噛む。

 それは、きっとアンネリーゼの言う通りだったから。

 異世界を救った。

 その事実が奏多の誇りであり、多くの人々を救ったという自身でもあった。

 しかし、地球に戻り、秋雨たちのような異能力を有する者たちの存在を知った。

 頂点捕食者という圧倒的にして隔絶された異常存在を知った。

 異世界を救った――その肩書が、実力が、なにひとつ届かない現実を思い知った。

 それでも奏多は勇者だ。

 気持ちだけはずっと折れなかった。

 一人では戦えないからこそ、仲間と共に進んできた。


「……確かに、俺の実力は些細なものだろうさ。それこそ君たちのような頂点捕食者にとっては石ころみたいなもんだろう。だけど、俺はひとりで戦っているワケじゃない。俺の背中には玉水がいる。俺だけじゃ勝てなくても、俺たちなら勝てる」

「他力本願ってヤツだねぇ? だけどさぁ、それって君が私を抑えきった場合だよねぇ?」


 ゾワリ――と、奏多の背筋に冷たいものが奔る。


「勇者君程度で何となると本当に思っているのかなぁ?」


 いつの間に其処にいたのだろうか。

 奏多の直ぐ隣にアンネリーゼの姿が在った。


「な――⁉」

「精神ごと壊れてねぇ」


 アンネリーゼに意識を取られた結果、シューブ=ニググラトスの触手が目前に迫っていた。

 フィニステラで斬るに間に合わない。

 触れられれば終わる。

 回避の使用がない。

 走馬灯のように、ゆっくりと触手が奏多へ向かって来る。

 だが――、


「烈風よ、恐慌の嵐となりて、仇為す敵を切り刻め!」


 吹き抜けた風の刃が奏多へ迫っていた触手を切り刻んだ。


「メテオインパクト!」


 いつかの再現をするように、アンネリーゼの頭上へ孝也が隕石の如き勢いで降って来る。

 が、その攻撃をアンネリーゼは片手で受け止め、孝也を投げ捨てると大きく後方へ飛び退く。


「志乃! それに孝也まで!」

「やっほー、奏多。ギリギリセーフってところかしら?」

「ま、一先ずは無事で何よりだね」


 奏多の隣に志乃が、アンネリーゼに投げ捨てられた孝也も即座に奏多の隣へと降り立つ。


「いつかの勇者パーティかぁ……」


 アンネリーゼが眉間に皺を寄せ、その隣にシューブ=ニググラトスが鎮座する。


「志乃、孝也、力を貸してくれ」

「当然でしょ」

「今更何を言うのさ」


 奏多の言葉に頷く二人。


「助かる。あと三分アンネリーゼを抑える。そうすれば玉水がなんとかしてくれる」

「オーケー。ま、やってやりますか!」

「そうだね。防衛戦はお手の物だよ」

「ああ――行こう!」

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