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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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73/111

第73話

「早速、やらかしてるじゃない!」


 教室で会談の状況を眺めていた志乃は、バンと机を叩きながら立ち上がる。

 全国生放送で流れる映像は、秋雨と奏多がアンネリーゼと対峙している様子。

 そして、アンネリーゼから語られる頂点捕食者としての役割。

 ワイドショーに出演している者たちのコメントも困惑と考察が大半を占めていた。


「って、あのアンネリーゼという少女は宇宙人ってことなの⁉」

「オールトの雲と言えば、太陽系を球殻状に取り巻くように広がっていると考えられている無数の氷や塵の小天体群だったかな? その宇宙の先――外宇宙より人類の脅威は訪れるか……」


 アンネリーゼの正体に志乃は驚きの声を上げ、孝也は得た情報を元に考察を行う。


「僕たちが考えている以上に、世界はマズい状況ってことなのかな?」

「マズいって言っても、そもそも頂点捕食者のアイツらの襲撃が既にマズいんだけど⁉ そもそもあのアンネリーゼの言葉をどこまで信用できるっていうのよ?」


 志乃の言うことは尤もだ。

 情報源が敵対している者だけである以上、それを証明することは難しい。

 オールトの雲の先――そうなると現在の人類が有する技術では観測も不可能に近い。


「生命体としての強度を上げる。これが頂点捕食者の目的と捉えられるね」

「それはそうだけど……そもそも生命体としての強度って何よ?」


 情報を纏めるほどに謎が深まっていく。

 とにかく情報が足りない。

 ――と、玲香とアレクシスの戦闘の映像が流れる。

 それは超人同士の争い。常人には割り込む隙がないことは映像を見ているだけでも察することができた。

 しかし、そんな先頭に割り込む人影もある。


「あの戦いの中に突っ込むヤツがいるってワケ⁉」

「十二勇士の団長と銃士協会の二人みたいだね。本当に僕たちの世界の裏側にはとんでもない人たちがいたようだね」


 繰り広げられる常識外れの映像。

 コメンテーターたちは言葉を失い、その映像に対して唯々感想を述べるに留まっている。

 映像が秋雨と奏多、アンネリーゼの戦場に切り替わる。

 秋雨の両親の話が大々的に放映される。

 そして、アンネリーゼの歪んだ愛情が顕わとなる。


『愛してるだの。指導者になるだの。頂点捕食者に並びえるだの。知ったことじゃない! そんなのお前らの勝手だろ! もしも、お前らの言う脅威が訪れるというのなら、その全てを払う。それが五行神家の存在意義であり、過去の当主がルクシャ・ハーナと対立した理由なんだろうさ』


 アンネリーゼの問いに対する答え。

 秋雨の言葉には強固な意志が宿っていた。


『試練だなんだと上から目線で勝手なことをしてるんじゃない! 俺たちはお前たちが思っているほど弱くない!』


 その言葉に志乃と孝也は口角を上げる。


「まったくカッコいいこと言ってるじゃない」

「そうだね。奏多の表情を見る限り、玉水も何かしらの踏ん切りがついたのかな?」

「だけど、玉水と奏多の二人だけでは荷が重いんじゃないの? 頼みの綱の神木守さんは別の頂点捕食者と戦闘中みたいだし、映像にはいないエリスティマが所属している魔女会の姿が見えないのは別の敵もいるんじゃない?」

「そうかもね。うん、やっぱり準備していて良かったね」


 孝也はそう言って立ち上がる。

 同時にクラスにいた一部の生徒たちが頷いて立ち上がる。


「先日離した通り、転移魔法を使って東京に飛ぼう。だけど、ここからは生死の保証はできない。僕と志乃は飛ぶけど、覚悟は良いかい?」


 覚悟を問う孝也の言葉に。

 志乃は「当然でしょ」と断言する。

 それに続くように立ち上がっていた生徒たちも、己の覚悟を示す言葉を上げる。

 伊達に異世界で戦い続けた者たちではない。その規模の大小はあれど、生死に対しての覚悟は既にできていた。


「うん。じゃあ、行こうか!」


 今、異世界組が東京へと向かおうとしていた。

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