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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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第71話

 マーリンの怒声に九十九は怪訝な表情を浮かべる。

 アルトリウスを半殺しにしたことは事実ではあるが、あの戦いにおいて九十九としては情けを掛けた上で半殺しに済ませていた。

 それだけに感謝はされても、恨み節を聞かされる筋合いはない。

 とは言え、アルトリウス本人は勿論、彼に強烈な愛を注いでいるマーリンにとっては看過できる出来事ではなかったワケである。


「殺さなかっただけ感謝してほしいものだが?」

「は? 生言ってるんじゃないよ!」

「はあ、名を馳せるキングメイカーの魔女がコレとは……」


 九十九のその声から呆れた様子が垣間見える。

 ――と、アルトリウスが口を開く。


「僕は君との再戦ができると思って、日本にやって来た。まあ、こんなに早い段階で叶うとは思わなかったけどね」

「聖剣使い、お前に興味はない。私の目的は桜目律――ただひとりだ」

「己惚れているワケじゃないけど、僕はそれなりの実力を有していると思うんだけど?」

「これは実力云々の話ではない」


 九十九は気怠そうな声音で断じた。


「さて、正直な話――多勢に無勢ではある」


 あくまでも自身が優勢であることを九十九告げる。

 頂点捕食者としての矜持か、或いは別の要因なのか……。


「随分と余裕みたいじゃないか?」

「愚問だな、キングメイカー。私は仮初とは言え、この世界における頂点捕食者の役割を与えられている。神木守玲香であれば、拮抗した戦いになるだろう。だが、例えお前がいたところで私には勝てんよ」

「……へえ、言ってくれるね。なら、君が執着している彼――桜目律は何だって言うんだい?」


 苛立ちを隠す気もないマーリンは九十九へ問う。

 話を聞いている律としても、気になることではあった。

 何だかんだ意味のある台詞を九十九は吐いているが、どうしても要領を得ない。

 なぜ、律に執着、或いは期待のようなものを寄せているのか謎でしかなかった。


「桜目律はとある世界の理を塗り替え、この世界を作った存在だ」


 九十九は言う。

 やはり要領を得ない。


「その言い分だど、まるで今の世界になる前の世界があったとでも言っているようだけど?」

「私はそう言っているが?」

「へえ、なら君は前の世界の亡霊みたいなものなのかな?」


 マーリンの言葉に九十九は少しの間沈黙を保ち、口を開く。


「ああ――私は前の世界で桜目律に敗れ、残り火だけがこの世界に訪れただけに過ぎない。故に私を殺すのは桜目律でなければならない」

「それが彼に執着する理由かい?」

「そして、桜目律には生命体としてのフェーズを引き上げ、来たる脅威への対抗者となってもらう」


 九十九の目的が明確になっていく。


「なあ?」


 律が九十九へと問い掛ける。


「要領を得ないところはある。俺がアンタを倒したって話も正直よくわかならない。ただ――来たる脅威ってなんだ? それが収束した末の滅びってヤツなのか?」


 因果は収束すると言っていた。

 前の世界の滅びを律が解決し、この世界が生まれた。しかし、因果は収束する故に、この世界の滅びは決定している。

 だからこそ、律は知りたい。


「……ああ、来たる脅威――外宇宙の存在は確実に滅びを齎すだろう」

「外宇宙?」


 律は首を傾げる。

 ――と、マーリンが眉間に皺を寄せながら口を開いた。


「外宇宙の存在……まさか、収獲者のことを言っているのかな?」

「ほう、お前は知っていたか、キングメイカー」

「知ってるも何も――」


 マーリンは明らかに顔を色を悪くしている。


「マーリン?」


 アルトリウスが声を掛ける。


「まさか、収獲者が此処を狙っているとでも言うのかい⁉」

「ああ。故に、時間がないのだ。アレクシスは人類全体を。アンネリーゼは特定の個人を。手法は異なるが、それぞれの思想の元に動いているに過ぎない。本来、それらの役割は地球の頂点捕食者である神木守玲香が行うべきことではあるのだがな」


 九十九は鎌を構える。


「まあ良い。この際だ、まとめて相手をしてやろう。そして、桜目律――己の中にある力を引き出せ。でなければ、私に殺されるだけだ」

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