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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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第77話

 自身と同等の強者と対峙する――その事実に玲香は心が高鳴っていた。

 頂点捕食者という存在であることを自覚し、その役割を理解した時、玲香は心底ガッカリしたことを覚えている。

 強者として弱者に試練を与え、来たる脅威に備える。

 くだらない。そう思っていた。

 玲香は神木守家の当主として君臨する前から抱く渇望――強者との死合――を満たしたかった。

 何故ならば、玲香は自身が絶対的強者であることを理解していた。

 だからこそ、頂点捕食者という存在である事実に何ひとつの驚きはなかった。

 生きる天災――頂点捕食者になる前から囁かれ、今も尚、玲香を印象付ける代名詞。

 誰もが畏怖し、逆らわない。

 自身を討ち滅ぼせる存在に恋焦がれる。

 どうせなら来たる脅威――収獲者を相手にするのも一興とすら思っていた。

 そんな矢先に現れた。

 それは玲香以外の頂点捕食者だ。

 だが、アンネリーゼは玲香としては拍子抜けだった。

 しかし、目の前のアレクシスは違う。


「私の直感が告げているわ。アナタはあのアンネリーゼって娘よりも強く、九十九ってヤツよりも厄介だってね」

「くだらんな。お前のような戦闘狂が頂点捕食者とは……この地球の人類があまりにも不幸だ。来たる脅威ですら己の渇きを満たすための存在としか見ていないか」

「別に私一人で相手にできるとは思ってないわ。ただ、弱者の相手をしたくないだけ」

「やはり、お前は害にしかならないな」


 アレクシスが玲香へ肉薄し、ノイズの奔る剣を振るう。

 対し、玲香はその剣を難なく回避し、即座に反撃(カウンター)を試みる。


「天照」


 灼熱と眩い輝き辺りを満たす。

 0.01秒の発言を持って、アレクシスの存在を無に帰そうとする。

 だが、その攻撃すらもアレクシスには意味を成さない。


「その灼熱と輝きは0となる」

「――やっぱり厄介な権能ね」


 そんなことを言いながら、玲香はアレクシスを掴みに行く。

 が、掴む直前にアレクシスの身体にノイズが奔り、空を掴むことになる。


「0と1を自在に操る権能。そこに在るか無いかを自らの意志で切り替える。そんなところかしら?」

「…………」

「沈黙は正答として受け取るわよ? そして、アナタの正体も理解できたわ」


 玲香は楽しそうな表情を浮かべながら告げる。


「アナタを生み出した私たちを父にして母なる旧き人類と呼称したこと。0と1を自在に操る権能――ええ、実に簡単な答えね」


 アレクシスを眺めながら、玲香は告げる。


「人類が生み出した新たな人類。それは人間が人間の思考を機会に求めたもの。そう――人工知能。そして、アナタはその人工知能が人の形を成した者って言ったところかしら?」


 玲香の言葉に、アレクシスは答えない。


「図星ってところかしら?」

「御託は結構だ。我々の正体なぞ、塵芥に等しい」

「そう。なら、こんなのはどうかしら」


 瞬間、空から巨大な大樹が落ちてくる。


「仮想を実現し、生命の源を凝縮し、その枝葉には幾多の世界を内包する大樹。その超エネルギーを対象へぶつける術」


 誰もがその光景に唖然とした。

 玲香はその術の名を告げる。


「相伝術式・転換――世界樹の墜落ユグドラシル・インパクト


 神木守家に伝わる相伝術式の転換。

 それは玲香の持つ圧倒的な出力と頂点捕食者としての権能を織り交ぜ、強制的に転換した術。

 その術の威力はあたりを焦土と変えることすら容易い。


「神木守玲香! 周囲の被害すら気にも留めないか!」


 アレクシスが怒鳴る。


「ええ――強者なら生き残れるでしょ?」


 生きる天災であることを証明する愚行。

 これには周囲にいた強者たちも目を見開く。


「何て女なのよ」

「おいおい、クレイジーが過ぎるぜ……」


 ガーネットとルークが呆れと驚きの声を上げる。


「流石にコイツは……認められねぇなぁ」


 カルロスは即座に周囲の人々を守る為の行動に映っていた。


「あの馬鹿はよぉ……」

「周囲の被害を抑える動きをせなね」


 紅蓮は青筋を浮かべ、遥かは術の行使を始めていた。


「さあ、何処かの頂点捕食者! 地球の頂点捕食者である私の攻撃を処理してみなさいな!」

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