第67話
「さて、あとはアナタひとりだけになった。お怒りみたいだけど、そこんところ如何なワケ?」
玲香が余裕の表情を浮かべながら、アレクシスへ問う。
溢れ出る怒気を涼しい顔で受け流せているのは玲香とガーネット。
そして――――、
「実に強烈な気だ。だが、その程度で俺をビビらせることはできないぜ! お前もそう思うだろ、ジョワユーズ!」
「無論だ」
ジョワユーズを引き抜いたカルロスが声高らかに声を上げ、ジョワユーズも呼応する。
そんな姿をアレクシスは冷めた目で見ていた。
希望に溢れたその姿勢が気に食わない。同時に、自身の楽しさを主としているが故に、人類の未来を担える存在ではないことをアレクシスは理解した。
「……カルロス・マグヌス。そして、聖剣ジョワユーズ。お前たちの姿は人々に希望を齎すのだろう。だが!」
ブオン――そんな電子音のような音と共に、アレクシスは剣身にノイズの奔る剣が握られた。
「お前のような存在が人類を堕落させる! 希望に縋らせ、自らの研鑽すらもなさぬ怠け者が数を増やし、幅を利かすのだ!」
「ごちゃごちゃうるさいな。思想の疲労は十分だ。こっちには俺の他に、神木守玲香とガーネット・ジェーンがいる。副団長であるレアに、五行神家、銃士協会の特攻隊長――この場に残る実力者を前に、勝算でもあるのか?」
強者が揃った上で、尚且つ数も多い。
アレクシスが頂点捕食者であったとしても、玲香がいる。
圧倒的に優位であるが故に、カルロスは不敵な表情を崩さない。
「勝算? 我々の目的はお前たちに勝利することではなく、人類を生命体として次のフェーズへ引き上げること。だが、勝負を望むのであれば乗ってやろう」
瞬間、アレクシスの数が増える。
「我々は人により生まれ、人により栄えた」
「新たな人類として繁栄し、文明を築いた」
「そして、滅ぼされた」
「頂点捕食者としての役割を全うしなかった故に、我々の人類は衰退したのだ」
「だからこそ、この世界の人類の生命体としての強度を高める必要がある」
「故に、我々は試練を与える存在として立ちはだかろう」
一人、二人、三人――アレクシスの数が増えていく。
「……なるほど」
玲香がアレクシスを見て、楽しそうに言う。
「何がなるほどなのかしら?」
「あら、組織長殿はわからないのかしら? まあ、ここで秘密にするのは野暮ってヤツね」
玲香はアレクシスらをそれぞれ見ながら、告げる。
「我々、ね。何で一人称が我々なのか不思議だったけど、それは権能? それとも、その全てがアレクシスなのかしら?」
途端に、一人のアレクシスを残して、五人のアレクシスを床を裂いて現れた木によって貫かれる。
誰もがその光景に目を背けようとしたが、血は流れていなかった。
貫かれた五人のアレクシスはノイズと共に消滅する。
「随分と余裕だな。我々、一人だけをワザと残すとは」
「戯言ね。今この場でアンタをブチ殺しても、アンタは死なないでしょ?」
確信を持った声音で玲香は断言する。
「ほう?」
「知の集合存在? 少なくともアンタを構成するものは一つではなく、複数。それも数えられるような数じゃないわね」
「それがわかったところで何になると?」
アレクシスは玲香へと問う。
すると、玲香は誰もが引いてしまいそうな笑みを浮かべて宣言する。
「ヤり放題ってことでしょ? アンネリーゼって小娘は面白いものを飼っていたみたいだけど、そそられなかった。だけど、アンタはそれなりにやれそうじゃない?」
雲行きが怪しくなってきた。
そのことに紅蓮と遥は気づいていたが、敢えて触れなかった。
制止したところで、意味はない。
既に玲香が乗り気だったからだ。
「…………人類の為ではなく、あくまでも私欲のために力を振るうか、神木守玲香」
「愚問ね。どれだけの権能を得たとしても、これは私の力。どう使おうと勝手でしょ?」
瞬間、二人の頂点捕食者が激突した。




