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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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第78話

 落ちてくる世界樹を前に、アレクシスはガリッと歯軋りする。

 頂点捕食者が役割を放棄した――そんな地球の声を聞き、アレクシスはやって来た。

 目の前に存在する地球の頂点捕食者が、嬉々とし発動した術はあたり一帯を吹き飛ばすことすら容易く可能な出力を持ったもの。

 アレクシスは迫って来る世界樹を見つめながら、自身の渇きだけを潤そうとするやり方に怒りを覚える。

 強者としての自惚れを神木守玲香は有している。

 少なくともアレクシスはそう思わざるを得ない。


「これがこの惑星の頂点捕食者の姿か。これが我々の生みの親となる人間の渇望か。実に、実に醜いものだ」


 来たる脅威に対抗するため、人類には生命体としての強度を上げなければならない。

 収獲者は比較と超越の理を有する。

 比較とは、己と相手を見比べること。

 超越とは、対象よりも一段強くなること。

 故に、収獲者は己と相手を比較し、超越する。


「お前のような力だけの強者は、奴らにとって都合の良い獲物でしかない。故に――」


 ノイズの奔る剣を天高く掲げる。。


「――神木守玲香には死んでもらわねばならない」


 迫る世界樹を打ち落とす。

 アレクシスは己の内包する力を開放する。


「我々の名はアレクシス・ワイセンベルク。我が父、ルーファス・ワイセンベルクの意志を継ぎ、人類の未来を切り開く者なり!」


 瞬間、アレクシスの持つ剣を根元に、天へと向かい数多の枝が別れる。それはまるで系統樹のように伸びていく。


「演算。今を起点に、あり得る可能性を算出――無限に枝分かれする未来を贄とし、脅威を打ち砕く」


 分かたれた系統樹がアレクシスの持つ剣に集約される。


「未来演算、収束、この剣は可能性の集約。我々の可能性を燃やし、お前の術を打ち砕こう!」


 アレクシスが地を蹴る。

 迫る世界樹へと向かって、その手に持つ剣を振りぬいた。

 ノイズが奔り、赤黒い斬閃の軌跡が一直線に宙へと描かれる。


「舐めるなよ、神木守玲香! 我々に頂点捕食者としての矜持は有している」


 世界樹が斬り割かれ、打ち砕かれた余波が衝撃となって辺りを満たす。

 突風と溢れ出す力の奔流が嵐のように荒れ狂い、場の建物のガラスを打ち砕く。


「ええ、最高じゃない!」


 玲香が歓喜の声を上げる。


「お前は人類の味方なのか?」

「愚問ね。私は私自身の味方よ!」


 強者と戦うこと。

 強者と肩を並べて戦うこと。

 それはすべて玲香の渇きを満たすためでしかない。


「愚かだ! あまりにも愚かだ! お前のような存在が頂点捕食者になってしまったが故に、人類は滅びるのだ!」

「それはないわ。ええ、私には及ばないにしてもそれなりの強者いる。何よりも私と言う存在がいるから」

「比較と超越の理を前には、お前のような存在は害でしかない!」


 言葉は通じない。

 力で捻じ伏せることでしか、玲香には通用しない。

 アレクシスが更なる手を繰り出そうとした時だった。

 二ヶ所から強烈な力の開放がされる。


「ひとつは秋雨ね。そして、もうひとつは――」


 会談の会場となっていたホテルのとある場所へ、玲香は視線を向ける。


「――鈴音のところの子ね。ああ、なるほど」


 玲香は口角を上げる。


「アレクシス・ワイセンベルクだったかしら? アナタはこの状況をどう見るのかしら?」

「……危ういな」

「へえ?」

「急激な力の獲得は己の身を亡ぼすぞ」

「だけど、これらの結果はアンネリーゼって娘と九十九の思惑通りなんじゃない?」

「……そうだな。ならば、我々も思惑を果たそう」


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