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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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第74話

 アンネリーゼ・ミィ・ゴ。

 地球から遠く離れた惑星ユゴスで生を受けた少女であり、突如として頂点捕食者となった。

 科学と医学が特に優れたユゴスでは、望めば不老不死ですら実現でき、数多くの者がそうであった。

 アンネリーゼはユゴスに滅びが近づいていること、自身が担うべき役割を知っていた。

 そして、その重要性を軽視してしまった。

 優れた科学技術があるユゴスの人々なら、ちょっとした試練を乗り越えてしまえば、訪れる脅威に太刀打ちできるだろう――そう考えたからだ。

 しかし、撒かれた種子が実れば、それを収獲されるのは通り。

 惑星ユゴスは抵抗空しく滅びてしまった。

 アンネリーゼの持つ頂点捕食者の権能では、外宇宙からの脅威――収獲者には全く歯が立たなかった。

 ただ一人残された地で途方に暮れていた時、アンネリーゼは地球からの呼び掛けを受ける。

 ユゴスと同じように、滅びる可能性がある惑星の存在を知った。

 頂点捕食者としての役割を全うできなかった後悔を払拭するために、アンネリーゼは地球へ降り立った。

 同じように降り立ったアレクシスと共に、この地球と繋がっていた異世界ゾティークで暗躍し、人類の生命体としての強度を上げるための工作を続けていた。

 そんな中で、アンネリーゼは秋雨と出会った。


「私は私のために、君に試練を与えるんだぁ。だから、本気見せるねぇ」


 ユゴスの民には二種類の人種が存在する。

 有翼人と無翼人。

 それらには大きな差が存在している。

 アンネリーゼの背に蝙蝠のような翼が現れ、その周囲に黒い雲が彼女を守るように漂う。


「有翼人は超常の力を有する。君たちの使う術のようなものだねぇ」


 アンネリーゼの双眸が金色に輝く。

 秋雨はこれまでに感じたことのない強烈な脅威を感じ、思わず背筋が震え上がった。

 奏多も少しだけ顔色を悪くし、背筋に冷たいものが奔る。


「君たちは弱いんだよぉ。どれだけ強がってもぉ、どれだけ地球の頂点捕食者が強くてもぉ――収獲者(アレ)には遠く及ばないんだよぉ。武力的な強さに意味はないんだよぉ。だから――――」


 アンネリーゼがゆっくりと息を吐く。


「――――私は秋雨(きみ)の在り方に目を付けた。そして、人の身でありながら頂点捕食者である私に消えない傷を刻んだ」


 空気が震える。

 バケツの水を頭上からぶっかけられたように、冷気が頭上から落ちてくる。

 あの河川敷で戦った時とは比べ物にならない存在感を、秋雨と奏多はアンネリーゼから感じる。


「私の愛を持って秋雨(きみ)を昇華させてあげるんだぁ!」

「っ――余計なお世話だよ!」


 黒い雲が秋雨へ向かって駆ける。

 雲の中にいる冒涜的な存在に触れてしまえば、精神的に殺される――秋雨は直感的にそれを察し、氷刃刀でその雲を斬り割く。


「随分と愛されているようじゃないか?」

「引き攣った顔で言ってんじゃなねぇよ」


 アンネリーゼの圧に奏多の口元は引き攣っている。


秋雨(きみ)を人類の精神的支柱にし、救世主として世界を導く存在にしてあげようかぁ!」

「そんなもの、俺は望んでねぇよ!」


 数多に飛んでくる黒い雲を斬り割きながら、秋雨は奏多と背中合わせになる。


「鬱陶しいなこの雲」

「触れたら間違いなくSAN値直葬だぞ」


 顔を顰める奏多と眉間に皺を寄せる秋雨。


「優れた科学と医学、狂気と有翼の異能を持って、頂点捕食者として人類に試練を与えようかぁ! 私の名前はアンネリーゼ・ミィ・ゴ。暗黒星ユゴスの頂点捕食者にして、地球の頂点捕食者の代理者」


 アンネリーゼの姿がカメラを通して全世界に放映されている。

 頂点捕食者と言う存在の異常性が顕わとなり、その役割と目的が示される。


「さあ、私と踊ろうよ、秋雨。勇者君はついでに遊んであげるよぉ」

「踊ってやるつもりはないね」

「ついでって、俺だって勇者としての矜持はあるんでね。舐めないでもらおうか!」

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