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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第三章
53/67

第53話

 明日に迫った東京会談の話題は、世間のワイドショーを一色に染め上げた。

 主に取り上げられるのは異世界ゾティークの王族であるミルディールについて。

 その美貌により老若男女問わずに大量のファンを生み出した。

 次に五行神家について。

 各家の当主について取り上げられ、それぞれの解説がされていた。

 なお、世間的な人気は神土守遥が独占し、多くの少年たちの性癖を歪めたとか何とか噂となっている。

 ちなみにSNSでは『性別:神土守遥』でトレンド入りを果たした。

 そんなワイドショーを異世界帰還者たちが奏多、リファ、ノヴァクを除く全員で教室に集まって視聴していた。


「遂に明日ね。ミルディールについては奏多とリファ、ノヴァクがいるから大丈夫でしょう。問題は――」


 ワイドショーに映る各国の組織の詳細。

 イギリスの魔女会(ウィッチクラフト)

 フランスの十二勇士(パラディン)

 アメリカの銃士協会(ガンマンズ)

 その他の組織も紹介されているが、特に大きく取り上げられているのは三組織だった。


「魔女会についてはエリスティマさんが所属している組織だから大丈夫だろうね。十二勇士については、少し前にトップが玉水君に襲撃を仕掛けて来たんだっけ?」


 孝也は険しい顔をして言う。

 先の襲撃についてはエリスティマから異世界帰還組に共有された。

 あのカルロスの行動が読めない以上、警戒を怠らないようにという注意喚起を含めてだ。

 しかし、警戒していたことが馬鹿らしく思えるほど、何も起こらなかったのだが……。


「動画提供された映像がテレビでも流れていたけど、あのカルロスって男ヤバ過ぎない?」


 志乃が顔を顰めながら言う。

 その言葉に皆が頷く。

 志乃や孝也にとって、アンネリーゼと渡り合ったはずの秋雨が防戦一方であったことに驚いた。

 何よりも最後に見せた剣鎧(エペ・アルミュール)という力に、カルロスが本気ではなかったことを知り、肝が冷えたのは記憶に新しい。

 同時に自分たちの世界が異世界以上の魔境であることに、改めて思い知らされていた。


「フランスの十二勇士と言えば……シャルルマーニュ伝説に関係があるのかな?」

「シャルルマーニュ伝説?」


 孝也の言葉に志乃が興味を示す。


「ざっくりとした内容は八から九世紀のフランク王国国王カール大帝――シャルルマーニュと、その配下である十二勇士(パラディン)たちが、異教徒と戦う騎士道物語。有名な作品は『ローランの歌』、『狂えるオルランド』だね。となるとカルロスの他にも十一人の騎士がいるのかな?」

「あんな化物が他に十一人もいるワケ? そう言えば最後に一人飛んできてたわね」


 眉間に皺を寄せる志乃。

 しかし、孝也は首を横に振る。


「十二勇士は恐らくそれなりに統率の取れている組織だと思う。最後に現れた女性の制止で止まるあたり、あのカルロスって人も悪い人じゃないはず。問題はアメリカの銃士協会の方かな」


 テレビに映っている銃士協会の映像は過激にして鮮烈。

 一人の男が縦横無尽に走り回り、意思を持つような弾丸を放ちながら暴れまわっている。

 映像はアメリカが映像提供した模擬戦のものらしいのだが、少々血生臭いものを感じざるを得ない。

 そして、極めつけがインタビュー映像だった。


『あ? ジャパンについてどう思うかって? んなもんどうだって良いだろ? 俺としちゃ、姐さんの命令で一緒に行くだけだからよ。つまんねぇ内容だったら、適当に場を温めてやるだけだ』


 テンガロンハットを被った獰猛な目つきと口調の男の映像。

 画面越しにもその強烈な存在感を覚えてしまうほどに、インタビューされた男――ルーク・マッカーティは鮮烈だった。


「確かにこっちも別ベクトルでヤバそうね」


 口元を引き攣らせながら志乃は言う。

 他の異世界帰還者たちも口々に様々な感想や考察を話し合う中、孝也は口元に手を当てながら口を開く。


「……志乃、この会談は平和に終わると思うかい?」

「流石に終わってもらわないと困るんだけど?」

「それはそうだ。だけど、僕としては嫌な予感がしてならない」


 眉間に皺を寄せる孝也の表情は真剣そのものだ。


「直感ってヤツ?」

「そうだね。外れていれば良いけど、僕たちも何かしらの準備をしておくべきかもしれない」

「……オーケー。孝也がそう言うなら、乗ってあげるわ。東京までの転移なら魔法で可能だろうけど、流石に全員で行くワケにはいかないわね」

「だね。僕と志乃、あと数人を選抜しよう。問題が発生した時に直ぐ動けるように準備もね」


 孝也の言葉に志乃は頷き、直ぐに動き出す。

 志乃の言葉と共に、選抜会議が開催される。


(この状況の中で、あのアンネリーゼたち頂点捕食者が動かないことはあるだろうか?)


 言葉にはせず、孝也はずっと頭の中で思考を巡らせていた。

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