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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章
54/63

第54話

 会場は日本政府が準備した東京都内のホテル。

 テレビでは各国の要人たちの会場入りが報道される中、最初に世間を賑わせたのはゾティークの王族であるミルディールと奏多の会場入りだった。

 会場付近にはミルディールを一目見よう集まった一般人とガードマンのせめぎ合いが繰り広げられている中で、ミルディールはにこやかな笑みを浮かべつつ手を振りって観衆に応えていた。

 

「物凄い熱気です。この会談の注目度の高さが伺えますね」

「うーん……会談というよりは、ミルディ目当てのような気がするんだよな」


 ミルディールの言葉に、何とも言えない表情を浮かべながら答える奏多。

 なお、奏多に対しても黄色い声が降りかかっているが、本人は微塵も気にしていないどころか、自身に向いているとも思っていない。

 各国の報道陣のリポートが白熱していく。

 会談の目的や異世界との関わり方。そして、表舞台へと現れた魔法のような異能力組織。

 各国の政府としては、異世界ゾティークとの良好な関係構築を目指しつつ、異能力組織の手綱を握りたいという思惑があるのだろう。

 しかし、彼、彼女らをそう簡単に制御できるのかと問われれば、否であろう。


「ようやく到着したね」


 澄み渡った青の双眸と金色に輝く頭髪の青年――アルトリウスが送迎用の車から降りながら言う。


「うん。随分な長旅ではあったけど、ここからが本番だね」


 長い円錐状のクラウンと広いブリムの白い魔女帽子を被り、ローブを纏う銀髪赤眼の女性――マーリンは優雅な足取りで車から降りる。

 アルトリウスはそんな彼女の手を取る。

 その姿は騎士のあるべき姿を体現しているようなものだった。


「ありがとう、私の騎士」

「当たり前のことをしただけだよ、僕の魔女」


 二人だけの世界が広がろうとしている中で、車の奥から声が響く。


「アンタたち乗降口で世界に浸るんじゃないわよ!」


 車から飛び出すように出てきたのは、マーリンとは色違いである黒の魔女帽子とローブに身を包んだエリスティマだ。


「まったく空気が読めない小娘だ」

「読めないじゃなくて、読む気がないのよ! こんなところでボサッとしている場合じゃないわよ! ほら、さっさと行くわよ!」

「やれやれ、エリスには慎みってヤツを持ってほしいものだ」

「万年発情期のアンタに言われたくないわよッ!」


 先頭を切って会場入りするエリスティマの後を、上機嫌なマーリンと苦笑を浮かべるアルトリウスが続く。

 ファンタジー作品で見られるザ・魔法使いの姿に周囲の視線は釘づけだ。

 三人の姿が会場のホテルへ消えていくと、次にやって来たのはテンガロンハットを被った野性味が溢れ出している男とスーツを着こなした女性だ。


「ルーク、極力暴れないように」

「皆まで言うなよ姐さん。俺だって分別わきまえているぜ?」

「――――だったらいいんだけどね」


 動と静がその場に存在しているような二人は、周囲の様子に気にも留めずに会場入りする。


「はっはは、大観衆の中で俺がやって来たぜ!」

「……恥ずかしいので騒がないでくれますか、団長」

「堅苦しいことはよせよ、レア。さあ聞け、皆の者! 俺は十二勇士の団長、カルロス・マグヌス! 歴史に名を刻む者だ!」


 周囲に響き渡る声でカルロスは高らかに宣言する。

 レアは額に手を当てながら溜め息を吐く。


「……はいはい、団長行きますよ~」


 演説を始めようとするカルロスの首根っこを引っ掴み、引き摺りながらレアはズカズカと会場入りする。


「ちょっと、痛い痛いって⁉ わかった歩くから!」


 何とも言えない空気が流れる。

 少しの間の後、五人の集団が現れる。


「さあ、がっつり暴れるわよ!」

「……やめてください、玲香さん」

「秋雨の言う通りやね」

「私も秋雨と遥に同意ね。本当に自生してよ」


 気合いの入っている玲香に、秋雨、遥、鈴音が真顔で言う。

 そんな四人の様子を見て、豪快に笑う和服姿の男が一人。


「がっはは、相変わらずの破天荒さには感服だ! だが、その姿勢は嫌いじゃねぇぜ!」

「紅蓮さん、一応最年長なんですから止めてください」

「何言っているんだ秋雨の坊主。そんなんじゃ、周囲に飲まれて終わるだけだぞ!」


 バンバン秋雨の背中を叩きながら大声で言う神火守紅蓮(みほもりぐれん)

 秋雨はゲッソリとした表情を浮かべる。


「まあまあ、気張っていきましょか?」

「そうね。一先ず私と遥、秋雨で五行神家側はコントロールしましょう……できればだけど」


 ハイテンションのまま会場入りする二人の背中を眺めながら、残された二人は溜め息を吐きながら、その後を追うのだった。

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