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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章
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第63話

「秋雨は私と踊ろうねぇ?」


 そんな声と同時に、アンネリーゼが秋雨へと肉薄する。

 即座に氷刃刀を顕現させ、その攻撃を防ぐ。


「ふーん、成長はしているみたいだねぇ」

「当然、だ! アンネリーゼ!」


 渾身の力で吹き飛ばすが、アンネリーゼは何事もなかったかのように体制を整えて着地する。

 政府関係者たちは目の間で起こった戦闘に、声も出せずに震え上がる。


「ミルディは俺の後ろへ! リファ、ノヴァク、行けるか!」


 聖剣フィニステラを手にし、奏多が叫ぶ。

 その言葉に呼応するように、リファ、ノヴァクは大きく頷き、自身の獲物を構える。


「アレが……アンネリーゼですか」

「なるほど、強烈だな」


 二人はアンネリーゼが纏わせる風格に冷や汗を流す。


「……血の気が過ぎるな。まあ、いい。そちらは任せるとしよう、アンネリーゼ」

「はーい。アレクシスはどうするのかなぁ?」

「我々は……こちらの頂点捕食者とその他多勢を相手をしよう」


 何てことはないアレクシスの言葉。

 しかし、それに過剰に反応する者がいた。


「おいおい、俺たちを縮こまっているモブ(NPC)と一緒にしてんじゃねぇよ」


 ルークはホルスターから銃を引き抜き、その銃口をアレクシスへと向ける。


「ルーク・マッカーティ。威勢だけはいいようだが、実力が伴わなければ、ただの遠吠えでしかないぞ」

「ブチ殺す!」


 ルークが構えていた銃のトリガーを引く。

 弾倉から供給された弾丸が発砲音と共に射出される。

 放たれた弾丸は普通とは異なる。

 それは意思を持つ弾丸。緋色の軌跡を残しながら、縦横無尽に飛翔し、アレクシスへと向かう。


 第一の魔弾・カスパール。


 それは一日に七発のみ発砲が許される魔弾。

 六発は射手の望んだ箇所へ、七発目は悪魔の望んだ箇所へと命中する。


「打ち抜くのはテメェの脳天だ!」


 弾丸は奇抜な軌道を描きながら、アレクシスの額へ向かって奔る。

 必ず命中する。

 それは慢心でも、奢りでもない事実のはずだった。

 しかし、その弾丸は命中しなかった。

 脳天を貫く直前、アレクシスの身体がブレた。


「なぁっ⁉」


 ルークが声を上げる。


「――座標を確定。固定し、移転。さて、己の弾丸に打ち抜かれて死ぬといい」


 その言葉と共に、魔弾がルークの目の前に移動していた。

 魔弾の軌道修正は間に合わない。

 このままではルークの額が弾丸で貫かれると誰もが思った時だった。


 一発の発砲音と共に、ルークの放った魔弾が撃ち落された。


「はぁ、ルーク。アンタもまだまだのようね」


 呆れたようにそう口にしたのはガーネット。

 その手には銃口の先から煙を立てる銃があった。


「助かったぜ、姐さん」

「気を引き締めなさい。恐らくアレが頂点捕食者としての権能でしょう」


 ガーネットはアレクシスへと鋭い視線を向けながら言う。


「ガーネット・ジェーン。なるほど、神木守玲香がいなければ、お前が頂点捕食者であったのだろうな」

「それは嬉しい言葉ね。だけど、私は人間の範疇で十分よ」

「……くだらんな」


 アレクシスは眉を顰めながら、ガーネットの言葉を断じた。


「人間の範疇で十分だと? あまりにも愚かだ。その思考が人類を堕落させ、来たる脅威へ対抗すらできずに駆逐されるのだ!」


 辺りに憤怒が立ち込める。

 赤黒い靄がアレクシスから立ち上り、並の実力者はその存在感に威圧される。


「あーあ、アレクシス怒ってるよぉ。だけどまあ、理解はできるかなぁ」


 アンネリーゼがやれやれと首を振りながら言う。


「アンネリーゼ。お前たちの言う来たる脅威とは一体なんだ?」

「…………さあ、何だろうねぇ?」


 秋雨の問い。

 少しの沈黙の後、アンネリーゼははぐらかすように答える。


「そうだねぇ、勝者にのみ答えは与えられるって感じはどうかなぁ?」

「なるほど、確かに話は早い」


 秋雨は氷刃刀を構える。

 と、奏多が秋雨の隣に立つ。


「それは俺も聞きたいところだ。何、知らない間柄じゃないだろう?」


 聖剣フィニステラの切っ先をアンネリーゼに向け、その意志を示す。


「……異世界ゾティークの勇者君かぁ。まあ、別にいいんじゃないのぉ? 後ろのお姫様を守りながら戦えるのならだけどぉ」


 舌なめずりしながらミルディールへと視線を向けるアンネリーゼ。

 しかし、その視線を遮るように、リファとノヴァクが立つ。

 

「奏多さん! ミルディール様は私とノヴァクさんで守護しますので、思いっきりやってください!」

「そういうことだ。こちらは任せてくれ」


 奏多は頷き、隣に立つ秋雨へ問う。


「――って、ワケだ。共同戦線と行こう」

「はあ、背中は任せる」

「了解だ」


 秋雨と奏多の二人はそれぞれ構え、アンネリーゼへと意志を示す。


「いいねぇ。面白いねぇ。だったら、私も本気見せちゃおうかなァ!」


 アンネリーゼの背に黒い雲が現れる。

 それは頂点捕食者としての権能――千匹の仔を孕(マグナ)()し森の黒山羊(マテル)だ。

 

「さあ、一緒に狂気の狭間に落ちてみるぅ?」

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