第59話
報道陣向けの所信表明演説も終わり、いよいよ本格的な会談が始まろうとしていた。
政府関係者たちの面持ちは硬い。
一方、秋雨たち五行神家を含めた異能力組織の様子は平常運転。
正しく我が道を行く状態だ。
異世界ゾティーク組も異能力組織ほどではないが概ね平常運転の様子だった。
「さて、せっかくの会談なのだから、互いに実のあるものにしていきたいわね」
それぞれが準備された席へ着席すると同時に、玲香が開口一番そう発言する。
日本政府としては「どの口が……」という表情をありありと見せつけていた。
「玲香の嬢ちゃん。今回は俺と鈴音の嬢ちゃんが主として話をするから下がっていろ」
「そうだったわね。ま、何かあれば口を挟ませてもらうつもりだけど」
紅蓮の言葉に素直に従い玲香はにこやかな笑みを浮かべ、自身の席で手を組んで参加者たちへと目を配らせる。
秋雨も自身の席でそれぞれの参加者たちを観察しながら、思考を巡らせていた。
(各国の政府関係者の目的は異世界ゾティークとの友好関係の構築。これは今後にも繋がる一手ということの他に、異世界の魔法という力を手にする為でもある。庄司が異世界を救った勇者である以上、その点において日本が数歩リードしている――と国外から見えてはいるが、その実は大した進展はない)
会談前に秋雨は奏多と軽く意見交換をしていた。
その際に日本政府との関係についての話もしていたのだが、奏多曰く「事前の顔合わせの打診はあったが受けなかった」とのこと。
どうやら奏多の直感が「怪しい」と判断したらしい。
しかし、その直感は「正しかった」と秋雨は日本政府関係者を見て、確信していた。
(……表情としては険しいが、目の奥にあるものはそうでもない。何かしらの情報を握っているのか?)
秋雨は日本政府関係者たちが座る方を見ながら、顎に手を当てる。
「何かきになることでもあるん?」
「いえ……日本政府も一物抱えてそうだなと思っただけですよ、遥さん」
「ほーん?」
遥が日本政府関係者席を一瞥する。
「そうやね。やけど、一物抱えとるんのは日本だけじゃないみたいやね」
アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国――――異能力組織が存在していない国の関係者たちにも、遥かはそれぞれ視線を巡らせてから言う。
「ロシアと中国の野心はどうでも良くて、アメリカとフランスは自国にある組織と如何にしてパイプを繋ぐかを思案ってところ。イギリスは王室へ確認しとるみたいやけど、概ねはパイプ構築。その方法が正攻法かは見る限り微妙みたいやね」
「よく見てますね」
「褒められるもんでもないよ。こんな観察眼は当主であり続ければ嫌でも身に着くんよ」
遥はそう言いながら、ゾティークの王族であるミルディールへと目を向ける。
「アレが異世界の王族。確かに品位は感じるなぁ」
「巷だと割と人気らしいですよ」
「まあ、あの容姿ならミーハー気質な日本人には大人気やろうね」
呆れ気味に遥は言う。
――と、
「さて、早く始めましょうか。私たちも暇じゃないので」
銃士協会の組織長であるガーネットが声を上げる。
唯我独尊の行いに見かねたアメリカ政府関係者が言葉を掛ける。
「ガーネット・ジェーン殿、会談には様式というものが――」
「愚問ね。そんな様式美なんて犬畜生にでも喰わせておきなさい」
ピシャリと跳ね除け、ガーネットは五行神家の席へと鋭い視線を向ける。
「さあ、この数ヶ月の間に様々な頂点捕食者が日本に集結しているみたいだけど、この件について話すことはないのかしら?」
「特別何かを話すことはないな。奴らがなぜ日本に居り、狙いが何かは知らん」
ガーネットの言葉に、紅蓮が飄々とした様子で返答する。
「へえ? じゃあ、復活した頂点捕食者、名前はルクシャ・ハーナについては?」
「奴については神水守秋雨と神金守鈴音の二名の協力によって撃退に成功している」
「撃退ねえ? では、ルクシャ・ハーナはまだ生きていると?」
「そうなるな」
「実に傲慢ね。封印されていたはずの頂点捕食者をみすみす逃がすとは、人類の脅威と言っても過言ではないのでは?」
ガーネットが紅蓮に向かって、ガンガン言葉を投げつけていく。
と、日本政府関係者の一人が声を上げる。
「ガーネット・ジェーン殿。頂点捕食者とは一体なんなのですか?」
その言葉に追従するように、各国の政府関係者も声を上げていく。
「……面倒なことになったわ。でも、説明するには打ってつけの人物がいるじゃない」
ガーネットはそう言って、場を俯瞰するように眺めていた玲香へと言葉を投げかける。
「さて、頂点捕食者についてご説明されてはどうですか? 地球の頂点捕食者である神木守玲香殿?」




