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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章

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第69話

 人々は報道されているテレビに釘付けとなっていた。

 突然始まった戦闘映像。

 五行神家の秋雨と勇者の奏多の二人が、一般的には美少女とも言える容姿を持つアンネリーゼと相対している。

 それは初めて人々に異能力者と頂点捕食者の戦いが知れ渡ったものとなった。

 殺意の籠った秋雨の術。

 人を殺せる攻撃を繰り出しながら、奏多が振るう聖剣フィニステラ。

 そして、ニコニコしながら、その攻撃の全てを捌き切るアンネリーゼ。

 常識では考えられないものが広がっていた。

 リポーターはその光景を見て、心臓の高鳴りを覚え、その興奮をカメラの前で発言し続ける。

 SNSでは瞬く間にトレンド入りし、アンネリーゼのファンを名乗る者たちが秋雨と奏多を批判する投稿も増え始めてくる。

 そんな映像の最中、別の轟音が鳴り響く。

 カメラマンが咄嗟に音のした方へとカメラを向ける。

 そこに映ったのは玲香とアレクシス。

 頂点捕食者同士のぶつかり合いが始まろうとしている瞬間だった。


「あ~らら、アレクシスも本気でやりあるのかなぁ?」


 口角を上げながら、アンネリーゼは言う。

 秋雨は玲香とアレクシスが放つ圧を感じ、背筋に嫌な汗を滲ませる。

 一方、奏多は少しだけ顔色が悪くなっていた。


「庄司、この程度で怖じ気づいている場合じゃないぞ」

「ッ――⁉ わかってるさ」


 秋雨から冷や水を染みた言葉を掛けられ、奏多は口を固く結んで気合いを入れなおす。


「秋雨君は、頂点捕食者をどこまで知っているのかなぁ?」


 唐突に、アンネリーゼが秋雨へと問い掛ける。

 頂点捕食者――その詳細について、秋雨は詳しく知らない。

 あくまでも人間を超越した最強種である認識程度だった。


「頂点捕食者っていうのはねぇ、その世界、或いは惑星が来たる脅威の存在を認知した時に生まれる存在なんだよぉ?」


 玲香とアレクシスの戦闘を眺めながら、アンネリーゼは饒舌になっていく。


「それは私も同じ。突然、私は頂点捕食者となって、この権能を手に入れたんだぁ」


 アンネリーゼは黒い雲を撫でる。


「頂点捕食者には役割があってねぇ、それは人類を守る為に人類へ敵対するって役割がねぇ」


 その言葉は、再びアンネリーゼにレンズを向けたカメラマンによって人々に伝わる。


「私の惑星は……生命体の強度が足りなくて、呆気なく滅んじゃったけどねぇ。そんな中、私は地球の声を聞いたんだぁ」


 ニンマリと笑みを浮かべるアンネリーゼ。


「この世界の頂点捕食者――神木守玲香は頂点捕食者としての役割を放棄した。その代わりを担ってほしいってねぇ」


 秋雨は眉間に皺を寄せる。

 玲香は頂点捕食者の役割を理解していたのだろう。

 人類を守る為に人類へ敵対する――それを玲香は拒絶した。

 本来であれば、地球人は玲香と敵対する必要があった。しかし。その可能性が失われたことにより地球人は生命体の強度を上げる機会を失われそうになった。

 その機会を補填するために、地球自身が他の世界、或いは惑星から頂点捕食者を呼び寄せた。


「まあ、ルクシャ・ハーナについては完全に欲望が優先した結果、或いはゾティーク以外の人類も救おうとでもしたんだろうねぇ」

「…………アンネリーゼ。お前はそれを俺に聞かせて何がしたいんだ?」

「ふふっ、私はねぇ、君には死んでほしくないんだぁ。だって、私は君を愛しているから」


 アンネリーゼの告白に、秋雨は顔を顰める。


「オールトの雲を越え、更に観測できない宇宙の先――外宇宙より人類の脅威は訪れる。それは数多の世界、あらゆる惑星に生命体の種を植え、実った種子を集荷する存在なんだよねぇ」


 少しづつアンネリーゼの声に熱が帯びていく。


「私の惑星ユゴスは滅びた。私の力と試練が及ばなかったが故に滅びたんだよ!」


 アンネリーゼから強烈な圧が吹き上がるが、直ぐに鳴りを潜める。


「……後悔はあるよぉ。だからこそ、私は地球の呼びかけに応え、アレクシスとは別アプローチで人類の強度を上げることにしたんだぁ。そして、選んだのが君!」

「――――は?」

「個人に絞り、生命体としての強度を上げ、人類を導く指導者になってもらおうと思ったんだぁ。その為に君の両親を殺しちゃったのはごめんねぇ」


 ギリッ――と秋雨は歯を食いしばる。

 奏多も明らかに顔を歪ませ、アンネリーゼを見ていた。


「そんなことのために、父さんと母さんを殺したのか?」

「でも、その結果として人類が救われるのならいいと思わない? 頂点捕食者である私を凍らせる術によって、君の強度は間違いなく上がった。君は頂点捕食者に並びえる存在となれるはずだよぉ?」

「そんなこと、知ったことじゃない!」


 秋雨は叫ぶ。


「愛してるだの。指導者になるだの。頂点捕食者に並びえるだの。知ったことじゃない! そんなのお前らの勝手だろ! もしも、お前らの言う脅威が訪れるというのなら、その全てを払う。それが五行神家の存在意義であり、過去の当主がルクシャ・ハーナと対立した理由なんだろうさ」


 大きく秋雨は息を吸う。

 そして、声を張り上げて断言する。


「試練だなんだと上から目線で勝手なことをしてるんじゃない! 俺たちはお前たちが思っているほど弱くない!」


 秋雨の言葉。

 それを聞き受けたアンネリーゼは「そっかぁ」と呟くと口を開く。


「――なら、私にその意志を示してよ!」

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